口閉じテープを貼って眠る習慣に、「死亡事故が起きたことはあるのか」「本当に窒息する危険があるのか」という不安を抱く人は少なくありません。マウステープは、睡眠中の口呼吸や口・喉の乾燥、いびき音の軽減を目的に使われる一方、鼻づまりや睡眠時無呼吸症候群がある人にとっては、呼吸を妨げるおそれがあるためです。
2026年10月28日時点で公開されている医学文献、国内の公的医療情報、臨床試験登録情報などを確認すると、口閉じテープの使用による健康上のリスクは医学的に検討されています。ただし、口閉じテープが直接原因と確認された死亡事故については、発生日時や原因調査などを裏付けられる具体的な報道・医学的記録を確認できません。死亡事故の報道が確認できないことと、事故の危険性がないことは別問題です。
【この記事の重要ポイントまとめ】
- 死亡事故の真相:公開情報で確認できる範囲では、口閉じテープが直接原因と確定した死亡事例の具体的な報道・医学的記録は確認できない。
- 窒息リスク:鼻づまりや鼻呼吸を妨げる病気がある場合、口を塞ぐことで呼吸が困難になるおそれがある。
- 安全な判断基準:睡眠時無呼吸症候群が疑われる人、鼻呼吸に問題がある人、飲酒や睡眠薬の影響下にある人は、自己判断で使用しない。
【死亡事故の真相】口閉じテープによる死亡例は報道されているのか

「口閉じテープ死亡事故」という検索キーワードからは、実際に死亡事故が発生し、ニュースで報道されたのではないかと考える人もいるでしょう。しかし、事故の有無を判断するには、死亡という結果だけでなく、使用した製品、発生状況、死因、テープとの因果関係を区別する必要があります。
2026年10月28日までに公開された情報を確認した範囲では、口閉じテープが直接の原因と確定した死亡事故について、発生日時や当事者、調査結果などを裏付けられる具体的な報道や査読済み医学論文は確認できませんでした。したがって、インターネット上で死亡事故の噂を見かけても、それだけで実際に事故が発生したと判断することはできません。
一方、公開情報で確認できないことは、世界中で事故が一度も起きていないことを意味しません。口閉じテープの使用状況を網羅的に把握する国際的な事故登録データが存在するわけではなく、個々の事故の報告状況にも限界があります。「死亡事故が確認できない」と「死亡する危険性がゼロ」は、明確に異なる結論です。
医学研究で注目されているのは、死亡例の件数だけではありません。鼻が詰まった状態で口を塞ぐことによる呼吸困難、睡眠中の呼吸イベントの変化、皮膚や唇への刺激など、使用に伴う有害事象や安全性の問題です。死亡事故の噂を判断するうえでも、こうした実際に検討されているリスクと、裏付けのない事故情報を混同しないことが大切です。
【2026年最新研究】口閉じテープの安全性はどこまで確認されている?
口閉じテープの効果とデメリットを評価するうえで重要なのが、査読付き医学論文と臨床試験登録情報です。広告上の効果や個人の体験談だけでは、安全性や長期的な有効性を判断できません。
2025年5月21日に学術誌「PLOS ONE」に掲載されたシステマティックレビューでは、口閉じテープなどによる口腔閉鎖を扱った研究が検討されました。最終的に対象となったのは10研究、計213人です。一部の研究では無呼吸低呼吸指数(AHI)などの改善が認められましたが、研究全体としては有効性を裏付ける証拠が限られ、鼻づまりがある場合の窒息リスクも指摘されています。
加えて、2026年8月27日に「OTO Open」に掲載されたシステマティックレビュー・メタ解析では、鼻閉と睡眠時無呼吸の指標との関係が分析され、口閉じテープに関する研究も整理されました。口閉じテープについては、軽症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群を対象とする2研究、計50人のデータが確認されました。ただし、研究数が少なく、対象者や研究方法にも違いがあるため、一般の人に安全かつ有効だと広く推奨できる段階ではありません。
国内でも、UMIN臨床試験登録システムに口閉じテープに関する研究が登録されています。2026年時点で確認できる主な情報は次のとおりです。
| 研究・情報 | 対象・規模 | 確認できる内容 |
|---|---|---|
| 2025年掲載のPLOS ONEレビュー | 10研究、213人 | 一部の指標に改善がみられた一方、全般的な有効性を裏付ける証拠は限定的。鼻閉時のリスクも指摘。 |
| 2026年8月掲載のOTO Openレビュー | 口閉じテープに関する2研究、計50人。いずれも軽症OSA | 一部の呼吸指標の改善が報告されたが、安全性や長期的な有効性を判断するには研究が不足。 |
| UMIN000049211 | 健常成人を対象とする睡眠の質に関する試験。登録上の参加者100人 | 登録情報には睡眠の質の改善を示す概要と有害事象の発生なしとの記載がある。ただし、詳細な結果は未公表。 |
| UMIN000059554 | 健常成人を対象とする試験。目標120人、登録上の参加者105人 | 2026年4月30日更新の登録情報では試験終了。結果は未公表で、解析終了予定日は2026年10月31日。 |
UMIN000049211は、カプセルホテル型睡眠施設での口閉じテープ使用と睡眠の質を検討した試験です。登録情報には一定の改善効果と有害事象の発生なしという概要が記載されていますが、詳細な結果が公表されていないため、その内容だけで一般の利用者にも安全だと結論づけることはできません。
後続のUMIN000059554も、カプセルホテル型睡眠施設で口閉じテープの有効性と呼吸イベントとの関係を調べる研究です。登録情報では、鼻づまりや呼吸器症状に関連する既往・治療歴がある人などが除外対象に設定されています。つまり、研究への参加条件そのものにも、安全性を考えるうえで重要な制限が設けられています。
なお、これらの試験は、口閉じテープの使用によって死亡事故が起きるかどうかを調べる大規模な安全性試験ではありません。少人数の短期研究で有害事象が報告されなかったとしても、まれな重大事故のリスクや長期間使用した場合の安全性まで否定することはできません。
【窒息リスク】鼻づまりと睡眠時無呼吸症候群が危険につながる理由
口閉じテープの仕組みは、唇をテープで留め、睡眠中に口が開くのを抑えて鼻呼吸を促すというものです。鼻から十分に空気を取り込める状態であれば、口呼吸の抑制につながる可能性があります。しかし、鼻からの空気の通り道が狭くなっていると、口を塞ぐことがかえって呼吸の妨げになります。
特に注意したいのが、風邪、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などによる鼻づまりや、鼻中隔弯曲など鼻呼吸を妨げる疾患です。寝る前は鼻が通っていても、睡眠中に鼻づまりが強くなることがあります。口からの呼吸も制限されていると、十分な空気を取り込めなくなるおそれがあります。
2026年8月の「OTO Open」のレビューでは、鼻閉に関する研究を統合した分析で、鼻閉によって無呼吸低呼吸指数(AHI)が平均13.78回/時、酸素飽和度低下指数(ODI)が平均7.45回/時増加する結果が報告されました。これは鼻閉そのものの影響を分析した数値であり、口閉じテープを貼った場合に必ず同じ変化が生じるという意味ではありません。ただし、鼻の通りが睡眠中の呼吸に大きく関係することを示す結果です。
もう一つ重要なのが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。国立精神・神経医療研究センターの睡眠関連呼吸障害に関する解説によると、閉塞性睡眠時無呼吸は、睡眠中に舌や喉の筋肉が緩み、上気道が狭くなったり閉塞したりすることで起こります。鼻や口を塞ぐだけで解決する問題ではありません。
日本呼吸器学会も、いびき、日中の眠気、起床時の頭痛などを睡眠時無呼吸症候群の症状として挙げています。診断には睡眠中の呼吸状態を調べる検査が必要で、中等症以上ではCPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)などの適切な治療が用いられます。
大きないびきが続く、家族から睡眠中の呼吸停止を指摘される、息苦しさや喘ぎで目が覚める、日中に強い眠気があるといった場合は、口閉じテープで症状を抑えようとせず、呼吸器内科や睡眠外来、耳鼻咽喉科などで相談してください。
【事故の原因を整理】口閉じテープの危険性が高まる条件とは
口閉じテープの危険性は、テープそのものの材質や粘着力だけでは決まりません。鼻呼吸ができるか、呼吸器の病気がないか、睡眠中に異常が起きたときに自分でテープを外せるか、といった条件が関係します。
注意したい条件は、次のとおりです。
- 鼻づまりや鼻呼吸を妨げる疾患がある:口からの呼吸も制限されることで、呼吸困難につながるおそれがある。
- 睡眠時無呼吸症候群が疑われる、または診断されている:気道の閉塞を解決する方法ではなく、口を塞ぐことで呼吸がしづらくなる可能性がある。
- 飲酒時や睡眠薬の服用時:意識や判断力が低下し、息苦しさを感じた際にテープを外す対応が遅れるおそれがある。
- 吐き気や嘔吐がある:口を自由に開けにくい状態は、異常が起きたときの対応を妨げる可能性がある。
- 自分でテープを着脱できない:認知機能や身体機能などの理由で、自力で取り外せない人には適さない。
- 唇や皮膚に傷、湿疹、かぶれやすさがある:接着剤による刺激や皮膚トラブルが起きるおそれがある。
このほか、乳幼児や小児への使用にも注意が必要です。例えば、小林製薬の「ナイトミン 鼻呼吸テープ」の公式使用上の注意では、鼻づまりや鼻呼吸に障害をきたす疾患がある人、悪心・吐き気がある人、飲酒時や睡眠薬服用時など自分で着脱できない状態の人、乳幼児・小児などは使用しないよう案内されています。
ここで重要なのは、これらの条件がすべて死亡事故の原因として確定しているわけではないことです。実際の事故の経緯や原因を特定できる報告がない状況で、特定の条件が死亡事故を引き起こしたと断定することはできません。一方で、呼吸を妨げる可能性がある条件を避けることは、製品の使用上の注意と医学的な知見に沿った安全対策です。
【使用条件と注意事項】口閉じテープはどう使うべきか
口閉じテープを使用する場合は、まず製品ごとの説明書と注意事項を確認してください。商品によって材質や粘着力、形状が異なるため、ある製品の使用方法を別の製品にそのまま当てはめることはできません。
小林製薬の「ナイトミン 鼻呼吸テープ」の使用方法では、鼻呼吸ができていることを確認したうえで、唇の中央に貼るよう案内されています。また、口全体を塞がないこと、息苦しさや気分の悪さを感じた場合は使用を中止すること、皮膚に異常が出た場合は使用を中止することなどが注意事項として示されています。
ただし、こうした製品上の注意を守れば、すべての人に安全性が保証されるわけではありません。特に、睡眠時無呼吸症候群が疑われる人や、慢性的な鼻づまりがある人は、テープを使用する前に医師へ相談が必要です。薬を服用している人や治療器を使用している人についても、製品の説明に従い、医師に確認してください。
使用を検討する際には、次の点を確認しましょう。
- 鼻づまりがなく、鼻呼吸が十分にできる状態か。
- 睡眠中の呼吸停止、激しいいびき、息苦しさ、日中の強い眠気などがないか。
- 飲酒や睡眠薬などの影響を受けていないか。
- 息苦しさや異常を感じたとき、自分で速やかにテープを外せるか。
- 製品が想定する使用対象と使用方法に合っているか。
これらの条件を満たしていても、口閉じテープを使うことが医学的に必要だとは限りません。使用中に息苦しさ、強い不快感、気分の悪さなどを感じた場合は、直ちにテープを外して使用を中止してください。症状が続く場合や、強い呼吸困難がある場合には医療機関に相談し、緊急性が高い場合は救急対応を求めてください。
【効果とデメリット】口閉じテープを選ぶ前に知っておきたいこと
口閉じテープには、睡眠中の口呼吸を抑え、口や喉の乾燥、いびき音を軽減することを目指した製品があります。口を開けて眠る習慣がある人にとっては、鼻呼吸を促すことがメリットになる可能性があります。
しかし、口閉じテープは睡眠時無呼吸症候群の標準治療ではなく、気道の閉塞を根本的に治療するものでもありません。鼻づまりや睡眠中の呼吸障害が原因で口呼吸になっている場合、口を塞ぐだけでは原因が残り、かえって危険な状態につながることがあります。
2025年のPLOS ONEレビューと2026年のOTO Openレビューが示しているのは、特定の条件下で一部の呼吸指標が改善する可能性がある一方、一般の人に広く勧められるだけの証拠や、長期的な安全性に関するデータが十分ではないという点です。少人数の研究で改善が見られたことを、すべての人に当てはまる効果と考えることはできません。
使用を検討する人にとって、最も重要なのは「テープを貼るべきか」だけではなく、「なぜ口が開いてしまうのか」を見極めることです。鼻炎などで鼻が詰まっているなら、その原因を治療することが先決です。いびきや日中の眠気がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の有無を調べることが先になります。
口閉じテープの安全性は、製品の評判や使用者の感想だけでは判断できません。期待できる効果と、鼻呼吸が妨げられた場合のリスクを比較し、自分の呼吸状態に問題がないかを確認することが、使用を判断するための基本です。
【口閉じテープ死亡事故】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:口閉じテープで死亡事故が起きたという報道はありますか?
A1:2026年10月28日時点で公開情報を確認した範囲では、口閉じテープが直接原因と確定した死亡事例について、具体的な経緯や因果関係を裏付けられる報道・医学的記録は確認できません。ただし、報告を確認できないことは、事故の危険性がゼロであることを意味しません。
Q2:口閉じテープで本当に窒息する危険はありますか?
A2:鼻づまりや鼻呼吸を妨げる疾患がある場合、口からの呼吸も制限されることで、呼吸困難につながるおそれがあります。査読済みの医学レビューでも、鼻閉がある人の口腔閉鎖に伴うリスクが指摘されています。鼻呼吸が十分にできない状態では使用しないでください。
Q3:睡眠時無呼吸症候群やいびきがある人でも使えますか?
A3:自己判断で使用することは勧められません。睡眠時無呼吸症候群は睡眠中の気道の閉塞などによって起こる病気で、口閉じテープは標準治療の代わりにはなりません。激しいいびき、呼吸停止、日中の強い眠気などがある場合は、呼吸器内科や睡眠外来などで相談してください。
Q4:鼻づまりがある日だけ使用を避ければよいですか?
A4:鼻づまりがあるときは使用を避ける必要があります。また、慢性的な鼻づまりや鼻呼吸を妨げる病気がある場合も、製品の注意事項に従って使用しないでください。睡眠中に鼻づまりが悪化する可能性もあるため、使用前に鼻呼吸が十分にできることを確認することが大切です。
Q5:2026年の研究では安全性が証明されていますか?
A5:安全性が全面的に証明されたわけではありません。2025年のシステマティックレビューでは10研究、213人が検討され、2026年のレビューでも口閉じテープに関する研究は限られていました。国内のUMIN登録試験にも詳細な結果が未公表のものがあり、長期的な安全性やまれな重大事故のリスクは十分に評価されていません。
まとめ:死亡事故の噂よりも、呼吸状態と使用条件を確認する
口閉じテープ死亡事故について、2026年10月28日時点の公開情報からは、口閉じテープが直接原因と確定した死亡事例の具体的な報道や医学的記録は確認できません。一方、医学研究では、鼻づまりがある人の口腔閉鎖に伴う危険性や、口閉じテープの有効性・安全性に関する証拠の不足が指摘されています。
日本呼吸器学会や国立精神・神経医療研究センターが示す睡眠時無呼吸症候群の情報、製品メーカーの使用上の注意、査読済みの医学レビューを踏まえると、口閉じテープを誰にでも安全な睡眠改善法として扱うことはできません。
鼻づまりがある人、睡眠中の呼吸停止を指摘された人、強いいびきや日中の眠気がある人は、テープで口を塞ぐ前に医療機関へ相談してください。口閉じテープを使用する場合も、製品の注意事項を守り、息苦しさや異常があれば直ちに使用を中止する必要があります。
死亡事故の報道が確認できないから安全だと考えるのではなく、呼吸を妨げる条件がないかを確認すること。それが、口閉じテープの効果とリスクを正しく判断し、自分の睡眠と健康を守るための最も重要な基準です。