「初老は何歳から?」という疑問に対する答えは、辞書の定義と現代の年齢イメージで異なります。古くからの意味では40歳の異称ですが、現代の国語辞典では60歳前後を指すと説明されることも多く、40代を初老と呼ぶべきかどうかは、使われる文脈によって変わります。
2024年のパリオリンピックで話題になった馬術日本代表の愛称「初老ジャパン」をきっかけに、この言葉の意味にも改めて関心が集まりました。2026年時点で参照できる広辞苑、新明解国語辞典、NHK放送文化研究所の調査、新聞社の言葉に関する解説を比較し、初老の由来や年齢イメージの変化、中年・高齢者との違いまで整理します。
【この記事の重要ポイントまとめ】
- 初老の本来の意味:古くは40歳の異称。現代では60歳前後を指す用法も一般的です。
- 年齢イメージの根拠:NHK放送文化研究所の2010年のウェブ調査では、初老をイメージする年齢の平均は57歳でした。
- 40代は初老なのか:辞書の歴史的な定義では該当しますが、現代の日常会話では60歳前後を想定する人も多く、一律には決められません。
【結論】初老は何歳から?2026年現在は60歳前後が一つの目安

初老の年齢を端的に答えるなら、本来の意味では40歳、現代の一般的な年齢イメージでは60歳前後です。この二つの説明は矛盾しているように見えますが、言葉の歴史と現在の使われ方を分けて考えれば、どちらも理解できます。
「初老」は、もともと40歳を表す年齢の異称でした。一方、現在の国語辞典には、老年に入りかけた時期という意味や、60歳前後を指すという説明もあります。つまり、40歳という数字は歴史的な定義を示し、60歳前後という数字は現代の用法やイメージを反映しているのです。
2026年現在も、初老について法律で定められた一律の年齢基準はありません。40歳の誕生日を迎えた瞬間に初老になるわけでも、60歳になれば必ず初老と呼ばれるわけでもありません。
日常会話で「初老」という言葉を使う場合は、辞書に40歳と書かれているからといって、40代の人を当然のように初老と呼ぶのは避けたほうが無難です。本人の受け止め方や会話の状況によっては、年齢を揶揄する表現として受け取られることがあるためです。
【辞書を比較】広辞苑は40歳、新明解国語辞典は60歳前後と説明
初老の年齢に違いが生じる理由を理解するには、複数の辞書を比較するのが近道です。辞書によって、歴史的な意味を中心に説明するものと、現代における一般的な用法まで記述するものがあります。
読売テレビの言葉に関する解説では、2024年7月31日に複数の国語辞典を比較しています。広辞苑第七版や新明解国語辞典第八版などを並べると、同じ「初老」という言葉でも、年齢をどのように説明するかに違いがあることが分かります。
| 資料・辞書 | 初老の年齢・意味 | 読み取れるポイント |
|---|---|---|
| 広辞苑第七版 | 40歳の異称 | 歴史的な年齢の意味を示す |
| 新明解国語辞典第八版 | もとは40歳の異称。現在は普通に60歳前後を指す | 昔と現在の意味を区別している |
| 明鏡国語辞典第三版 | もとは40歳。現在では60歳前後と意識される | 現代の年齢イメージも説明している |
| 精選版日本国語大辞典 | 40歳の異称。また、老年に入りかけた年ごろ。現代では50〜60歳前後を指すことが多い | 歴史的な意味と現代の用法を併記している |
| NHK放送文化研究所の2010年ウェブ調査 | イメージする年齢の平均は57歳 | 辞書の定義ではなく、言葉から連想する年齢を示す |
比較すると、重要なのは「40歳という定義が間違いになった」という話ではないことです。歴史的な意味は残りながら、日常的に思い浮かべる年齢が変化してきたのです。
特に新明解国語辞典第八版は、もともとの意味と現在の用法を明確に分けています。「初老は40歳」とだけ説明する場合と、「現在は60歳前後」と補足する場合では、読者が受け取る印象が大きく異なります。
したがって、初老の意味を正確に説明したい場合は、単に40歳か60歳かを選ぶのではなく、「本来は40歳の異称だが、現代では60歳前後を指すことも多い」と説明するのが適切です。
【意味と由来】なぜ初老は40歳を指していたのか
初老の読み方は「しょろう」です。言葉としては、老いの始まりや、老年に入りかけた時期を表します。現在の感覚では60歳前後を想像する人がいても不思議ではありませんが、歴史的には40歳を表す異称として使われてきました。
古い用例を調べると、菅原道真の漢詩文集『菅家文草』に注目できます。辞書編集者による日本語解説では、900年ごろの作品「題白菊花」にある「霜鬚秋暮驚初老」という句が紹介されています。
この句は、霜のように白くなったあごひげを見て、初老を迎えたことに驚く情景として解釈されています。当時の年齢の数え方では、道真が40歳に達したころの作品と考えられています。初老が40歳の異称だったことを示す、古い用例の一つです。
40歳を人生の節目と見る考え方は、古い漢籍に由来する年齢表現にも見られます。例えば、『礼記』の「曲礼上」には、40歳を「強」とし、仕える年齢とする考え方があります。また、『論語』には、40歳を「不惑」とする表現があります。
ただし、「不惑」と「初老」は同じ意味の言葉ではありません。不惑は迷いがなくなることを表す年齢の表現であり、初老は老いに入りかける年ごろを表す言葉です。どちらも40歳と結び付いていますが、意味や由来は区別して理解する必要があります。
また、初老の由来を説明する際には、40歳を人生の節目と考えていた歴史的な背景と、現代の年齢感覚を混同しないことが大切です。昔の40歳と2026年の40歳では、社会的な役割や生活環境、平均寿命などの条件が異なります。言葉が同じでも、その年齢から連想される人物像まで同じとは限りません。
【NHK調査を検証】初老は何歳からという世間のイメージは?
辞書の定義だけでは、実際に人々が何歳を初老と考えているのかは分かりません。そこで参考になるのが、NHK放送文化研究所が実施した言葉に関する調査や、新聞社などが公表しているアンケート結果です。
最初に、NHK放送文化研究所が2010年にウェブ上で行ったアンケートでは、「初老」という言葉から思い浮かべる年齢の平均は57歳でした。関連する調査結果の紹介では、男性の平均は55.5歳、女性は58.4歳とされています。
同調査では、60歳から、または65歳から初老をイメージする回答を合わせると57%を占めました。一方、40代を挙げた回答は10%、50代は26%でした。この結果からは、歴史的な定義である40歳よりも、かなり上の年齢を想定する人が多かったことが分かります。
加えて、NHK放送文化研究所の2017年の「日本語のゆれに関する調査」を扱った読売テレビの用語解説では、初老について62歳8か月から70歳4か月という年齢の幅が紹介されています。これは辞書が定める年齢ではなく、調査における年齢イメージに関する数値として区別して読む必要があります。
2018年には、毎日新聞の校閲センターも「初老」という言葉のイメージを調査しています。結果は次のとおりです。
- 40代:25.5%
- 50代:30.8%
- 60代:38.8%
- 70代:4.8%
この調査では60代が最多でしたが、40代と50代を合わせると56.3%に達します。つまり、60代を初老と考える人が最も多かった一方で、40代や50代を初老と捉える人も少なくありませんでした。
ただし、これらの調査は実施年や質問方法、回答者が異なります。2010年のNHKのウェブ調査、2017年の日本語に関する調査、2018年の毎日新聞の調査を、そのまま一つの連続した世論の推移として扱うことはできません。
2026年時点で参照できるこれらの資料から分かるのは、初老の年齢イメージには幅があり、60歳前後を中心としながらも、40代や50代と考える人もいるということです。2026年に実施された新しい全国調査の数値が示されているわけではないため、「2026年の平均は何歳」と断定することはできません。
【初老と中年・高齢者の違い】年齢の境界線は同じではない
初老、中年、高齢者は、いずれも年齢に関係する言葉ですが、意味も使われ方も異なります。初老は老年に入りかけた時期を表す言葉、中年は青年と老年の間の年ごろ、高齢者は年齢が高い人を指す言葉です。
中年については、一般的に40代から50代にかけてを指す用法が見られます。ただし、中年にも法律などで統一された年齢の境界があるわけではありません。初老と中年は意味が重なり合う部分があり、40代や50代がどちらに当たるかは、文脈や使い方によって変わります。
一方、高齢者は、行政や医療制度などで年齢区分が設けられることがあります。厚生労働省の情報サイトでは、日本の医療制度における区分として、65〜74歳を前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と説明しています。また、道路交通法では、高齢者講習などに関連して70歳以上という基準が用いられています。
このように、高齢者の年齢区分は制度や目的によって異なります。初老のように言葉の一般的な意味や年齢イメージによって使われる表現とは、判断の基準が違います。
40歳で初老と呼ばれる場合があるからといって、40歳が制度上の高齢者に当たるわけではありません。反対に、65歳以上が医療制度上の高齢者に分類されるからといって、65歳になった人を日常会話で必ず初老と呼ぶ必要もありません。
年齢に関する言葉を使い分ける際は、次のように考えると分かりやすくなります。
- 初老:老年に入りかけた時期を表す言葉。歴史的には40歳、現代の用法では60歳前後を指す場合がある。
- 中年:青年と老年の間の年ごろ。一般的には40代から50代が想定されることが多い。
- 高齢者:年齢が高い人を指す言葉。行政・医療などでは、それぞれの制度に基づく区分が用いられる。
大切なのは、これらを年齢だけで機械的に区切らないことです。言葉の意味を説明する場面なのか、制度上の区分を示す場面なのかによって、適切な表現は変わります。
【男性・女性・初老ジャパン】40代は早い?使うときの注意点
「初老は男性なら何歳からなのか」「女性は何歳からなのか」という疑問もあります。歴史的な意味では、初老は男性だけ、あるいは女性だけに限られた年齢表現ではなく、40歳の異称として使われてきました。
一方、精選版日本国語大辞典には、女性では月経閉止期、男性では作業能力が衰え始めてから老化現象が顕著になるまでの期間という、性別による説明も掲載されています。ただし、これは辞書に記された語義の説明であり、現代の医学的な基準や、男女別の統一された初老年齢を示すものではありません。
現代の日常会話では、男性だから40歳から、女性だから50歳からというように、性別で初老の開始年齢が決まっているわけではありません。男女ともに、年齢だけでなく本人の生活状況や言葉の受け止め方を考慮することが大切です。
では、40代を初老と呼ぶのは早いのでしょうか。辞書の歴史的な定義に照らせば、40歳は初老に当たります。しかし、現代の一般的な年齢イメージでは60歳前後を思い浮かべる人も多いため、40代の人を初老と呼ぶと、違和感を持たれる可能性があります。
この違いが注目された出来事が、2024年のパリオリンピックです。総合馬術団体で銅メダルを獲得した日本代表チームは、「初老ジャパン」という愛称で話題になりました。
日本オリンピック委員会(JOC)のインタビューによると、この愛称は大会前の合宿でチームの呼び名を考える中で生まれたものです。全員が昭和生まれであることから「昭和」という案も出ましたが、最終的に「初老」という言葉が採用されました。チーム自身が考えた愛称だった点が特徴です。
メダル獲得時のメンバーは、大岩義明選手が48歳、戸本一真選手が41歳、田中利幸選手が39歳、北島隆三選手が38歳で、平均年齢は41.5歳でした。日本の馬術界にとっては、1932年のロサンゼルスオリンピック以来、92年ぶりのメダル獲得という快挙でもありました。
「初老ジャパン」は、40代前後の選手たちが自分たちのチームに付けた愛称です。この事例は、40代を初老と呼ぶことが辞書の歴史的な意味に沿っていることを示す一方、すべての40代の人を初老と呼ぶのが一般的だという根拠にはなりません。
言葉を使う際の判断基準は、誰が誰に対して使うのか、本人が自称しているのか、年齢の説明を目的としているのかという点です。本人がユーモアを込めて使う愛称と、第三者が他人の年齢を評価するために使う表現とでは、受け取られ方が大きく異なります。
【初老何歳から】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:初老は40歳からですか、それとも60歳からですか?
A1:歴史的には40歳の異称ですが、現代では60歳前後を指すと説明する辞書もあります。どちらか一方だけが正しいのではなく、本来の意味と現在の用法を分けて理解することが大切です。
Q2:40代を初老と呼ぶのは間違いですか?
A2:歴史的な辞書の定義に照らせば間違いとはいえません。ただし、現代では60歳前後を想定する人も多く、40代の人を初老と呼ぶと違和感や不快感を与える場合があります。相手や場面に配慮して使いましょう。
Q3:初老は男性と女性で何歳からと違いがありますか?
A3:初老に男女別の統一された年齢基準はありません。古い辞書には男女の身体的な変化に関連付けた説明もありますが、現代において男性は何歳、女性は何歳と一律に区切る根拠にはなりません。
Q4:初老と中年、高齢者は同じ意味ですか?
A4:同じ意味ではありません。中年は青年と老年の間の年ごろ、初老は老年に入りかけた時期を表します。高齢者は年齢が高い人を指し、行政や医療制度では目的に応じた年齢区分が設けられています。
Q5:NHKの調査では初老は何歳とされていますか?
A5:NHK放送文化研究所が2010年に実施したウェブアンケートでは、初老をイメージする年齢の平均は57歳でした。また、2017年の「日本語のゆれに関する調査」に関連して、初老の年齢イメージが62歳8か月から70歳4か月という幅で紹介されています。調査の時期や方法が異なるため、それぞれを区別して見る必要があります。
まとめ:初老は何歳から?辞書の定義と現代の感覚を分けて考える
初老は何歳からなのかという疑問には、本来は40歳の異称、現代では60歳前後を指す場合が多いという二つの視点から答えるのが適切です。広辞苑第七版は40歳の異称として説明する一方、新明解国語辞典第八版は、もとの意味と現在の用法を区別しています。
NHK放送文化研究所の2010年のウェブ調査では、初老をイメージする年齢の平均は57歳でした。2018年の毎日新聞の調査でも60代が最多となりましたが、40代や50代を挙げる回答も多く、初老の年齢イメージが一つに定まっていないことが分かります。
また、2024年のパリオリンピックで話題になった「初老ジャパン」は、40代前後の選手たちが自ら名付けた愛称でした。この事例を、40代の人すべてを初老と呼ぶ根拠にするのは適切ではありません。
2026年現在、初老を何歳からとするかについて、法律などで定められた一律の基準はありません。言葉の意味を知りたい場合は辞書の記述を確認し、実際の会話で使う場合は現代の年齢感覚と相手の受け止め方を考慮することが大切です。
40歳という歴史的な定義と、60歳前後という現代の用法。その両方を理解しておけば、「40代は初老なのか」という疑問にも、単純な正誤ではなく、言葉の歴史と現在の使われ方に基づいて答えられます。