ミライトワとソメイティは、同じ東京2020大会の公式マスコットでありながら、それぞれ異なる大会理念を表現しています。
大きな違いは、ミライトワがオリンピックの伝統と革新、ソメイティがパラリンピックの強さと可能性を象徴していることです。
ミライトワはオリンピックの公式マスコット
ミライトワ(MIRAITOWA)
- 担当:東京2020オリンピック
- 基調色:藍色・白
- 主なモチーフ:市松模様、侍の兜、近未来
- 性格:正義感が強く、運動神経抜群
- 特技:瞬間移動
名前には「素晴らしい未来が永遠に続くように」という願いが込められています。
ミライトワの最大の特徴は、東京2020大会のエンブレムにも採用された藍色の市松模様です。
谷口さんは、日本の伝統文化と近未来的なイメージを組み合わせることを意識しました。頭部の兜を思わせる形状や、左右に伸びる翼のようなパーツには、日本らしさとスポーツのスピード感が表れています。
IOC(国際オリンピック委員会)のオリンピック研究センターが2026年に公開した大会マスコットの資料でも、ミライトワは伝統と未来を融合させたキャラクターとして紹介されています。
ソメイティはパラリンピックの公式マスコット
ソメイティ(SOMEITY)
- 担当:東京2020パラリンピック
- 基調色:桜色・白
- 主なモチーフ:ソメイヨシノ、桜の触角、市松模様
- 性格:普段は物静かだが、内面には強い力を秘める
- 特技:テレパシー、飛行、念力
障壁を乗り越えるパラリンピアンの精神的・身体的な強さを象徴します。
ソメイティは、日本を代表する桜の品種であるソメイヨシノをモチーフにしています。
顔の両側にある桜の触角は、単なる装飾ではありません。公式設定では、この触角を使ってテレパシーによる情報の送受信ができるとされています。
また、市松模様のマントを使って空を飛ぶ能力も持っています。
注目したいのは、ソメイティが単にかわいらしい桜のキャラクターではないことです。障害を乗り越えて競技に挑むパラリンピアンの力強さを、超能力という設定に置き換えて表現しています。
名前の由来を比較
| 比較項目 | ミライトワ | ソメイティ |
|---|---|---|
| 英語表記 | MIRAITOWA | SOMEITY |
| 名前の由来 | 未来+永遠(とわ) | ソメイヨシノ+So mighty |
| 象徴するもの | 未来への希望 | 強さと可能性 |
| イメージカラー | 藍色 | ピンク |
| 大会 | オリンピック | パラリンピック |
| デザインの中心 | 伝統と近未来 | 自然と超人的な力 |
ソメイティの「So mighty」は、英語で「とても力強い」という意味を持つ表現です。
日本の桜という伝統的なモチーフに、世界の人々にも伝わりやすい英語の響きを組み合わせた点が特徴的です。
2体の名前は、2018年7月22日の正式デビューイベントで発表されました。
【誕生秘話】谷口亮はどんなデザイナー?2体に込めた制作背景

- 職業:イラストレーター、キャラクターデザイナー
- 出身:福岡市
- 生年月日:1974年9月5日
- 活動拠点:福岡
- 代表的な実績:東京2020大会公式マスコットのデザイン
ミライトワとソメイティを生み出した谷口亮さんは、東京2020の公募に応募する以前から、オリジナルキャラクターの制作を続けてきたイラストレーターです。
下積み時代から世界的な仕事へ
谷口さんは幼少期から絵を描くことが好きで、イラストレーターだった父親の影響も受けて育ちました。
高校卒業後はアメリカのカリフォルニア州にあるカブリロ・カレッジで美術を学び、帰国後は福岡を拠点にフリーのイラストレーターとして活動しました。
初期には自作のキャラクターグッズやポストカードを路上販売していた時期もあります。
企業や教育関連のキャラクターデザインなどを手がけるなか、2017年に東京2020大会のマスコット公募を知り、応募を決意しました。
2018年2月の採用決定は、長年の創作活動が大きな舞台につながった転機でした。
ミライトワの発想はリオ大会の閉会式から
谷口さんの制作背景で興味深いのは、2016年リオデジャネイロ大会の閉会式で披露された東京への引き継ぎセレモニーが着想の一つになったことです。
当時の東京の演出から、伝統的な日本文化と近未来的な都市のイメージを融合させる方向性を考えました。
ミライトワのデザインでは、東京2020大会のエンブレムと一体感を持たせるため、市松模様を取り入れることを重視しています。
加えて、日本の伝統を表現するために兜をイメージした形状を採用しました。
谷口さん自身の2019年のインタビューによると、当初は聖火をイメージしたちょんまげ風の装飾も検討しましたが、市松模様を目立たせるために取り除いたそうです。
シンプルなデザインに情報を詰め込みすぎないという判断が、ミライトワの特徴を際立たせています。
ソメイティの発想は自然とパラリンピアンの強さ
一方、ソメイティはミライトワとは異なる発想から生まれました。
谷口さんは、ミライトワが日本の伝統や文化を表すなら、対になるソメイティには日本の自然を取り入れようと考えました。
そこで選ばれたのが桜です。
加えて、パラリンピックの競技者が持つ身体的・精神的な強さを表現するため、超人的な能力という設定を加えました。
谷口さんは、義足を使って驚異的な跳躍を見せるパラリンピアンの姿から、道具だけでは説明できない選手自身の能力や精神力に着想を得たことをインタビューで語っています。
また、2026年のJOC主催トークイベントでは、ソメイティに性別を設定しないというルールがあり、女の子らしさに偏らないよう、力強いポーズや濃いピンクを選んだと説明しました。
この制作背景から分かるのは、2体が単純な色違いのキャラクターではないということです。日本の伝統文化と自然、そして異なる大会の理念を、それぞれ独立したデザインで表現しているのです。
【2018年の選考】小学生が決めた東京2020公式マスコットの誕生経緯
東京2020大会のマスコット選考は、オリンピックの歴史の中でも特徴的な試みでした。
一般公募から候補を絞り込んだ後、最終的なデザインを全国の小学生による投票で決定したのです。
応募から正式デビューまでの流れ
IOCの資料によると、2017年8月に受け付けられたデザインは合計2,042件でした。
選考委員会による審査を経て、2017年12月に3組の候補が公表されます。
その後、2018年2月まで小学生による投票が実施され、最も多くの票を獲得した谷口さんのA案が採用されました。
| 時期 | 出来事 | 詳細 |
|---|---|---|
| 2017年8月 | 一般公募 | 2,042件の応募 |
| 2017年12月 | 最終候補発表 | A・B・Cの3案 |
| 2017年12月11日 | 投票開始 | 小学校の学級単位で投票 |
| 2018年2月22日 | 投票終了 | 16,769校が参加 |
| 2018年2月28日 | デザイン決定 | 谷口亮さんのA案が採用 |
| 2018年7月22日 | 正式デビュー | ミライトワとソメイティの名前を発表 |
投票結果はA案が109,041票でトップ
投票結果は次のとおりです。
| 候補 | デザイナー | 得票数 |
|---|---|---|
| A案 | 谷口亮 | 109,041票 |
| B案 | 矢野花奈 | 61,423票 |
| C案 | 秋本早苗 | 35,291票 |
合計205,755学級が投票し、谷口さんのA案は2位以下に大差をつけて選ばれました。
この選考の特徴は、単純な一般人気投票ではなく、学級ごとに一票を投じる仕組みだったことです。
子供たちが候補を見比べ、クラスで意見を交わしながら選択する機会が設けられました。
なぜ子供に最終決定を任せたのか
東京2020大会の組織委員会は、マスコット選考に子供たちが参加することで、大会を身近に感じてもらうことを目指していました。
オリンピックはトップアスリートだけのものではありません。
未来を担う子供たちが大会の準備段階から参加すること自体に、教育的な意味がありました。
一方で、子供が選んだことに対する異論も存在しました。
スポーツメディアSB Nationなどでは、他の候補案の方が優れていたという意見や、最終決定を子供に任せることへの疑問も紹介されています。
つまり、この選考はデザインの優劣だけでなく、誰が大会の象徴を選ぶべきなのかという議論も生んだのです。
【評判と評価】ミライトワはポケモンに似ている?2018年の反応を検証
ミライトワとソメイティのデザインは、発表直後から国内外で話題になりました。
その評価は一枚岩ではありません。かわいらしさを評価する声がある一方、デザインの方向性やキャラクターとしての親しみやすさに疑問を持つ意見もありました。
ポケモンに似ているという声の正体
発表当時、SNSでは2体の近未来的なデザインについて、ポケモンのようだという感想が複数見られました。
これは、既存作品との正式な関係を示すものではありません。
丸みのあるキャラクター造形や、個性的な能力を持つ設定、鮮やかな色使いなどが、日本のゲームやアニメのキャラクター文化を連想させたものと考えられます。
2021年のニューヨーク・タイムズによる取材記事でも、マスコット文化を研究する関係者が、子供たちにはポケモンを連想させる外見が親しみやすかった可能性を指摘しています。
海外メディアはどう評価したのか
2018年2月の発表直後、AFP通信が配信した記事では、SNS上の反応は賛否が混在していたと報じられました。
主な評価は次のように整理できます。
- 「日本らしくてかわいい」という好意的な意見
- もっと丸みがあり、抱きしめたくなるデザインがよいという意見
- 子供には近未来的なデザインが好まれ、大人には柔らかく伝統的なデザインが好まれるという分析
また、2018年3月のフォーブスに掲載されたジェイク・エーデルスタインの寄稿では、全体として好意的な反応が紹介される一方、青とピンクの配色やキャラクターの役割分担について、従来のジェンダー観を連想させるという批判にも触れられました。
デザインの印象が、見る人の世代や価値観によって異なっていたことが分かります。
性別は公式に決められていたのか
ここは誤解されやすいポイントです。
ミライトワが青、ソメイティがピンクという配色から、男の子と女の子のペアだと思われることがあります。
しかし、谷口さんは2026年のJOCトークイベントで、デザイン時に性別を設定しないというルールがあったことを明らかにしています。
したがって、青とピンクの色だけで性別を決めつけるのは正確ではありません。
この点は、発表当初のジェンダー表現に関する批判を考えるうえでも重要です。
評価をどう捉えるべきか
2018年の選考段階では、子供たちを中心に好意的な支持を集めました。
ただし、デザインの人気と大会期間中の露出、グッズの販売実績は、それぞれ別の評価軸です。
2021年のニューヨーク・タイムズの取材記事では、マスコットの大会中の露出が比較的少なく、名前が覚えにくいという声も紹介されました。
その背景には、新型コロナウイルス感染症の影響による無観客開催や、会場での活動機会の制約がありました。
つまり、キャラクターそのものへの否定的評価と、大会環境による露出不足を混同しないことが大切です。
【大会終了後の現在】ミライトワとソメイティが残した東京2020のレガシー
東京2020大会は2021年に開催されました。
新型コロナウイルス感染症の影響により、当初予定されていた2020年から延期され、多くの競技会場で観客の入場が制限されました。
その影響を受けたのが、ミライトワとソメイティの活動です。
コロナ禍で限られたマスコットの活躍
マスコットは大会の広報活動やイベント出演、選手との交流などを通じて大会を盛り上げる役割を担っていました。
しかし、観客が会場に集まれない状況では、当初想定されていたような対面での活動が難しくなりました。
2021年9月の報道では、谷口さんも2体の活動について、コロナ禍で露出が減った一方、裏方として大会のPRに取り組んでいたと振り返っています。
東京2020大会の教育的レガシー
2体が残した重要な成果の一つは、子供たちが大会づくりに参加したという経験です。
東京都の東京2020レガシー関連資料では、マスコット選考が大会史上初めて全国の小学生によって行われた取り組みとして整理されています。
これは単なるキャラクター人気投票ではありません。
子供たちがスポーツや国際大会について考え、意見を出し、最終決定に関わったという経験そのものが、大会の教育的な遺産になっています。
2022年のミライティとは?
大会終了後の2022年初頭には、谷口さんがミライトワとソメイティを融合させたキャラクター「ミライティ」を制作・紹介したことも話題になりました。
ミライティは、2体の特徴を組み合わせた派生キャラクターです。
ここで注意したいのは、ミライティは東京2020大会の公式マスコットとして新たに制定されたキャラクターではないという点です。
ミライトワとソメイティの創作世界を広げる、谷口さんによる非公式の派生表現として区別する必要があります。
2026年現在も公式イベントに登場
大会終了から5年を迎えた2026年、日本オリンピック委員会(JOC)は東京2020大会5周年記念企画として、谷口さんを招いたトークイベントを開催しました。
2026年6月21日に日本オリンピックミュージアム(JOM)で実施されたイベントでは、「ミラソメ誕生とその活躍」をテーマに、デザインの制作背景や大会期間中の活動が振り返られました。
当日はミライトワとソメイティも登場し、NHKの応援ソング「パプリカ」に合わせてダンスを披露。加えて、谷口さんから日本オリンピックミュージアムへの博多人形の寄贈も行われました。
このイベントで谷口さんは、現在もSNSなどで2体の写真を発信しているファンへの感謝を述べています。
また、2体について「お嫁に行った子どものような感覚」と表現し、作者としての愛着を語りました。
2026年現在のミライトワとソメイティは、東京2020大会の記念イベントや文化的な活動を通して、当時の大会を思い起こさせる存在になっています。
【よくある質問】ミライトワとソメイティの違いに関するFAQ
Q1:ミライトワとソメイティはどちらがオリンピックのマスコットですか?
A1:ミライトワが東京2020オリンピック、ソメイティが東京2020パラリンピックの公式マスコットです。2体は同じ大会の公式キャラクターですが、担当する大会が異なります。
Q2:ミライトワとソメイティの名前の由来は何ですか?
A2:ミライトワは「未来」と「永遠(とわ)」の組み合わせです。ソメイティは桜の品種「ソメイヨシノ」と、英語の「So mighty」を組み合わせています。
Q3:ミライトワとソメイティをデザインしたのは誰ですか?
A3:福岡を拠点に活動するイラストレーターの谷口亮さんです。2018年2月、全国の小学生による投票で谷口さんのデザインが選ばれました。
Q4:ミライトワとソメイティはポケモンに似ているのですか?
A4:発表当時、SNSや海外メディアでポケモンを連想するという意見が紹介されました。ただし、公式にポケモンとの関係があるわけではありません。谷口さん独自のデザインです。
Q5:ミライトワとソメイティに性別はありますか?
A5:公式の制作ルールでは性別を設定しないことになっていました。青とピンクという色の違いだけで男女を判断することはできません。
Q6:ミライティとは何ですか?
A6:2022年初頭に谷口亮さんが紹介した、ミライトワとソメイティを融合させた派生キャラクターです。東京2020大会の公式マスコットとは異なります。
Q7:ミライトワとソメイティは2026年現在も活動していますか?
A7:2026年にもJOC主催の東京2020大会5周年記念イベントに登場しています。大会終了後も、記念行事や大会レガシーを伝える活動で姿を見ることができます。
まとめ:【プロの結論】ミライトワとソメイティが東京2020に残したもの
ミライトワとソメイティは、単に東京2020大会を盛り上げるために作られたキャラクターではありません。
ミライトワには、日本の伝統と近未来を結びつける発想が込められています。ソメイティには、日本の自然とパラリンピアンの持つ力強さが表現されています。
そして、2体の誕生には全国の小学生が参加したという、特別な選考の歴史があります。
今回のポイントを整理すると、次の3つです。
1. キャラクターの違い: ミライトワはオリンピック、ソメイティはパラリンピックを象徴する。
2. 誕生の背景: 谷口亮さんが伝統・自然・近未来・アスリートの精神をデザインに落とし込んだ。
3. 大会後の価値: 子供たちの参加という教育的レガシーを残し、2026年にも記念イベントで受け継がれている。
特に注目したいのは、2026年の5周年記念イベントです。
大会が終われば役目を終えると思われがちな公式マスコットですが、ミライトワとソメイティは、制作者やファン、オリンピック関係者によって現在も大切にされています。
東京2020大会には、新型コロナウイルス感染症による制約など、当初の計画どおりに進まなかった側面もありました。それでも、2体が生まれた経緯や子供たちが選考に参加した経験は、大会の記録として残り続けています。
ミライトワとソメイティの本当の価値は、東京2020という一つの大会を象徴するだけでなく、その大会で生まれた希望や参加の記憶を次の世代へ伝えていることにあります。