「(a+b+c)³を展開すると、なぜa³+b³+c³だけでは答えにならないのか」「途中式のどこで6abcが現れるのか」。三項式の三乗は、二項式の三乗より項が多く、係数や混合項を取り違えやすい計算です。しかし、展開の仕組みを理解すれば、公式を丸暗記しなくても正しい答えを導けます。
この記事では、(a+b+c)³の展開公式と計算方法を出発点に、公式の導き方、二項定理との関係、係数の求め方、具体的な例題、練習問題まで順番に解説します。特に、混合項の係数が3になる理由と、abcの係数が6になる理由を理解すると、複雑な多項式の展開にも対応しやすくなります。
【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:(a+b+c)³には、a³+b³+c³だけでなく、6種類の二文字の混合項と6abcが含まれる。
- 要点2:6abcの係数は、a・b・cを1回ずつ選ぶ並べ方が3!=6通りあることから導ける。
- 要点3:二項定理を段階的に使い、10個の項と係数を確認すれば、展開計算のミスを防ぎやすい。
【基本公式】(a+b+c)³の展開公式と正しい答え

まず覚えておきたいのが、三項式の三乗を展開する次の公式です。
(a+b+c)³ = a³+b³+c³+3a²b+3a²c+3ab²+3b²c+3ac²+3bc²+6abc
文字の並びを整理すると、次の形でも表せます。
(a+b+c)³ = a³+b³+c³+3(a²b+a²c+ab²+b²c+ac²+bc²)+6abc
どちらも同じ式です。前者は各項を確認しやすく、後者は混合項をまとめて把握しやすいという違いがあります。
ここでいう混合項とは、異なる文字を組み合わせた項のことです。例えば、a²b、ab²、abcが該当します。三項式の三乗では、文字の組み合わせだけでなく、それぞれの文字の指数にも注意する必要があります。
展開結果は、次の3種類に分けると整理しやすくなります。
- 純粋な三乗の項:a³、b³、c³
- 2種類の文字からなる混合項:a²b、a²c、ab²、b²c、ac²、bc²。それぞれの係数は3。
- 3種類の文字を含む項:abc。係数は6。
展開結果に現れる異なる項は、合計10個です。3個の純粋な三乗、6個の二文字の混合項、1個のabcに分けて数えれば、項の抜けを発見しやすくなります。
【途中式を解説】三項式の三乗の公式はどう導く?
公式を確実に使いこなすには、いきなり10個の項を暗記するより、まず二乗の公式を利用して導く方法を覚えるのがおすすめです。
ステップ1:三乗を「和と二乗の積」に変える
三乗は、同じ式を3回掛けたものです。そのため、次のように変形できます。
(a+b+c)³ = (a+b+c)(a+b+c)²
ステップ2:三項式の二乗を展開する
二乗の展開公式を使うと、次の式が得られます。
(a+b+c)² = a²+b²+c²+2ab+2bc+2ca
これを先ほどの式に代入します。
(a+b+c)³ = (a+b+c)(a²+b²+c²+2ab+2bc+2ca)
ステップ3:a、b、cをそれぞれ掛ける
分配法則に従って、左側の各項を右側の括弧内のすべての項に掛けます。
aを掛けた部分は、次のとおりです。
a³+ab²+ac²+2a²b+2abc+2a²c
bを掛けた部分は、次のとおりです。
a²b+b³+bc²+2ab²+2b²c+2abc
cを掛けた部分は、次のとおりです。
a²c+b²c+c³+2abc+2bc²+2ac²
ステップ4:同類項をまとめる
3つの式をすべて足し、同じ文字と指数を持つ項をまとめます。例えば、a²bは最初の式に2a²b、2番目の式にa²bとして現れるため、合計は3a²bです。
同じ要領で、a²c、ab²、b²c、ac²、bc²の係数もそれぞれ3になります。一方、abcは3つの式すべてに2abcとして現れるため、合計は6abcです。
以上から、次の展開公式が導かれます。
(a+b+c)³ = a³+b³+c³+3a²b+3a²c+3ab²+3b²c+3ac²+3bc²+6abc
この方法なら、公式を忘れた場合でも二乗の公式と分配法則から答えを再現できます。
【なぜ6abc?】a³+b³+c³だけでは足りない理由
(a+b+c)³を計算するときに起こりやすい誤解が、各文字をそれぞれ三乗したa³+b³+c³だけを書いてしまうことです。しかし、これは一般には正しくありません。
三乗の意味は、各文字を別々に三乗することではなく、和全体を3回掛けることです。
(a+b+c)³ = (a+b+c)(a+b+c)(a+b+c)
この積では、3つの括弧から異なる文字を選んで掛け合わせることもできます。例えば、最初の括弧からa、2番目からb、3番目からcを選べばabcが生まれます。
abcが6abcになる理由は、a・b・cを選ぶ順番が6通りあるためです。
具体的には、選び方は次の6通りです。
- abc
- acb
- bac
- bca
- cab
- cba
文字の掛け算では順序を入れ替えても値は同じなので、これらはすべてabcにまとまります。したがって、合計は6abcです。
これは階乗を使って、3!=3×2×1=6と表すこともできます。
では、a²bの係数が3になるのはなぜでしょうか。3つの括弧のうち、どの1つからbを選ぶかによって、a²bを作る方法は3通りあります。残りの2つからaを選べばよいためです。
つまり、係数の違いは単なる暗記項目ではありません。各括弧から文字を選ぶ組み合わせの数を表しています。この考え方を理解すると、より高い次数の多項式を展開する際にも役立ちます。
【二項定理との関係】係数の求め方と乗法公式の比較
(a+b+c)³の展開は、二項定理の考え方を段階的に適用することで整理できます。高校数学の教材で扱われる二項式の三乗も、係数1・3・3・1を使って展開するのが基本です。三項式では、文字が1種類増えるため、組み合わせの数も増えます。
最初に、a+bをひとまとまりの文字xと置くと、元の式は(x+c)³になります。ここで二項式の三乗の公式を使います。
(x+c)³ = x³+3x²c+3xc²+c³
x=a+bを戻せば、次の式になります。
(a+b+c)³ = (a+b)³+3(a+b)²c+3(a+b)c²+c³
加えて、各括弧を展開すると、先ほどの三項式の公式が得られます。このように、二項定理を2段階で適用することでも計算できます。
より一般的には、多項定理を利用して係数を直接求める方法もあります。例えば、a²bの係数は3!÷(2!1!0!)=3、abcの係数は3!÷(1!1!1!)=6です。
主要な項の係数を比較すると、次のようになります。
| 項の種類 | 具体例 | 係数 | 係数の理由 |
|---|---|---|---|
| 同じ文字だけの三乗 | a³ | 1 | 3つの括弧からaを選ぶ方法は1通り |
| 2乗と1乗の組み合わせ | a²b | 3 | bを選ぶ括弧が3通り |
| 2乗と1乗の組み合わせ | ab² | 3 | aを選ぶ括弧が3通り |
| 3種類の文字を1回ずつ選ぶ | abc | 6 | 3文字の並べ方が3!=6通り |
この比較からわかるのは、展開公式の係数には規則性があるということです。係数を単純に暗記するだけでなく、組み合わせの数として考えると、複雑な展開でも根拠を持って計算できます。
【多項式の展開例題】具体的な計算方法をマスター
公式の形を理解したら、文字の前に係数が付いた式や、定数を含む式にも適用してみましょう。基本となるのは、元のa、b、cに何を代入するかを正しく見極めることです。
例題1: (x+y+z)³を展開する
公式にa=x、b=y、c=zを代入します。
(x+y+z)³ = x³+y³+z³+3x²y+3x²z+3xy²+3y²z+3xz²+3yz²+6xyz
文字を置き換えただけなので、係数と項の構造は変わりません。
例題2: (x+2)³を計算する
これは三項式ではありませんが、二項式の三乗の公式を確認するのに適した例です。
(x+2)³ = x³+3x²・2+3x・2²+2³
= x³+6x²+12x+8
二項式の三乗では、係数1・3・3・1の規則が基本になります。
例題3: (a+b+2)³を展開する
元の公式でc=2と置きます。
(a+b+2)³ = a³+b³+2³+3a²b+3a²・2+3ab²+3b²・2+3a・2²+3b・2²+6ab・2
それぞれ計算すると、次の答えになります。
(a+b+2)³ = a³+b³+3a²b+3ab²+6a²+6b²+12a+12b+6ab+8
この例では、定数の2を三乗する項、2乗する項、一次の項がそれぞれ現れます。2²と2³を混同しないことがポイントです。
例題4: (2x-y+z)³を展開する
公式のa=2x、b=−y、c=zを代入します。符号を含めて、それぞれの文字をひとまとまりとして扱います。
(2x-y+z)³ = (2x)³+(-y)³+z³+3(2x)²(-y)+3(2x)²z+3(2x)(-y)²+3(-y)²z+3(2x)z²+3(-y)z²+6(2x)(-y)z
整理すると、次のようになります。
(2x-y+z)³ = 8x³-y³+z³-12x²y+12x²z+6xy²+3y²z+6xz²-3yz²-12xyz
負の符号が付く文字は、奇数乗なら負、偶数乗なら正になる点に注意してください。特に、(-y)²=y²ですが、(-y)³=−y³です。
【覚え方と練習問題】展開計算のミスを防ぐ確認方法
三項式の三乗を正確に計算するには、公式を丸ごと暗記するだけでなく、項の種類と係数を分けて覚えるのが効果的です。
覚え方1:3・6・10の数字を使う
- 純粋な三乗は3項。
- 二文字の混合項は6項で、それぞれの係数は3。
- abcの項は1項で、係数は6。
- 異なる項の合計は10項。
「3項・6項・1項で合計10項」と確認すれば、展開結果の抜けを見つけやすくなります。
覚え方2:二項式の公式を土台にする
(a+b)³=a³+3a²b+3ab²+b³という公式を先に思い出し、3つ目の文字cを加えた場合の混合項を整理します。三項式の公式を完全に忘れてしまっても、二項式の公式と分配法則から再構成できます。
覚え方3:文字の順序をそろえる
項を並べるときは、a、b、cの順序を固定し、a²b、a²c、ab²、b²c、ac²、bc²のように整理します。表記の順番を統一するだけでも、同じ項の見落としや二重計上を減らせます。
よくある計算ミス
- 混合項を省略する:a³+b³+c³だけでは展開が完了していません。
- abcの係数を3にする:abcの係数は6です。
- 指数を間違える:a²bとab²は別の項です。
- 負の符号を落とす:−yを代入したときは、奇数乗と偶数乗で符号が変わります。
- 同類項をまとめ忘れる:展開した直後は、同じ項が複数の箇所に現れることがあります。
三乗の展開・練習問題
ここまでの知識を使って、次の3問に挑戦してみましょう。答えを見る前に、各項の種類と係数を確認するのがコツです。
問題1:(x+y+1)³を展開しなさい。
問題2:(a+b−c)³を展開しなさい。
問題3:(a+b+c)³におけるabcの係数を求めなさい。
解答1:
(x+y+1)³ = x³+y³+1+3x²y+3x²+3xy²+3y²+3x+3y+6xy
定数1についても、1³、3x²・1、3y²・1、3x・1²、3y・1²、6xy・1の各項を考えます。
解答2:
(a+b−c)³ = a³+b³−c³+3a²b−3a²c+3ab²+3b²c−3ac²−3bc²−6abc
cの符号が負なので、cの指数が奇数である項の符号に注意します。cを1回含む項は負、cを2回含む項は正、cを3回含む項は負です。
解答3:
6です。3つの括弧からa、b、cを1回ずつ選ぶ並べ方は3!=6通りあります。
応用として、展開公式から次の恒等式も導けます。
(a+b+c)³−a³−b³−c³ = 3(a+b)(b+c)(c+a)
これは、三項式の三乗から純粋な三乗の項を取り除くと、残りの混合項を因数分解できることを示しています。展開だけでなく、因数分解や式の値を求める問題でも利用できます。
【(a+b+c)³】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:(a+b+c)³の展開公式は何ですか?
A1:a³+b³+c³+3a²b+3a²c+3ab²+3b²c+3ac²+3bc²+6abcです。純粋な三乗が3項、係数3の二文字の混合項が6項、係数6のabcが1項で、合計10項になります。
Q2:なぜabcの係数は6になるのですか?
A2:3つの括弧からa、b、cを1回ずつ選ぶ並べ方が3!=6通りあるためです。すべての積がabcにまとまるので、合計は6abcになります。
Q3:(a+b+c)³とa³+b³+c³は同じですか?
A3:一般には同じではありません。(a+b+c)³には、a³+b³+c³のほかに混合項と6abcが加わります。例えばa=b=c=1なら、左辺は27、右辺のa³+b³+c³は3となり、違いが明確にわかります。
まとめ:公式を暗記するだけでなく、係数の仕組みまで理解する
(a+b+c)³の展開で押さえておきたいのは、公式そのものと、混合項が生まれる仕組みの両方です。a³+b³+c³だけでは不十分であり、6種類の二文字の混合項と6abcを加える必要があります。
特に、係数3は同じ文字を選ぶ組み合わせ、係数6はa・b・cの並べ方に由来します。二項定理を段階的に適用する方法を覚えておけば、公式を忘れたときも計算を再現できます。
最後に、展開結果を確認するときは、項が10個あるか、混合項の係数が正しいか、abcの係数が6か、負の符号や指数を取り違えていないかをチェックしましょう。この確認手順を身につけることが、三乗の展開だけでなく、より複雑な多項式の計算精度を高める近道です。