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鹿の鳴き声の種類を2026年最新研究で徹底解説!ハウルとモウンの違い、届く距離と発情期

藤咲 尚 藤咲 尚 • 更新: • 公開: • 読了約 19 分
目次

秋の山や森から響く、甲高く長いシカの声。どこか悲鳴のようにも聞こえるこの音は、単なる鳴き声ではありません。ニホンジカのオスが繁殖期に発する「ハウル」や「モウン」には、縄張りの主張や繁殖集団の形成に関わる役割があり、音の特徴や発声する状況にも違いがあります。

2025年には、山形大学などの研究グループが野生のオスジカに録音機を搭載した首輪を装着し、鳴き声の発声様式を詳しく調べた研究成果を公表しました。従来は声の聞こえ方から推測していた行動の一部が、実際の発声データによって明らかになりつつあります。鹿の鳴き声の種類、ハウルとモウンの聞き分け方、声が届く距離、発情期との関係を研究成果に基づいて解説します。

【この記事の重要ポイントまとめ】
  • 要点1:ニホンジカのオスは、繁殖期に縄張りを主張する「ハウル」と、メスを囲い込む行動に関係する「モウン」を発する。
  • 要点2:2013年の研究発表では、モウンは約200m、ハウルは約1kmまで届く声として報告されている。ただし、実際の到達距離は環境によって変わる。
  • 要点3:2025年に公表された研究では、ハウルとモウンの発声頻度や場所の違いが明らかになり、音声を使ったシカの生息状況の把握にも期待が広がっている。

【鹿の鳴き声は何種類?】ニホンジカが発する声の特徴と意味

鹿の鳴き声種類

鹿の鳴き声は、発情期のオスが発する大きな声だけではありません。警戒したときの短い声、親子が互いを確認する声、個体同士の接触に関係する声など、状況に応じて複数の音声を使い分けています。

ニホンジカの鳴き声を体系的に調べた研究の一つが、南正人氏と河道拓男氏による1992年の論文「ニホンジカ(Cervus nippon)の鳴声レパートリーと分類」です。研究者らは、性別や年齢の異なるシカから620回の発声を録音・分析し、5つの音声グループと13種類の鳴き声タイプを分類しました。

この研究では、大きく明瞭な声のほか、警戒時の短い声、母子間の連絡や性的接触、攻撃、相手をなだめる行動などに関係する音声が確認されています。オスは発情期に鳴き声の種類と発声頻度を増やす傾向があり、メスでは母子間の連絡に使われる声が季節を問わず多く見られました。

代表的な鳴き声を、聞こえ方と行動の違いから整理すると次のようになります。なお、擬音語は声を理解するための目安であり、すべての個体に共通する固定的な表記ではありません。

  • ハウル(Howl):オスが縄張りを主張するときに発する、遠くまで響く大きな咆哮。
  • モウン(Moan):繁殖期のオスが頻繁に発する長めの声。メスを囲い込む行動や繁殖縄張りとの関係が深い。
  • 警戒声:驚いたときなどに発する、甲高く短い声。「ピャッ」などと表現される。
  • 母子間の連絡音:母ジカが子ジカを呼ぶときなどに使う声。短い呼び声や高めの音として聞こえることがある。
  • 威嚇・攻撃に関係する声:個体同士が緊張した場面などで発する声。発情期の咆哮とは音の出方や状況が異なる。

ここで押さえたいのは、鳴き声の種類を単純に音の高さだけで判断できないことです。同じように高い声でも、繁殖期の咆哮なのか、警戒のための声なのかによって、意味は大きく異なります。発声する個体の性別や年齢、周囲の状況を合わせて見ることが、聞き分けの基本です。

【検証資料 1】当時のメディア報道・掲載写真(出典:naradeer.com)

【ハウルとモウンの違い】声の特徴・役割・届く距離を比較

鹿の鳴き声の種類を調べる人が特に気になるのが、ハウルとモウンの違いです。どちらもニホンジカのオスが繁殖期に発する声ですが、主な機能や発声頻度、音の印象には違いがあります。

ハウルは縄張りを主張するための遠距離向けの声、モウンは繁殖縄張りの中でメスを囲い込む行動などに関係する声と理解すると、違いを整理しやすくなります。ただし、野生動物の発声には複数の機能が重なり得るため、声を聞いただけで個体の意図を完全に特定できるわけではありません。

比較項目 ハウル(Howl) モウン(Moan)
主な役割 縄張りの主張、オス同士への位置情報の伝達 繁殖縄張り内でのメスの囲い込みなどに関係
音の印象 鋭く力強い、遠くまで響く咆哮 比較的長く、うなるように響く声
発声頻度 モウンより少なく、まとまった咆哮として聞こえることが多い 比較的頻繁で、個体による違いも大きい
届く距離の目安 約1kmとする研究発表がある 約200mとする研究発表がある
聞き分けのポイント 鋭さや大きな響き、まとまりのある咆哮に注目 長めの声の繰り返しや、他個体との鳴き合いに注目
研究上の活用 繁殖集団の数を推定する手掛かり 繁殖縄張りの中心や繁殖に適した場所を推定する手掛かり

距離の目安は、南正人氏が2013年の日本霊長類学会・日本哺乳類学会合同大会で発表した研究要旨に基づいています。そこでは、モウンは約200m、ハウルは約1kmまで届く声として紹介されました。ただし、これはあらゆる環境で保証される到達距離ではありません。

実際にどこまで聞こえるかは、地形や森林の密度、風向き、雨音、周囲の生活音などによって変わります。山の斜面や開けた場所では遠方の声が聞こえることがある一方、木々が密集した場所や風雨の強い日には、同じ個体の声でも聞き取りにくくなります。

また、ハウルとモウンは、単純に「低い声と高い声」として区別できるわけでもありません。2021年に公表されたシカ科の発声に関する解剖学的・音響学的研究では、ニホンジカのモウンも比較的高い基本周波数を持つ声として整理されています。聞き分ける際は、音程だけでなく、声の長さ、鋭さ、繰り返し方、発声状況を組み合わせて判断する必要があります。

【鹿が鳴く理由】発情・縄張り・警戒を伝える音声コミュニケーション

ニホンジカにとって鳴き声は、周囲の個体に情報を伝える手段の一つです。特に繁殖期のオスは、ほかのオスとの競争や繁殖縄張りの維持に関わる場面で、声を積極的に使います。

ハウルは、オス同士が互いの位置を把握したり、縄張りを主張したりする働きがあると考えられています。姿が見えにくい森林でも声なら広い範囲に届くため、相手に自分の存在を知らせるうえで有効です。声の特徴には個体差があり、鳴き声が発声個体を識別する手掛かりになっている可能性も研究されています。

一方、モウンは繁殖縄張りの中での行動と密接に関係します。山形大学などの研究グループが2025年に公表した成果では、モウンはメスを囲い込む際に発せられ、繁殖縄張りの中心で発声頻度が高まりやすいことが示されました。

繁殖期の鳴き声には、オスの存在や行動範囲を周囲に知らせる意味もあります。2013年の研究発表では、モウンはほかのオスやメスに向けて発せられたり、別の個体のモウンやハウルに反応して発せられたりすることが報告されています。複数の個体が互いに鳴き合う場合もあり、声のやり取りが繁殖期の社会関係を映し出していると考えられます。

ただし、鳴き声を人間の言葉のように解釈することはできません。「相手を威嚇している」「メスを呼んでいる」といった説明は、観察された行動や研究結果に基づく機能の推定です。一つの声が複数の役割を持つ可能性もあり、音だけから心理状態まで断定するのは適切ではありません。

繁殖以外の場面では、警戒声や母子間の連絡音が重要です。警戒声は周囲の個体に危険の存在を知らせる役割を持つと考えられ、母子間の声は互いの位置を確認する助けになります。鹿の鳴き声を理解するには、発情期の大きな咆哮だけでなく、こうした日常的な音声コミュニケーションにも目を向ける必要があります。

【鹿の発情期はいつ?】鳴き声が増える季節と時間帯の変化

ニホンジカのオスの発情声が目立つのは、一般に秋の繁殖期です。ただし、発情声が聞こえる時期やピークには地域差があり、全国どこでも同じ月に集中するわけではありません。

南正人氏が2021年に「動物の行動と管理学会誌」で発表した調査では、奈良公園と宮城県の金華山で、オスのハウルの発声頻度と時間帯が比較されました。

  • 奈良公園:年間調査では9月から翌年3月までハウルが記録され、11月に最も多くなった。11月は日の出頃と日没頃にピークが見られ、夜間にも小さなピークがあった。
  • 金華山:8月下旬から11月上旬の調査では、10月上旬から中旬にハウルが有意に多く、日没頃にピークが見られた。

この結果からも、発情声のピークは地域や個体群によって異なることがわかります。一般的な目安として秋の9~11月は注目すべき時期ですが、鳴き声が聞こえる期間はそれより長くなる場合があります。

時間帯についても、「鹿は朝夕にしか鳴かない」と考えるのは正確ではありません。山形大学などの研究グループが2025年に公表した音響バイオロギング研究では、ハウルとモウンは一日を通じて発声されることが多いと報告されました。

朝夕に声が目立つという従来の観察結果と、一日を通じて発声されるという研究結果は、必ずしも矛盾しません。調査地、個体群、観察方法、天候などが違えば、聞き取りやすい時間帯や記録される頻度も変わります。特定の時間だけに絞って鳴き声を探すと、実際の発声活動を見落とす可能性があります。

加えて、2025年の研究では、風雨などによる環境雑音が大きい条件では、ハウルとモウンの発声頻度が大幅に低下することも報告されました。鳴き声は体力を消耗するため、ほかの個体との音声コミュニケーションが難しい状況では、発声を控える可能性があります。

【鹿の鳴き声の聞き分け方】音の長さ・鋭さ・周囲の状況に注目

野外で鹿の声を聞いたとき、最初からハウルやモウンと断定する必要はありません。音の特徴と周囲の状況を順番に確認すると、発声の種類を推測しやすくなります。

1.短く鋭い声か、長く響く声か

「ピャッ」といった短く高い声なら、警戒声の可能性があります。一方、長く響く声が繰り返される場合は、繁殖期の発情声も候補になります。ただし、録音環境や距離によって音の長さや聞こえ方は変化します。

2.声が一度だけか、何度も繰り返されるか

遠くから大きな咆哮が時折聞こえる場合と、長めの声が繰り返され、別の方向からも応答のような声が聞こえる場合では、考えられる状況が異なります。ハウルは比較的まれな長距離向けの声として、モウンはより頻繁な発声として報告されています。ただし、発声頻度だけで確実に判別できるわけではありません。

3.季節と場所を確認する

秋の繁殖期に森林や草地から大きな咆哮が聞こえたなら、オスの発情声を考える根拠になります。反対に、子ジカを伴う群れの近くで短い呼び声が聞こえる場合は、母子間の連絡音なども考えられます。声だけでなく、季節や個体の行動を組み合わせることが大切です。

4.録音では波形やスペクトログラムも手掛かりになる

音響研究では、音の波形やスペクトログラムを用い、声の長さ、基本周波数、強さ、フォルマントなどを分析します。耳で聞くと似た声でも、音響的な特徴を数値化すると違いが見つかる場合があります。

2025年に「日本暖地畜産学会報」で公表されたニホンジカの警戒声に関する研究では、成獣7頭(去勢オス3頭、メス4頭)の録音を分析し、発声の長さ、基本周波数、強さ、フォルマントなどに基づいて音声の違いを調べました。警戒声にも音響的な多様性があることが示されています。

つまり、鳴き声の聞き分けは、単なる擬音語の暗記ではありません。音の長さや高さ、強さを観察し、発声した状況と照らし合わせることで、少しずつ理解が深まります。

なお、野生のシカに近づいて声を確かめることは避けてください。発情期のオスは繁殖縄張りを守る行動を示すことがあり、接近すると危険です。観察は十分な距離を保ち、録音や撮影を目的に追い回さないようにしましょう。

【2025年の研究で何がわかった?】鳴き声から繁殖集団を把握する新技術

鹿の鳴き声の研究は、発声の意味を理解する段階から、生息状況の把握や野生動物管理に活用する段階へと広がっています。その動きを示すのが、山形大学などの研究グループが2025年10月に国際学術誌「Mammalian Biology」で公表した、ニホンジカの音響バイオロギングに関する研究です。同大学は同年11月6日、研究成果をプレスリリースで紹介しました。

研究グループは、音響レコーダーやGPS、活動量計などを組み合わせた首輪を設計し、福島県南会津町に生息するオスジカを対象に、2020~2022年の秋季に装着試験を実施しました。麻酔銃で捕獲した10頭のうち、7頭からデータを回収することに成功しています。

回収された音響データは計1,109時間に及び、そこから6,846回の鳴き声が抽出されました。内訳はハウル362回、モウン6,484回です。実際に個体が行動している間の発声を記録したことで、鳴き声がどのような条件や場所で発せられるのかを詳しく分析できるようになりました。

研究で明らかになった主な要点は次の3つです。

  • ハウルの発声頻度は個体差が比較的小さい:発声頻度を繁殖集団の数を把握するための指標として利用できる可能性がある。
  • モウンは繁殖縄張りの中心で増えやすい:発声場所の情報から、繁殖に適した場所を推定できる可能性がある。
  • 風雨による雑音が大きい条件では発声頻度が低下する:音声の記録数を解釈する際には、周囲の環境条件も考慮する必要がある。

研究グループが開発を進めてきた「ボイストラップ法」は、秋にオスが発する咆哮を録音して検知し、シカの侵入や定着を把握する方法です。2019年に開発されたこの手法は、目視で個体を確認しにくい低密度の生息地でも、シカの存在を検知するために活用されてきました。

2025年の研究は、鳴き声の検知を単なる生息確認にとどめず、繁殖集団の数や繁殖適地の把握へと広げられる可能性を示しました。シカが姿を見せなくても、その発声記録から繁殖期の行動や生息状況を推定できるためです。

もっとも、今回のデータは福島県南会津町の成獣オスを中心に、秋季に収集されたものです。地域や個体群が異なる場合にも同じ傾向が当てはまるかどうかは、追加の検証が必要です。今後、複数の地域や環境で調査を重ねることで、音声によるモニタリングの精度がさらに高まると期待されます。

【鹿の鳴き声種類】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:鹿の鳴き声には何種類ありますか?

A1:ニホンジカの鳴き声には、発情声、警戒声、母子間の連絡音、攻撃や接触に関係する声などがあります。1992年の音声研究では、620回の発声を分析し、5つの音声グループと13種類の鳴き声タイプが分類されました。ただし、分類方法や対象となる性別・年齢によって整理の仕方は異なります。

Q2:ハウルとモウンは、どちらが遠くまで届きますか?

A2:2013年の研究発表では、ハウルは約1km、モウンは約200mまで届く声として報告されています。ただし、地形や植生、風、周囲の騒音によって到達距離は変わります。数値は固定的な保証値ではなく、研究で示された目安として理解してください。

Q3:鹿の発情期はいつで、何時頃に鳴きますか?

A3:ニホンジカの発情声は秋に目立ちますが、ピークは地域によって異なります。2021年の調査では、奈良公園で11月、金華山で10月上旬から中旬にハウルが多く確認されました。朝夕にピークが見られる地域もありますが、2025年の音響バイオロギング研究では一日を通じて発声されることも多いと報告されています。

Q4:鹿が鳴いているのは、必ず発情しているからですか?

A4:いいえ。警戒声や母子間の連絡音など、繁殖以外の目的で発する声もあります。秋に聞こえる大きな咆哮は発情声の可能性がありますが、音の特徴だけでなく、季節や周囲の状況を合わせて判断することが大切です。

Q5:鹿の鳴き声が聞こえない場所には、鹿がいないのでしょうか?

A5:鳴き声が聞こえないからといって、鹿がいないとは限りません。発声頻度は個体や環境によって異なり、風雨などの雑音が大きい条件では発声頻度が低下することも報告されています。鳴き声だけで生息の有無を判断するのではなく、足跡や食痕など、ほかの痕跡も合わせて確認する必要があります。

まとめ:鹿の鳴き声を正しく聞き分けるための判断基準

鹿の鳴き声には、縄張りの主張や繁殖行動に関わるハウルとモウンをはじめ、警戒声や母子間の連絡音など、さまざまな種類があります。発声の目的は一つではなく、性別や年齢、季節、周囲の個体との関係によって、聞こえる声や発声頻度が変わります。

ハウルは比較的遠くまで響く縄張り主張の声、モウンは繁殖縄張り内での行動に関係する声として整理できます。研究発表では、それぞれ約1km、約200mという到達距離の目安も示されていますが、実際の聞こえ方は環境に左右されます。

そして、2025年の音響バイオロギング研究によって、鳴き声の記録から繁殖集団の数や繁殖適地を把握できる可能性が明らかになりました。鹿の声は、単に秋の森を彩る音ではなく、野生動物の行動や生息環境を知るための重要な手掛かりでもあります。

鹿の鳴き声を聞き分ける際は、音の高さだけで決めつけず、長さや鋭さ、繰り返し方、季節、周囲の状況を総合的に確認することが大切です。こうした視点を持てば、森から聞こえる一声の背後にある、ニホンジカの繁殖行動や音声コミュニケーションへの理解が深まります。

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藤咲 尚

旅行・住まい・暮らしの話題を担当。自治体の公式観光情報、施設の公開資料、不動産の公的統計を参照し、料金や所在地は発表時点の情報として明記します。

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