「ガソリンの暫定税率が廃止されたのに、なぜ安くならないのか」という疑問も、2026年のガソリン価格を考えるうえで重要です。
実は、ガソリン税の暫定税率はすでに廃止されています。
ガソリン税の25.1円/Lは2025年12月31日に廃止
ガソリンには、揮発油税と地方揮発油税が課されています。
この税金には、1974年に道路整備の財源として導入された1L当たり25.1円の上乗せ分がありました。一般に「暫定税率」と呼ばれていたものです。
しかし、2025年12月31日にガソリンの暫定税率は廃止されました。
軽油についても、2026年4月1日に1L当たり17.1円の暫定税率が廃止されています。これは国会でも政府参考人が正式に説明している事実です。
現在のガソリン税の本則税率は、国税と地方税を合わせて28.7円/Lです。
なぜ廃止日に25.1円も安くならなかったのか?
ここには補助金による段階的な価格調整が関係しています。
資源エネルギー庁は、税率変更によって価格が急激に変動することを避けるため、2025年11月から補助金を段階的に増額しました。
| 時期 | ガソリン補助金 | 制度上の意味 |
|---|---|---|
| 2025年11月12日まで | 10円/L | 従来の支援 |
| 11月13日 | 15円/L | 5円増額 |
| 11月27日 | 20円/L | さらに5円増額 |
| 12月11日 | 25.1円/L | 暫定税率の上乗せ分と同水準 |
| 12月31日 | 暫定税率廃止 | 税率そのものを変更 |
この仕組みにより、暫定税率の廃止前から、補助金による25.1円相当の価格引き下げ効果が順次導入されていました。
したがって、12月31日にさらに25.1円が一気に値下がりするという仕組みではありません。
暫定税率の廃止と原油高は別問題
ここが最も誤解されやすい部分です。
税金が25.1円減っても、原油の輸入価格がそれ以上に上昇すれば、店頭価格は高くなります。
例えば、税金の引き下げによって価格が25.1円下がる条件が整っていても、原油や為替の影響で仕入れコストが30円上がれば、単純計算では差し引き4.9円の上昇圧力が残ります。
実際には、精製費や流通費、補助金なども加わるため、これほど単純な計算だけで実売価格は決まりません。
また、ガソリン税とは別に石油石炭税や消費税もあります。
消費税はガソリン税などを含む販売価格を課税標準として計算されるため、いわゆる「税金に税金がかかる」という議論もあります。
ただし、こうした税制上の問題と、毎週のガソリン価格の変動は分けて考える必要があります。
暫定税率の廃止は確かに負担軽減につながりましたが、国際原油価格や円相場の変動まで打ち消すものではありません。
【ガソリンスタンドの価格差】全国平均170.1円でも地域によって違う理由

全国平均が170.1円/Lだからといって、すべてのガソリンスタンドで170円前後になるわけではありません。
2026年10月26日の都道府県別データを見ると、地域によってかなりの差が存在します。
2026年10月26日・都道府県別の価格比較
最安値
宮城県
全国平均
全国
最高値
長崎県
都道府県間の価格差
50L給油する場合、この15.4円の差は770円になります。
毎月100L給油する人なら、年間では約18,480円もの差になる計算です。
地域差を生む3つの要因
1. 輸送コスト
製油所や油槽所からガソリンスタンドまでの距離、タンクローリーによる配送費用などが影響します。
資源エネルギー庁の補助制度に関する説明でも、輸送コストなどによって地域ごとに価格差が生じることが示されています。
2. ガソリンスタンド同士の競争
近隣に複数のガソリンスタンドがある地域では、顧客を獲得するために価格を抑える動きが生まれます。
反対に、競争相手が少ない地域では、価格を下げる圧力が弱くなる場合があります。
3. 仕入れ条件と販売方法
同じブランドのガソリンスタンドでも、仕入れ条件や運営会社は異なります。
現金価格、クレジットカード価格、会員価格、アプリクーポン適用後の価格なども違うため、看板価格だけでは正確な比較ができません。
価格を決める関係者と制度の相関関係
ガソリン価格は、ひとつの会社や政府機関だけで決まるものではありません。
それぞれの主体が異なる役割を持ち、その結果が最終的な店頭価格に反映されます。
全国平均価格の調査方法にも注目
資源エネルギー庁の石油製品価格調査は、毎週月曜日を基本に実施され、水曜日に結果が公表されます。
石油情報センターの説明によると、全国約2,000か所のサービスステーションを対象に、電話やFAX、パソコンなどで店頭の現金価格を調査しています。
都道府県別では最低30店舗が対象です。
そのため、全国平均は実際の市場価格を把握するための有用な指標ですが、すべての店舗の価格を示すものではありません。
自分の住む地域の価格が全国平均より高くても、それだけで不当な値上げが行われているとは判断できないのです。
【2026年10月最新の今後の見通し】ガソリン価格は12月から上がる?
2026年10月30日時点で、ガソリン価格を考えるうえで見逃せないニュースがあります。
それが、10月29日に高市早苗首相が発表したガソリン補助金の段階的な見直しです。
12月から基準価格を毎月5円ずつ引き上げる方針
高市首相は10月29日の会見で、現在のガソリン価格支援について、12月以降、原油価格の動向を注視しながら春先に向けて基準価格を毎月5円ずつ引き上げる方針を示しました。
政府が説明した基本方針は次のとおりです。
「春先に向けて基準価格を毎月5円ずつ引き上げていくことを基本に対応してまいります」
これは首相官邸の2026年10月29日付の会見記録に掲載された発言です。
現在の基準価格は170円程度です。
これを引き上げるということは、従来より高い価格まで補助金を減らしながら支える仕組みに移行することを意味します。
原油価格などの条件が同じであれば、補助金の縮小分だけ店頭価格に上昇圧力がかかります。
170円から195円になる可能性はある?
野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏は、10月30日の分析で、仮に2026年12月から2027年4月まで毎月5円ずつ基準価格が引き上げられた場合、基準価格は170円から195円になると試算しています。
ただし、これは一定の条件を置いたシミュレーションです。
政府が195円への引き上げや補助金の完全終了時期を正式決定したわけではありません。高市首相も、引き上げ期間や補助金終了のタイミングについては明言していません。
今後の価格を左右する3つのシナリオ
| シナリオ | 原油・為替の動き | ガソリン価格への影響 |
|---|---|---|
| 原油価格が下落 | 中東情勢が改善し円高も進む | 補助縮小分を相殺する可能性 |
| 原油価格が高止まり | 円安と高い原油価格が続く | 補助縮小に伴い上昇しやすい |
| 原油価格が再び急騰 | 中東情勢が悪化し供給不安が拡大 | 補助縮小と原油高が重なるリスク |
最も警戒したいのは、原油高と補助金縮小が同時に進むケースです。
一方、国際原油価格が落ち着き、円高が進めば、補助金の縮小による価格上昇圧力を和らげることも考えられます。
補助金の財政負担も見直しの背景に
今回の政策変更には、財政面の問題もあります。
10月29日の首相会見では、2022年1月に燃料油価格の激変緩和措置が始まって以降、燃料油支援の基金への支出額が累計約9.6兆円に達したことが説明されました。
また、2026年10月末のガソリン補助金は1L当たり52.4円となり、1日当たり100億円を超える国費を投入して価格を抑制している状況です。
補助金は消費者にとって負担軽減につながりますが、長期化すれば国の財政負担も増えます。
そのため、政府は価格抑制と財政の持続可能性を両立させる方向へ政策を転換しようとしています。
【プロの結論】ガソリン価格は3つの数字を見れば判断できる
ガソリン価格のニュースを正しく理解するには、店頭価格だけを見るのでは不十分です。
次の3つをセットで確認が必要です。
1. 資源エネルギー庁の全国平均価格: 実際に消費者が支払っている価格の推移を確認する。
2. 補助金の支給単価と基準価格: 政府がどれだけ価格を抑えているのか、今後どの程度縮小するのかを把握する。
3. 原油価格とドル円相場: 今後の仕入れコストが上昇するのか、下落するのかを判断する。
特に、補助金の支給単価だけを見て「ガソリンが52.4円値下がりする」と考えるのは誤りです。
また、全国平均が下がったからといって、自分の近所の店舗も同じ金額だけ安くなるとは限りません。
給油する際は、同じ油種・同じ支払い条件で複数店舗を比較し、会員割引やクーポン適用後の実質価格を見ることが現実的です。
【ガソリン値上げがおかしいに関するよくある質問(FAQ)】
Q1:2026年10月現在、レギュラーガソリンの全国平均はいくらですか?
A1:2026年10月26日調査の全国平均は170.1円/Lです。前週の170.2円/Lから0.1円下がりました。3月16日の最高値190.8円/Lと比較すると20.7円安くなっています。
Q2:ガソリン補助金52.4円/Lは消費者に直接還元されますか?
A2:直接還元される制度ではありません。政府が石油元売りや輸入事業者に補助金を支給し、卸売価格を抑えることで、ガソリンスタンドの店頭価格を抑制する仕組みです。2026年10月29日からの支給単価が52.4円/Lです。
Q3:ガソリン税の暫定税率が廃止されたのに、なぜ高いのですか?
A3:暫定税率の25.1円/Lは2025年12月31日に廃止されています。しかし、その後の中東情勢悪化による原油価格の上昇や円安、調達費用などが価格を押し上げています。税金の引き下げだけでは、国際的な原油高を完全には相殺できません。
Q4:原油価格が下がればガソリン価格もすぐ下がりますか?
A4:すぐには下がらない場合があります。卸売価格は週単位で変動しますが、ガソリンスタンドには仕入れ済みの在庫があります。国会答弁では、一般的な在庫の入れ替わりに1~2週間程度かかると説明されています。
Q5:2026年12月以降、ガソリン価格は必ず5円ずつ上がりますか?
A5:必ず5円ずつ店頭価格が上がるという意味ではありません。政府は補助金の基準価格を毎月5円ずつ引き上げる方針を示していますが、原油価格や為替の変動によって実際の店頭価格は変わります。
まとめ:ガソリン値上げがおかしいと感じる理由と今後の判断基準
2026年10月26日のレギュラーガソリン全国平均は170.1円/L。3月16日に記録した190.8円/Lからは下がりましたが、年初の154.7円/Lと比較すれば、依然として高い水準にあります。
今回の価格変動を整理すると、要点は次のとおりです。
- 3月の急騰は中東情勢の悪化と原油供給不安が大きな要因だった。
- 円安が続くと、海外原油価格が下がっても輸入コストが下がりにくい。
- ガソリン税の暫定税率25.1円/Lはすでに廃止されている。
- 10月29日からの補助金は52.4円/Lだが、消費者への直接給付ではない。
- 店頭価格への反映には在庫の入れ替えなどによる時間差がある。
- 12月以降は補助金の基準価格を毎月5円ずつ引き上げる方針が示されている。
「ガソリン値上げはおかしい」という疑問には、理解できる部分があります。税金が廃止されても価格が高く、補助金が増えても店頭価格が大幅に安くならない状況は、消費者にとって分かりにくいものです。
ただし、価格の高止まりをすべてガソリンスタンドや石油元売り会社の問題に帰することもできません。原油の国際相場、円相場、調達コスト、税制、補助金、流通在庫が複雑に関係しているためです。
今後は、特に2026年12月から始まる補助金の段階的な見直しが焦点になります。
本当に確認すべきなのは、ガソリン価格そのものだけではなく、補助金を差し引く前のコストと、政府がどこまで価格を支えるのかという政策の両方です。
全国平均だけで判断せず、原油価格・為替・補助金・地域別価格を組み合わせて見ることが、これからのガソリン代を正しく理解するためのポイントです。