日本の活断層はどこに分布し、今後30年以内に大地震が発生する可能性はどの程度あるのでしょうか。住宅の購入や引っ越し、通勤・通学先の防災対策を考えるうえで、活断層の位置と地震リスクを正しく理解しておくことは欠かせません。
2026年10月現在、地震調査研究推進本部は、2026年1月1日を算定基準日とする主要活断層帯の長期評価を公表しています。加えて、同年8月28日には複数の活断層帯について評価の一部改訂が発表されました。この記事では、最新の公的評価を踏まえ、日本の活断層の分布、主要断層帯の地震発生確率、S・A・Z・Xランクの意味、活断層マップの活用方法、日頃の備えまで整理します。
【この記事の重要ポイントまとめ】
- 分布:日本の活断層は北海道から九州まで広く分布し、内陸の盆地周辺や山地の縁、平野の地下などにも存在する。
- 発生確率:地震調査研究推進本部の長期評価では、主要活断層帯の地震発生確率を今後30年以内という共通の期間で評価している。
- ランクの意味:Sは3%以上、Aは0.1%以上3%未満、Zは0.1%未満、Xは確率を評価できない場合を示す。Zランクでも地震が起きないわけではない。
- 地図の活用:J-SHIS、国土地理院の活断層図、産業技術総合研究所の活断層データベースを使い分けると、断層の位置と地域の揺れやすさを確認できる。
- 防災の基本:活断層の近さだけで判断せず、地盤、建物の耐震性、液状化、土砂災害、避難経路まで確認する。
【基礎知識】活断層とは?地震が発生する仕組みと特徴
活断層とは、過去に繰り返し活動し、将来も活動して地震を発生させる可能性がある断層のことです。気象庁の解説では、活断層を考える際の地質年代として、おおむね約170万〜200万年前から現在までの第四紀が目安として扱われています。
断層とは、地下の岩盤が周囲から押されたり、引っ張られたりすることで、ある面を境にずれた構造を指します。地球内部のプレート運動によって地殻にひずみが蓄積すると、岩盤がそのひずみに耐えられなくなり、断層面に沿って急激にずれることがあります。このとき放出されたエネルギーが地震波となり、地表に強い揺れをもたらします。
活断層型地震の特徴は、震源が比較的浅い地殻内にあることです。地震の規模が同じでも、震源と都市の位置関係や地盤条件によっては、局地的に非常に強い揺れが生じます。断層が地表まで達すれば、地面そのものに段差や横ずれが発生し、道路、鉄道、上下水道などの施設に直接的な被害を与える可能性もあります。
ただし、地表に断層が見えない場所でも地震は発生します。地下に断層が隠れていたり、地形や地質の条件から断層の位置を特定できていなかったりするためです。活断層が地図に記載されていないことと、その地域で大きな地震が発生しないことは同じではありません。
また、活断層の存在は、地震が直ちに発生するという意味でもありません。過去の活動履歴、平均活動間隔、最新活動時期などを調べ、将来の活動可能性を評価が必要です。
【全国分布】日本の活断層はどこにある?2026年の最新動向
日本の活断層は、北海道から東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州まで広範囲に分布しています。山地と平野の境界、盆地の縁、長い谷に沿った地域などで確認されることが多い一方、平野の地下や沿岸域にも存在します。
分布を理解する際は、断層線の数だけを見るのではなく、どのような地殻変動が起きている地域なのか、周辺に人口や重要インフラが集中しているか、地盤が揺れを増幅しやすいかを合わせて考える必要があります。
北海道・東北地方では、サロベツ断層帯、十勝平野断層帯、富良野断層帯、山形盆地断層帯などが代表例です。内陸部の盆地や山地周辺には、地殻変動の履歴を残す断層帯が分布しています。
関東地方では、深谷断層帯、綾瀬川断層、関東平野北西縁断層帯に関連する断層群などが調査・評価の対象となっています。人口や建物が集中する平野部では、断層の位置だけでなく、軟弱地盤や液状化の可能性にも注意が必要です。
中部地方では、糸魚川-静岡構造線断層帯、濃尾断層帯、阿寺断層帯などが知られています。特に糸魚川-静岡構造線断層帯は、長野県を中心とする広域の地震リスクを考えるうえで重要な断層帯です。
近畿地方には、琵琶湖西岸断層帯、上町断層帯、生駒断層帯、六甲・淡路島断層帯、有馬-高槻断層帯などがあります。都市部に近い断層帯では、地震による建物被害に加え、交通網やライフラインの機能停止も想定する必要があります。
中国・四国地方では、山崎断層帯や中央構造線断層帯などが重要です。中央構造線断層帯は四国を横断し、紀伊半島側から九州側へと延びる大規模な断層帯として評価されています。
九州地方では、布田川断層帯、日奈久断層帯、警固断層帯などが代表例です。2026年7月28日には熊本県熊本地方でマグニチュード7.1、最大震度7を観測する「令和8年熊本地震」が発生しました。地震調査研究推進本部が公表する地域の地震情報でも、活動域の付近に布田川断層帯と日奈久断層帯が存在することが示されています。特定の断層との関係は個別の地震解析によって判断する必要がありますが、内陸の地震リスクを日常的に確認しておく必要性を示す事例です。
2026年の重要な動きとして、地震調査研究推進本部は同年1月14日に、2026年1月1日を算定基準日とする主要活断層帯の長期評価結果一覧を公表しました。さらに8月28日には、柳ヶ瀬-関ヶ原断層帯・浦底-柳ヶ瀬山断層帯、野坂断層帯、養老-桑名-四日市断層帯、琵琶湖西岸断層帯、上町断層帯など、複数の断層帯について評価の一部改訂が発表されています。
この改訂は、地震の発生が一斉に迫っているという意味ではありません。地質調査や過去の地震活動に関する知見を踏まえ、断層の区分や活動履歴、地震発生可能性の評価を更新するものです。2026年のリスクを調べる場合は、古い地図や過去の評価記事だけで判断せず、最新の公表資料を参照することが大切です。
【主要活断層帯一覧】発生確率と地震リスクをどう比較する?
日本の主要活断層帯は、地震調査研究推進本部の長期評価によって、想定される地震規模や今後一定期間内に地震が発生する確率などが整理されています。全国の評価結果は都道府県別にも公表されているため、自宅や勤務先のある地域を起点に調べると、必要な情報を見つけやすくなります。
ただし、同じ断層帯でも複数の活動区間に分かれている場合があり、区間によって地震発生確率が異なります。断層帯全体の名前だけを見て、一つの確率が全域に当てはまると考えるのは適切ではありません。
以下は、地震調査研究推進本部の長期評価に基づく代表例です。確率は評価対象となる区間や評価条件に依存するため、住宅の安全性や自治体の防災計画を検討する際には、対象地点に対応する最新資料を確認してください。
| 断層帯・地域 | 位置・特徴 | 長期評価で示された地震発生確率など | 確認時のポイント |
|---|---|---|---|
| 糸魚川-静岡構造線断層帯 | 新潟県・長野県・山梨県周辺 | 北部区間は0.01~16%、中北部区間は14~30%、中南部区間は0.9~8%、南部区間はほぼ0~0.1%(いずれも30年以内) | 区間ごとの確率幅が大きく、断層帯全体を一つの数値で判断できない。 |
| 中央構造線断層帯 | 紀伊半島から四国を経て九州側へ延びる | 10の活動区間に分けて評価。区間によって確率は異なり、複数区間が同時に活動する場合はM8.0程度またはそれ以上の地震の可能性がある。 | どの区間を対象にしているか、想定規模と確率の両方を確認する。 |
| 上町断層帯 | 大阪平野周辺 | 30年以内の地震発生確率は2~3% | 都市部では強い揺れによる建物被害やライフライン停止も考慮する。 |
| 布田川断層帯・日奈久断層帯 | 熊本県周辺 | それぞれの断層帯・区間について、地震調査研究推進本部の個別評価で確認する。 | 2026年熊本地震の活動域との位置関係を確認し、地震活動の最新情報も参照する。 |
| 琵琶湖西岸断層帯 | 滋賀県の琵琶湖西岸周辺 | 北部・南部などの区分や評価条件によって、発生確率が異なる。 | 2026年8月の一部改訂を踏まえ、旧評価と最新評価を混同しない。 |
出典は、地震調査研究推進本部の「主要活断層帯の長期評価結果一覧(2026年1月1日算定)」および各断層帯の個別評価です。糸魚川-静岡構造線断層帯の確率は区間別の公表値を示しています。中央構造線断層帯など、2026年8月に一部改訂された断層帯については、最新の個別評価を優先して参照してください。
この比較から読み取れるのは、単純に「有名な断層帯ほど危険」というわけではないことです。確率の高い区間があっても、想定震源の位置や地震の規模、地盤条件、建物の耐震性によって、実際の被害は異なります。反対に、確率が低いと評価されている区間でも、大きな地震が起きる可能性をゼロにはできません。
【S・A・Z・Xランク】活断層の30年以内の発生確率を正しく読む
活断層のリスクを調べる際によく登場するのが、Sランク、Aランク、Zランク、Xランクという分類です。地震調査研究推進本部では、活断層で今後30年以内に地震が発生する確率などを基に、相対的な評価を示しています。
2026年の公表資料で使用されている区分は、次のとおりです。
- Sランク:今後30年以内の地震発生確率が3%以上。「高い」グループに分類される。
- Aランク:今後30年以内の地震発生確率が0.1%以上、3%未満。「やや高い」グループに分類される。
- Zランク:今後30年以内の地震発生確率が0.1%未満。
- Xランク:過去の地震データが少ないなどの理由から、地震発生確率を評価できない。
なお、地震後経過率が0.7以上となる断層には、ランクに「*」が付記される場合があります。地震後経過率とは、最新の地震から経過した時間を平均活動間隔で割った値です。例えば、地震後経過率が1.0なら、最新活動からの経過時間が平均活動間隔に達したことを意味します。ただし、1.0になった瞬間に地震が起きるという意味ではありません。
最も注意したいのは、Zランクを「安全」と読み替えないことです。確率が低く評価されている理由には、最新活動時期や活動間隔などの研究結果が反映されていますが、将来の地震を完全に否定するものではありません。Xランクも、リスクが存在しないという意味ではなく、確率を数値で評価するための情報が十分でないことを示します。
加えて、30年以内の発生確率は、天気予報のように特定の日付や月を予測する数字ではありません。一定の評価モデルと過去の地震履歴を用いて、長期的な発生可能性を見積もったものです。確率が数%だからといって「30年間は安心」とは言えず、逆に確率が高くても、明日地震が発生すると断定することはできません。
住宅の購入や防災対策でランクを活用するなら、確率だけで判断せず、想定マグニチュード、震源断層の位置、予測される揺れ、地盤の特徴を併せて確認するのが合理的です。
【活断層マップ・地図】J-SHIS・国土地理院・産総研の使い分け
日本の活断層の位置を調べるには、国や研究機関が公開する地図・データベースを使うのが基本です。目的に応じて資料を使い分ければ、断層の位置だけでなく、地震が起きた際に自宅周辺がどの程度揺れやすいかも調べられます。
1.J-SHIS(地震ハザードステーション)
防災科学技術研究所が運用するJ-SHISは、全国地震動予測地図や地盤情報などを地図上で確認できるシステムです。主要活断層帯や海溝型地震の震源断層の位置を表示できるほか、地点を指定して、今後30年間に震度6弱以上などの揺れに見舞われる確率や表層地盤の増幅率を調べられます。
住宅の購入候補地を比較したい人や、現在の住まいの地震ハザードを総合的に確認したい人に向いています。ただし、地点の揺れの確率は特定の活断層だけを対象にしたものではなく、複数の地震源や地盤条件を考慮した評価です。活断層の発生確率と混同しないようにしましょう。
2.国土地理院の活断層図(都市圏活断層図)
国土地理院の活断層図は、航空写真や詳細な標高データなどを使って、過去の断層運動によって形成された地形を判読し、地図に表示したものです。活断層だけでなく、関連する段丘、沖積低地、地すべりなどの地形も確認できます。
国土地理院によると、公開済みの活断層図は2025年12月23日時点で249面です。住宅地の周辺に断層の痕跡があるか、平野や谷がどのような地形条件にあるかを調べる際に役立ちます。ただし、地図に断層線がないことが、その場所に断層が存在しないという証明になるわけではありません。
3.産業技術総合研究所の活断層データベース
産業技術総合研究所(産総研)の活断層データベースは、活断層に関する調査・研究成果を詳しく確認したい場合に役立つ専門的な資料です。断層の位置や活動履歴などを調べる際は、地震調査研究推進本部の長期評価と併用し、データの対象範囲や更新状況を確認してください。
地図を使うときは、次の順番で確認すると実用的です。
- 自宅、勤務先、学校、購入候補地の位置を地図上で特定する。
- 周辺に主要活断層帯や公表済みの活断層図があるかを調べる。
- J-SHISで地震動の確率や表層地盤の増幅率を確認する。
- 自治体のハザードマップで、液状化、土砂災害、津波、避難場所などを確認する。
- 気になる断層帯があれば、地震調査研究推進本部の最新の長期評価で地震規模と発生確率を確認する。
この手順の要点は、断層の位置と、実際に暮らす場所の被害リスクを分けて考えることです。断層線からの距離だけでは、地震時の揺れや建物被害の程度を判断できません。
【地形の見分け方】活断層と海溝型地震の違い・日頃の備え
活断層を地形から見分ける手掛かりとして、直線状に続く谷、尾根や河川の横ずれ、周囲と高さが異なる段丘、山地と平野の境界に沿う崖などがあります。こうした地形は、断層運動によって形成された可能性があります。
ただし、似た地形は河川の侵食や堆積、地すべりなどでも形成されます。一般の人が見た目だけで活断層の存在や正確な位置を断定することはできません。地形の特徴はあくまで調査の手掛かりと考え、国土地理院の活断層図や専門機関の調査結果を確認してください。
地震リスクを考えるうえでは、活断層型地震と海溝型地震の違いも押さえておく必要があります。
活断層型地震は、主に陸側のプレート内部にある地殻内の断層運動によって発生します。震源が比較的浅いため、震源の近くで強い揺れが生じることがあり、地表に断層が現れれば地面そのものがずれる場合もあります。
海溝型地震は、海側のプレートが陸側のプレートの下に沈み込む場所などで発生します。プレート境界の広い範囲が動くと、非常に規模の大きな地震や津波につながることがあります。南海トラフ沿いの巨大地震は、代表的な海溝型地震の一つです。
両者の違いを理解しても、どちらか一方だけに備えればよいわけではありません。活断層型地震は内陸の局地的な強震動、海溝型地震は広域の揺れや津波など、それぞれ異なる被害を想定した備えが必要です。
日頃の対策では、まず家具の転倒防止、寝室や出入口周辺の安全確保、飲料水や食料、携帯トイレ、常備薬などの備蓄を進めましょう。建物については耐震性を確認し、古い住宅では耐震診断や必要な改修を検討することが大切です。
加えて、家族の集合場所、連絡方法、停電時の情報収集手段、徒歩での避難経路を事前に決めておくと、発災直後に行動しやすくなります。自治体のハザードマップで自宅周辺の危険箇所を確認し、複数の避難ルートを想定しておくことも有効です。
【日本の活断層】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:日本で活断層が多い地域はどこですか?
A1:活断層は北海道から九州まで広く分布しています。糸魚川-静岡構造線断層帯、中央構造線断層帯、琵琶湖西岸断層帯、上町断層帯、布田川断層帯などが代表例です。ただし、特定の地域だけが危険というわけではなく、断層の位置や地盤、建物の耐震性などを総合的に確認する必要があります。
Q2:活断層のSランクとAランクは何が違いますか?
A2:今後30年以内の地震発生確率が3%以上ならSランク、0.1%以上3%未満ならAランクです。Zランクは0.1%未満、Xランクは確率を評価できない場合を示します。いずれのランクでも地震が直ちに発生するかどうかは断定できず、Zランクでも地震の可能性は否定されません。
Q3:自宅の近くに活断層があるか、無料で調べられますか?
A3:J-SHIS、国土地理院の活断層図、産業技術総合研究所の活断層データベースなどで確認できます。J-SHISでは地震動の確率や地盤情報も参照できます。自治体のハザードマップも併用し、活断層の位置だけでなく、液状化や土砂災害などの危険性も確認してください。
まとめ:今後の動向と失敗しないための判断基準
日本の活断層は全国に分布しており、地震調査研究推進本部は、過去の活動履歴や地質調査などを基に、主要活断層帯の地震規模や発生確率を評価しています。2026年は1月14日に長期評価結果一覧が公表され、8月28日には複数の断層帯の評価が一部改訂されました。防災対策を考える際は、こうした更新を踏まえて最新の資料を確認が必要です。
地震リスクを判断する際に、S・A・Z・Xランクや30年以内の発生確率だけを見るのは十分ではありません。断層帯のどの区間が対象なのか、想定される地震の規模はどの程度か、地盤は揺れを増幅しやすいか、建物は十分な耐震性を備えているかという複数の条件を確認する必要があります。
まずはJ-SHISで自宅や勤務先の地震ハザードを調べ、国土地理院の活断層図で地形と断層の位置を確認し、自治体のハザードマップで避難経路を把握する。そのうえで、家具の固定や備蓄、耐震対策を進めることが、日常生活の中で実践できる現実的な備えです。
活断層の評価は、地震の日時を予言するものではありません。しかし、過去の地震から得られた科学的な知見を暮らしの安全に結び付けるための重要な情報です。地図と長期評価を定期的に確認し、地域の特性に合った防災対策を積み重ねていきましょう。