大相撲の力士が頭に結っている「大銀杏(おおいちょう)」と「ちょんまげ」。どちらも日本の伝統的な髷(まげ)ですが、実は見た目だけでなく、結い方や結える力士の条件、土俵での役割まで異なります。最大の要点は、大銀杏は原則として十両以上の関取が本場所の取組などで結う髪型であり、普段の稽古や生活では関取も小ぶりなちょんまげで過ごすことです。
日本相撲協会の公式解説によると、大銀杏は先端がイチョウの葉に似た形に広がることから名付けられ、床山と呼ばれる専門職人が技術を駆使して仕上げます。2026年9月16日付の比較解説でも、両者の違いとして見た目に加え、結い方や階級による条件が取り上げられています。この記事では、髪型の見分け方から歴史、床山の仕事、結い上げに必要な時間まで、初めて相撲を見る人にも分かるように整理します。
【この記事の重要ポイントまとめ】
- 見た目の違い:大銀杏は髷の先端がイチョウの葉のように広がり、ちょんまげは先端を小さくまとめる。
- 結える条件:原則として十両以上の関取が大銀杏を結い、本場所への出場時には大銀杏にする規定がある。例外も存在する。
- 職人の技術:髪質や長さに合わせて床山が整え、大銀杏は熟練者でも1人につき20~30分ほどかかると紹介されている。
【見た目で分かる】大銀杏とちょんまげの違いを徹底比較

大銀杏とちょんまげを見分ける最も簡単な方法は、頭頂部にある髷の先端に注目することです。大銀杏は髪の先が左右に広がり、扇状のイチョウの葉のような輪郭をつくります。一方、ちょんまげは髷の先端を小さく折り返してまとめた形が基本です。
遠くから見ると、どちらも頭の上に黒い髷が載っているように見えます。しかし、後ろ姿や斜め後方から観察すると、先端の広がり方や髷全体の大きさに違いが現れます。
| 比較項目 | 大銀杏 | ちょんまげ |
|---|---|---|
| 形状 | 先端がイチョウの葉のように広がる | 先端を小さく折り返してまとめる |
| 髷の印象 | 大きく、華やかで格式を感じさせる | 比較的小ぶりで簡潔 |
| 主な着用者 | 十両以上の関取が中心 | 幕下以下の力士、普段の関取 |
| 着用する場面 | 本場所の取組や公式行事など | 稽古、日常生活など |
| 結髪する人 | 床山 | 床山 |
| 特徴的な技術 | 大きな髷の形成、先端の広がり、左右の形の調整 | 髪を束ねて折り返し、形を整える |
大銀杏の構造を理解するうえで覚えておきたいのが、「大たぶさ」という部分です。たぶさは頭頂部に集めた髪の束を指し、大銀杏ではこの部分を大きく取って結い上げます。日本相撲協会の公式クイズ「大相撲クイズ No.585」(2023年8月16日公開)でも、大銀杏の構造に関連する名称として「大たぶさ」が紹介されています。
ただし、髷だけを見て現在の番付を断定するのは早計です。幕下以下の力士でも、十両の取組に出場する場合や、弓取り式・初っ切りなどの役目を務める場合には、大銀杏を結うことがあります。髷の形は有力な手掛かりですが、着用場面と併せて判断することが大切です。
【誰が結える?】大銀杏は十両以上の関取に認められた髪型
大銀杏とちょんまげの違いを理解するうえで、見た目以上に重要なのが力士の地位との関係です。大相撲では、十両以上の力士を「関取」と呼びます。幕下以下の力士は「力士養成員」として扱われ、待遇や取組の制度にも違いがあります。
日本相撲協会が2024年1月6日付の「大相撲クイズ No.728」で紹介した力士規定には、「十枚目以上の力士は、出場に際して大銀杏に結髪しなければならない」とあります。十枚目とは十両のことです。つまり、関取にとって大銀杏は、単に好みで選ぶ髪型ではなく、本場所への出場に関わる規定上の装いなのです。
十両昇進は、力士の生活が大きく変わる節目でもあります。日本相撲協会の「大相撲クイズ No.17」では、関取になると大銀杏を結えるようになることに加え、取組数や待遇、付け人、まわしなどにも変化が生じると説明されています。大銀杏は、関取という地位に伴う変化を視覚的に示す象徴の一つです。
もっとも、「十両以上でなければ、どんな場合でも絶対に大銀杏を結えない」という理解は正確ではありません。日本相撲協会の2025年10月27日付の公式解説では、幕下以下の力士でも初っ切り、引退時の断髪式、床山の練習台などで大銀杏を結う例が紹介されています。
一方、幕下上位の力士だからといって、通常の幕下の取組で自由に大銀杏を結えるわけではありません。2026年1月13日付の日本相撲協会の解説でも、十両土俵入り後に行われる「幕下上位5番」について、大銀杏が許されるわけではないことが示されています。幕下力士が十両の取組に出場する場合と、幕下の取組に出る場合とでは、扱いが異なるのです。
また、十両に昇進したばかりの力士でも、髪の長さが十分でなければ大銀杏を結えない場合があります。資格を満たした瞬間に、誰でも同じ形の髷を完成できるわけではありません。番付上の条件と、実際に結えるだけの髪の長さという二つの条件が関わります。
【結い方の違い】大銀杏はどう作る?ちょんまげとの構造を解説
大銀杏も、ちょんまげも、床山が力士の髪を整え、髷を結い上げて完成させます。両者の違いは、単純に髪の束を大きくするか小さくするかだけではありません。大銀杏では、頭頂部の髷を大きく形成し、先端をイチョウの葉のように広げながら、左右の鬢(びん)や後頭部の形まで整える必要があります。
結髪では、髪をとかして流れを整え、鬢付け油などを使って髪を扱いやすい状態にします。そのうえで、髪を束ねて元結(もとゆい)で固定し、髷の形をつくります。元結は髪を束ねるための伝統的な結びひもです。大銀杏の場合は、これに加えて髷の先端を広げ、輪郭を整える工程が必要になります。
床山が使う道具の一つに「髷棒(まげぼう)」があります。日本相撲協会の2025年3月9日付の公式解説では、大銀杏の両耳の上や後ろの部分を張り出すように整える道具として紹介されています。畳針を加工して使うこともある、専門的な道具です。
具体的な結い方を比較すると、次のような違いがあります。
- ちょんまげ:髪をとかし、油などで整えて束ね、折り返した髷を小さくまとめて固定する。
- 大銀杏:髪全体の流れや左右の鬢を整え、大きなたぶさをつくり、先端を広げてイチョウの葉に似た形に仕上げる。
ここで重要なのは、どちらも力士本人が自分で簡単に結える髪型ではないということです。日本相撲協会の公式解説でも、力士の髷は床山に結ってもらうものとして紹介されています。髪の流れや頭の形、髪質を見極め、動いても崩れにくいように整えるには、専門的な経験が必要です。
また、髷は髪が長ければ自動的に完成するものでもありません。大銀杏では髪を十分に確保できることに加え、髪のまとまりやすさ、先端を広げたときの形、固定の強さなども仕上がりに影響します。見た目の美しさと実用性を両立させることが、床山の腕の見せどころです。
【床山の仕事】結う時間は何分?大銀杏の難易度と習得年数
力士の髪を結う専門職が「床山(とこやま)」です。床山は日本相撲協会に所属し、相撲部屋などで力士の髪を整えます。行司や呼出しと同じく、大相撲の興行を支える専門職の一つです。
日本相撲協会の2022年12月18日付「大相撲クイズ No.344」では、大銀杏を結う技術の習得には10年以上かかると紹介されています。同じ解説によると、熟練した床山でも、関取1人の大銀杏を結うのに20~30分ほどかかるとされています。
一方、2025年5月16日付の「大相撲クイズ No.1224」では、大銀杏を結えるようになるまで実際には5年ほどかかるとも紹介されています。これは矛盾する数字と決めつけるよりも、基本的に結えるようになるまでの段階と、十分な熟練を得て安定した仕上がりを実現する段階を分けて理解すると分かりやすいでしょう。
床山には五等から特等までの階級があり、特等が最上位です。ただし、大銀杏を結えるかどうかについて、日本相撲協会は特定の等級以上という一律の条件はないと説明しています。等級だけでなく、経験や技術の蓄積がものをいう世界です。
床山の技術が難しい理由は、髷の形を覚えるだけでは足りないことにあります。力士ごとに髪質や髪の長さ、頭の形は異なります。髪に癖がある場合は、結いやすい状態に整える作業も必要です。
日本相撲協会の2025年1月27日付の公式解説では、「癖もみ」という技術が紹介されています。髪に水をつけ、柔らかくなるまで15~20分ほどもみほぐして、結いやすい状態にする作業です。こうした下準備によって、鬢の形も整えやすくなります。
なお、ちょんまげの結髪時間は、Nippon.comの髷結いの紹介記事で約10~15分と説明されています。大銀杏の20~30分という目安と比べると、工程の多さや形づくりの難しさが分かります。ただし、髪質や状態、床山の熟練度によって実際の所要時間は変わります。
床山の仕事は、決められた形を機械的に再現する作業ではありません。力士の髪の状態を見極め、短い時間のなかで美しく、かつ崩れにくい髷をつくる職人技です。土俵上の力士の姿を支える、表からは見えにくい重要な仕事といえます。
【由来と歴史】大銀杏はいつ生まれた?武士の髷との違い
大銀杏の歴史を理解するには、江戸時代から明治時代にかけての髪型の変化を知る必要があります。現在の大相撲では、関取の大銀杏と幕下以下のちょんまげが代表的ですが、昔からこの二つだけに統一されていたわけではありません。
日本相撲協会の「大相撲クイズ No.813」(2024年3月31日公開)では、力士の髷は時代ごとの習慣や風俗に応じて変化してきたと説明されています。江戸時代には、大名に召し抱えられて武士身分となった力士も多く、武士に準じた髷を結っていました。
同協会の解説によると、大銀杏の形は幕末ごろから流行し、明治中期ごろには力士の髷の標準的な形になりました。それ以前には栗髷など、現在とは異なる髷も残っていました。
明治4年(1871年)には断髪廃刀令が実施され、相撲界にも断髪を求める動きがありました。しかし、力士の伝統的な風俗として結髪が認められ、髷の文化は現在まで受け継がれています。こうした経緯を経て、現在の大相撲では大銀杏とちょんまげが代表的な二つの髪型として定着しました。
では、大銀杏と武士の髷は何が違うのでしょうか。両者には歴史的なつながりがありますが、同じものと考えるのは正確ではありません。武士の髷は時代や身分、風俗によって形が異なりました。一方、大銀杏は相撲界の慣習のなかで定着した髪型であり、現在は関取の本場所への出場などと結び付いています。
また、「ちょんまげ」という言葉も、歴史上の髷全体を指す場合と、現在の大相撲で使われる小ぶりな髷を指す場合があります。相撲の解説で大銀杏とちょんまげを比較するときは、後者の意味で使われることが一般的です。
したがって、昔の絵に描かれた力士の髷を、現在のルールだけで分類するのは適切ではありません。歴史的な髪型は、その時代の社会的な習慣や流行を反映しているためです。大銀杏は武士の髷をそのまま残したものというより、長い歴史のなかで相撲独自の装いとして発展してきた髪型と捉えると理解しやすくなります。
【2026年最新】普段の髪型と大銀杏のルール、よくある誤解
2026年10月現在、大銀杏とちょんまげを理解するうえで押さえておきたいのは、髷の形が番付や着用場面と関係していることです。関取になった力士でも、日常生活や稽古では原則としてちょんまげで過ごします。大銀杏は本場所や公式行事などで結う、特別な髪型です。
日本相撲協会の公式解説を読むときは、髪型の一般的な説明と、力士規定に基づく着用条件を分けて考える必要があります。Wikipediaの「大銀杏」の項目にも、十両以上の関取が結う髪型という基本的な説明がありますが、例外的な場面や取組ごとの扱いについては、日本相撲協会の公式解説を併せて確認するのが確実です。
ここでは、観戦時に混同しやすいポイントを整理します。
- 誤解1:関取はいつも大銀杏を結っている。
実際には、関取も稽古や普段の生活ではちょんまげで過ごします。 - 誤解2:幕下以下の力士は、どんな場面でも大銀杏を結えない。
十両の取組に出場する場合や、弓取り式・初っ切りなどの例外があります。 - 誤解3:大銀杏は十両に昇進すれば、すぐに誰でも結える。
髪の長さが足りない場合があり、床山にも高度な技術が大切です。 - 誤解4:床山は階級が高くなければ大銀杏を結えない。
日本相撲協会の説明では、大銀杏を結うために必要な等級は一律には定められていません。 - 誤解5:大銀杏は武士の髷とまったく同じである。
歴史的なつながりはありますが、現在の大銀杏は相撲界の慣習に根付いた髪型です。
観戦で見分けるなら、まず髷の先端がイチョウの葉のように広がっているかを確認し、そのうえで力士が出場している取組や場面を見てください。髷の形だけで番付を決めつけず、着用場面と合わせて判断するのが確実です。
こうして見ると、大銀杏は単なる装飾ではありません。力士の地位、相撲の伝統、床山の技術が一つの髪型に表れています。土俵入りや取組前の短い時間でも、髷の形に注目することで、大相撲の見方はより豊かになります。
【大銀杏ちょんまげ違い】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:大銀杏とちょんまげの一番大きな違いは何ですか?
A1:最も分かりやすい違いは髷の先端です。大銀杏はイチョウの葉のように広がり、ちょんまげは小さく折り返してまとめます。また、大銀杏は原則として十両以上の関取が本場所などで結う髪型で、ちょんまげは稽古や日常生活で使われる髪型です。
Q2:大銀杏は十両以上の力士しか結えないのですか?
A2:原則として、十両以上の関取が本場所の取組で結います。ただし、幕下以下の力士でも十両の取組に出場する場合や、弓取り式、初っ切り、引退時の断髪式など、特別な場面で結うことがあります。幕下以下の力士が通常の幕下の取組で自由に結えるわけではありません。
Q3:大銀杏を結うには何分かかり、どのくらいの技術が必要ですか?
A3:日本相撲協会の公式解説では、熟練した床山でも1人の関取につき20~30分ほどかかると紹介されています。技術の習得については、基本的に結えるようになるまで5年ほど、十分な技術を身につけるには10年以上という説明もあります。髪質や長さに合わせて形を整えるため、経験と熟練が必要です。
まとめ:大銀杏とちょんまげの違いを知れば大相撲がもっと面白くなる
大銀杏とちょんまげの違いは、先端の形だけではありません。大銀杏はイチョウの葉のように広がる髷で、原則として十両以上の関取が本場所の取組などで結います。一方、ちょんまげは小ぶりにまとめた髷で、幕下以下の力士や、普段の関取に広く見られます。
大銀杏を仕上げるには、髪を整える下準備から、髷の形成、先端の広がり、左右の鬢の調整まで、床山の専門技術が欠かせません。熟練者でも20~30分ほどかかるとされ、技術の習得にも長い年月が必要です。髪型の違いを知ることは、床山という職人の仕事を知ることにもつながります。
また、大銀杏は幕末ごろから流行し、明治中期ごろには力士の標準的な髷になったと日本相撲協会が解説しています。武士の髷との歴史的なつながりを持ちながら、相撲界独自の装いとして受け継がれてきた文化なのです。
2026年の大相撲観戦では、力士の顔や取組だけでなく、頭頂部の髷にも注目してみてください。先端の形と着用場面を合わせて見ることで、関取の地位や相撲の伝統、床山の技術まで見えてきます。大銀杏とちょんまげの違いを知ることは、土俵の外側にある大相撲の魅力を発見する第一歩です。