ホーム 芸能人プロフィール・現在 【意思決定】延命治療をしない選択はできる?本人・家族が知っておきたい判断方法

【意思決定】延命治療をしない選択はできる?本人・家族が知っておきたい判断方法

早瀬 結衣 早瀬 結衣 • 更新: • 公開: • 読了約 15 分
目次

延命治療を受けるかどうかは、患者本人の意思を基本として判断します。医学的に可能な治療をすべて受けることだけが正解ではなく、本人が望む生活や価値観に照らして、治療を開始しない、継続しない、あるいは一部の治療だけを選択するという考え方もあります。

【検証資料 1】延命治療とはの当時の様子・関連報道写真(出典:Yahoo!ニュース)

大切なのは、治療を受けないという選択が、必要な医療やケアをすべて放棄することを意味しない点です。生命を維持するための処置を控える場合でも、痛みや息苦しさ、不安を和らげる緩和ケアなどは継続できます。

延命治療をしない選択を考えるときの判断基準

具体的には、次のような条件を確認しながら、本人や家族、医療関係者が話し合います。

  • 回復の見込みが乏しい:医学的な評価から、治療を続けても病気の改善や本人が望む状態への回復が難しいと考えられる。
  • 治療による負担が大きい:侵襲的な処置や長期管理による苦痛が、期待できる効果を大きく上回る可能性がある。
  • 本人が望む生活と合わない:意識や意思疎通、日常生活の自立など、本人が大切にしている価値観と治療後の状態に大きな隔たりがある。
  • 本人が事前に意思を示している:リビングウィルやACPの記録などから、希望する治療と希望しない治療を確認できる。

ただし、これらは単独で治療を中止するための条件ではありません。病気の種類や治療効果、本人の意思、身体的な負担などを総合的に検討する必要があります。

ACP(人生会議)とは?元気なうちから話し合う意味

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)は、将来、自分で医療やケアについて意思を伝えられなくなった場合に備え、希望する治療や療養生活について、本人・家族等・医療やケアの関係者が繰り返し話し合う取り組みです。

日本では「人生会議」という愛称で厚生労働省が普及を進めています。

人生会議では、単純に延命治療を希望するかどうかだけを決めるわけではありません。どこで療養したいか、誰と過ごしたいか、どの程度の医療的処置を望むか、苦痛をどのように和らげたいかなど、幅広い内容を話し合います。

例えば、次のような質問から始めると、本人の希望を具体的に共有しやすくなります。

  • 意識が戻る可能性が低い場合、人工呼吸器を希望するか。
  • 自分で食事を取れなくなった場合、胃ろうや経管栄養を希望するか。
  • 心臓が止まった場合、心肺蘇生を希望するか。
  • 強い痛みや息苦しさがある場合、どのような緩和ケアを希望するか。
  • 最期を迎える場所として、病院、自宅、介護施設のどこを望むか。
  • 自分で判断できなくなった場合、誰に自分の希望を伝えてもらいたいか。

厚生労働省は、本人の意思は心身の状態や時間の経過によって変わる可能性があるため、一度の話し合いで終わらせず、繰り返し確認することを勧めています。

なお、2026年度も厚生労働省による人生会議の普及啓発活動が実施されています。2026年10月12日には和歌山県で普及啓発イベントが開催され、全国各地から約800人が参加しました。

リビングウィル(事前指示書)で自分の希望を残す

リビングウィルは、将来自分で意思表示ができなくなった場合に備えて、受けたい医療や受けたくない医療について、あらかじめ書面で意思を示しておくものです。

例えば、人工呼吸器、心肺蘇生、胃ろうによる栄養補給などについて、自分の希望を記録できます。

厚生労働省も「わたしのリビングウィル(事前指示書)」という記入用資料を公開しています。記入する際には、家族や親しい人と話し合い、かかりつけ医にも意思を伝えておくことが勧められています。

リビングウィルは、本人の意思を医療関係者や家族に伝えるための重要な資料ですが、書面を作成すれば、どのような状況でも機械的に治療方針が決まるわけではありません。日本では事前指示書の法的な位置づけに関する課題もあり、実際の判断では、作成後の本人の意思や現在の病状、医学的妥当性なども確認されます。

また、本人の希望が変わった場合には、書面を書き直すこともできます。作成日や変更日を記載し、家族や医療関係者が最新の内容を確認できるようにしておきましょう。

DNAR(蘇生処置拒否)と延命治療は同じではない

延命治療に関連して知っておきたい言葉が、DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)です。これは、心停止した場合に心肺蘇生を試みないという意思決定に基づく医師の指示を指します。

DNARの対象は、あくまで心停止時の心肺蘇生です。人工呼吸器、酸素投与、抗菌薬、点滴、人工透析、栄養補給など、ほかの医療行為をすべて拒否するという意味ではありません。

この点について、日本集中治療医学会は2016年12月16日に公表した勧告で、DNAR指示と終末期医療は同義ではなく、心肺蘇生以外の医療については別途話し合う必要があると示しています。

例えば、本人が「心臓が止まったときの蘇生は望まないが、肺炎の治療や点滴は受けたい」と希望することも考えられます。DNARという言葉だけで、ほかの治療方針まで決めつけないことが大切です。

【2026年最新】生命維持治療の終了・差し控えに関する新ガイドライン

2026年9月28日、日本集中治療医学会、日本救急医学会、日本循環器学会、日本緩和医療学会の4学会が、「救急・集中治療における生命維持治療の終了/差し控えに関する4学会合同ガイドライン」を公表しました。

これは、2014年に公表された3学会合同のガイドラインを改訂したものです。生命維持治療の終了や差し控えについて、単に治療を続けるか止めるかという結論だけでなく、患者本人の価値観を踏まえた意思決定のプロセスを重視しています。

新ガイドラインでは、主に次の点が示されています。

  • 医学的な有効性や限界を多職種の医療・ケアチームで検討する。
  • 本人の意思やACP、リビングウィルなどの事前の記録を確認する。
  • 本人と家族等、医療・ケアチームが共同で治療方針を検討する。
  • 生命維持治療を終了・差し控える場合にも、緩和ケアを継続する。
  • 病状や本人・家族等の意向が変化した場合には、治療方針を再検討する。

特に注目されるのが、生命維持治療を終了・差し控えることは、生命を短縮させることを目的とするものではなく、本人の意思と医学的・倫理的な妥当性に基づいて治療やケアの目標を見直す過程の一つとして位置づけられている点です。

また、家族と医療チームの意見が一致しない場合や、予後の見通しが難しい場合には、一定期間だけ治療を試みて、その効果を確認する方法も示されています。

このガイドラインは救急・集中治療の現場を対象とした専門学会の指針であり、すべての患者に一律の治療終了を求めるものではありません。個別の患者の状況に応じて、本人の価値観と医学的な判断を組み合わせることを重視しています。

【家族の対応】延命治療について本人と家族が話し合うときのポイント

延命治療とは

本人が意思表示できなくなった場合、家族が治療方針について医療関係者と話し合う場面が生じます。突然の病気や事故では、家族が短時間で重大な判断を求められることもあります。

その際、家族が最も避けたいのは「自分が治療を断ったせいで命を縮めてしまったのではないか」という後悔を一人で抱えることです。本人の意思を普段から共有しておくことは、本人の希望を尊重するだけでなく、家族の精神的な負担を軽くすることにもつながります。

家族で話し合っておきたい5つのポイント

1.本人が大切にしている価値観を知る

本人が何を大切にしているのかを確認します。意識があること、家族との会話、自分で食事をすること、自宅で過ごすことなど、人によって優先順位は異なります。

2.治療の内容と回復の見込みを医師に確認する

人工呼吸器や胃ろうを提案された場合、何のために実施するのか、どの程度の効果が期待できるのか、治療しなかった場合にはどのような経過が予想されるのかを質問します。

3.治療ごとに希望を整理する

延命治療をすべて希望するか、すべて断るかという二択で考える必要はありません。心肺蘇生は希望しないが、感染症の治療や栄養補給は希望するなど、個別に考えることができます。

4.家族の介護負担や療養環境も確認する

在宅で人工呼吸器を使用する場合には、医療機器の管理や訪問看護、介護体制などが必要になる場合があります。本人の希望を実現するために、どのような支援が利用できるかも確認しましょう。

5.話し合った内容を記録して共有する

話し合いの内容は、本人、家族、かかりつけ医、医療・ケアチームの間で共有します。状況が変化したときに見直せるよう、記録を残しておくことも大切です。

本人の意思が確認できない場合は誰が決める?

厚生労働省のガイドラインでは、本人の意思を確認できない場合、家族等が本人の意思を推定できるなら、その推定意思を尊重することが基本とされています。

本人の希望を推定できない場合には、家族等と医療・ケアチームが十分に話し合い、本人にとって何が最善かを検討します。家族がいない場合や、家族間で意見がまとまらない場合などには、医療・ケアチームや複数の専門家による検討の場を設けることもあります。

ここで大切なのは、家族だけに最終的な責任を負わせないことです。医学的な見通しや治療の限界については医療関係者が説明し、本人の価値観については家族等が情報を提供することで、双方が協力して方針を考えます。

また、本人に意思決定能力がある場合は、家族の希望よりも本人自身の意思決定を基本とします。家族の意見が異なる場合も、本人の希望を中心に話し合うことが原則です。

【延命治療とは】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:延命治療をしないと決めることはできますか?
A1:本人の意思を基本として、医学的な妥当性や治療の効果、本人の価値観などを踏まえ、生命維持治療を開始しない、または継続しない選択を検討できます。ただし、具体的な方針は医療・ケアチームとの話し合いによって慎重に決めます。延命治療をしない場合でも、痛みや苦痛を和らげる緩和ケアは受けられます。

Q2:延命治療を受けると意識は戻らなくなるのでしょうか?
A2:必ずしもそうではありません。人工呼吸器などの生命維持装置は、回復が期待できる患者にも使用されます。意識が戻るかどうかは、病気の原因や脳・臓器の損傷、全身状態などによって異なります。担当医に意識回復の可能性や予後について確認することが大切です。

Q3:DNARを選ぶと人工呼吸器や点滴も受けられなくなりますか?
A3:いいえ。DNARは心停止時に心肺蘇生を行わないという指示です。人工呼吸器、酸素投与、点滴、抗菌薬、人工透析などの治療を自動的に中止するものではありません。それぞれの治療について、本人の希望と医学的な必要性を踏まえて別途判断します。

Q4:延命治療の費用は健康保険で全額カバーされますか?
A4:医学的に必要で保険適用となる診療は、公的医療保険の対象になりますが、窓口での自己負担は原則として発生します。高額療養費制度を利用すれば一定の上限を超えた医療費が軽減されます。ただし、食費や差額ベッド代などは対象外となるため、病院で具体的な費用を確認してください。

Q5:リビングウィルを書いておけば、家族が判断する必要はありませんか?
A5:リビングウィルは本人の希望を伝える重要な資料ですが、実際の病状や医療状況によって判断が必要になる場合があります。書面を作るだけでなく、家族やかかりつけ医と内容を共有し、定期的に見直しておくことが大切です。

Q6:延命治療を中止することは安楽死と同じですか?
A6:同じではありません。生命維持治療の終了や差し控えは、本人の意思や医学的・倫理的な妥当性を踏まえて治療方針を見直すことです。厚生労働省のガイドラインも、生命を短縮させる意図を持つ積極的安楽死を対象としていません。治療を終了・差し控える場合でも、苦痛を和らげる医療やケアを継続することが重視されています。

まとめ:延命治療で後悔しないために大切な判断基準

延命治療とは、人工呼吸器や胃ろう、心肺蘇生、人工透析などによって生命を維持する医療の総称です。病気からの回復を目指すために必要な場合もあれば、回復が難しい状態で生命を維持するために行われる場合もあります。

治療を受けるメリットは、生命を維持し、回復の可能性を残せることです。一方で、身体への負担や合併症、長期療養による経済的・精神的負担なども考慮する必要があります。

2026年は、高額療養費制度の見直しに加え、9月28日に救急・集中治療に関する4学会合同ガイドラインが公表されるなど、治療と意思決定を取り巻く制度・指針にも動きがありました。本人の意思、医学的な妥当性、生活の質を総合的に考える姿勢が改めて重視されています。

延命治療を希望するか、しないかに万人共通の正解はありません。大切なのは、本人がどのような人生を送りたいのかを理解し、その希望に沿った医療やケアを選べるようにすることです。

まだ元気なうちからACP(人生会議)やリビングウィルを活用し、家族や医療関係者と話し合っておくことが、いざというときの迷いや後悔を減らす第一歩になります。本人の意思を尊重しながら、家族だけで抱え込最初に、医療・ケアチームと一緒に納得できる選択を考えていきましょう。

同じカテゴリの記事

早瀬 結衣
コンテンツディレクター 早瀬 結衣
プロフィールを見る →

全記事の校正と事実確認を担当。固有名詞・日付・数値を公式発表と照合し、確認できない箇所は公開前に差し戻す運用をしています。

おすすめの関連記事