マセラティの電気自動車「フォルゴレ」は、イタリアンラグジュアリーと瞬発力のある電動パワートレインを融合させたモデル群だ。2026年は、SUVのグレカーレ、クーペのグラントゥーリズモ、オープンカーのグランカブリオで、それぞれの個性に加え、電費や航続距離を改善する技術が注目されている。
一方、親会社ステランティスは電動化計画を見直し、2025年には電動スーパーカー「MC20フォルゴレ」の開発計画中止も明らかになった。2026年10月には新型グレカーレ、グラントゥーリズモ、グランカブリオの日本導入も発表されている。では、フォルゴレは何が違い、どのモデルを選ぶべきなのか。公式技術情報と国内導入情報をもとに、性能、充電時間、価格、維持費、今後の戦略まで整理する。
【この記事の重要ポイントまとめ】
- モデルの違い:グレカーレは実用性重視のSUV、グラントゥーリズモは高性能クーペ、グランカブリオは4人乗りオープンカー。
- 充電・航続距離:グレカーレは400V・最大150kW、グラントゥーリズモとグランカブリオは800V系。航続距離は測定基準とモデルイヤーをそろえて比較する必要がある。
- 購入前の注意点:日本仕様のフォルゴレ各車については、最新モデルの価格・納期・装備を個別に確認する必要がある。
【2026年最新】マセラティの電気自動車「フォルゴレ」とは?

フォルゴレ(Folgore)は、イタリア語で「稲妻」を意味する言葉だ。マセラティはこの名称を、ブランドのデザインや走行性能を電気自動車で表現するモデル群に採用している。
単にエンジンをモーターへ置き換えるのではなく、アクセル操作に対する応答性、複数モーターによる駆動力制御、上質な内装、長距離移動での快適性を組み合わせている点が特徴だ。グレカーレ、グラントゥーリズモ、グランカブリオは、同じフォルゴレでも用途が大きく異なる。
2026年のモデル情報を見る際に注意したいのは、2026年モデルと2027年モデルの情報が混在していることだ。2025年10月に発表されたグレカーレの2026年モデルではAWDディスコネクトが導入され、2026年にはグレカーレの空力改善やグラントゥーリズモ、グランカブリオの改良も発表された。海外公式サイトには2027年モデルの数値も掲載されているため、年式と販売地域をそろえて確認したい。
加えて、2026年10月20日のマセラティ・ジャパンによる国内導入発表では、新型グレカーレは300PS、330PS、390PS、530PSの4グレード、新型グラントゥーリズモと新型グランカブリオは490PSと590PSの各2グレードとして紹介された。これらの発表内容は主にガソリン仕様を対象としており、海外のフォルゴレ仕様のスペックや価格を、そのまま最新の日本仕様に当てはめることはできない。
【徹底比較】グレカーレ・グラントゥーリズモ・グランカブリオは何が違う?
3モデルを比較する際は、最高出力だけでなく、車体形状、使い方、航続距離、充電環境まで見ることが大切だ。以下は、マセラティの海外公式サイトや公式資料に掲載された電動モデルの代表的な数値である。市場やモデルイヤーによって仕様が異なるため、日本で購入する際は国内仕様の確認が欠かせない。
| 比較項目 | グレカーレ フォルゴレ | グラントゥーリズモ フォルゴレ | グランカブリオ フォルゴレ |
|---|---|---|---|
| ボディタイプ | ラグジュアリーSUV | 4人乗りクーペ | 4人乗りオープンカー |
| 最高出力 | 550PS相当 | 約761PS | 約761PS |
| 最大トルク | 820Nm | 1,350Nm | 1,350Nm |
| 0〜100km/h加速 | 4.1秒 | 2.7秒 | 2.8秒 |
| 公表航続距離 | 最大580km(WLTP、2027年モデルの認証手続き中) | 最大251マイル(EPA推定、約404km) | 最大509km(認証手続き中) |
| バッテリー | 105kWh、400V | 92.5kWh(総容量)、800V | 92.5kWh(総容量)、800V |
| 急速充電の公表値 | 最大150kW、20〜80%が約29分 | 最大270kW、800V充電器で約5分に約100km分を回復 | 過去の公式欧州資料では最大270kW、20〜80%が約18分 |
| 向いている用途 | 日常使い、家族での移動、旅行 | 高性能な走りと長距離移動 | 開放感を楽しむドライブ |
数値の出典はマセラティのグレカーレ2027年モデル公式情報、グラントゥーリズモ2027年モデルの米国公式情報、グランカブリオの海外公式情報および過去の公式技術カタログ。航続距離はWLTP、EPA推定値、認証手続き中の公表値が混在しており、単純な順位付けには使えない。
グレカーレ フォルゴレ:3モデルの中で、日常生活との両立を考えやすいSUVだ。車高や室内空間、荷物の積みやすさを重視する人に向く。最高出力550PS相当、最大トルク820Nmという数値は、実用車の枠を超える加速性能を示している。
グラントゥーリズモ フォルゴレ:電動化とスポーツカーらしさの融合を最優先する人に適したクーペだ。3基のモーターを活用する駆動システムと、800Vの電気アーキテクチャが特徴。0〜100km/h加速2.7秒という性能は、日常の移動だけでなく、ドライビングそのものを楽しみたい人にとって大きな魅力になる。
グランカブリオ フォルゴレ:グラントゥーリズモの性能を、オープンエアのドライブで味わうモデルだ。4人乗りの電動カブリオレとして、デザインや開放感を重視する人に向く。航続距離の数値だけで選ぶよりも、ルーフを開けて走る時間そのものに価値を感じるかどうかが、購入判断のポイントになる。
【充電性能を解説】800VシステムとAWDディスコネクトの仕組み
フォルゴレの技術を理解するうえで、特に重要なのが高電圧バッテリー、充電出力、駆動方式の制御だ。これらは最高出力だけでは見えない、実際の使い勝手に直結する部分である。
800Vシステムは、充電性能を支える電気アーキテクチャだ。電力は電圧と電流の積で決まる。同じ電力を送る場合、400Vに比べて800Vなら必要な電流を小さくできるため、配線などで発生する抵抗損失や発熱を抑えやすい。大きな電力で充電する際にも有利になる。ただし、800Vを採用すれば必ず短時間で充電できるわけではなく、車両側の受入能力、充電器の出力、バッテリー温度、充電残量などが影響する。
グラントゥーリズモ フォルゴレの公式資料では、総容量92.5kWh、使用可能容量83kWhのバッテリーと800Vアーキテクチャを採用。最大270kWの800V対応急速充電器では、約5分で約100km分の航続距離を回復できると説明されている。これは一定条件での公表値であり、実際の充電量や走行距離は気温、速度、道路状況によって変わる。
一方、グレカーレ フォルゴレは105kWhのバッテリーと400Vの電気アーキテクチャを採用する。2027年モデルの海外公式情報では、最大150kWの直流急速充電に対応し、20%から80%までの充電時間は約29分。高電圧アーキテクチャの違いはあるが、実際の利便性は自宅や目的地での普通充電と、移動中に使える急速充電器の配置にも左右される。
AWDディスコネクトは、必要のないときに前輪側の駆動系を切り離す仕組みだ。グレカーレ フォルゴレの2026年モデルで発表されたシステムは、四輪駆動が不要な場面で後輪駆動へ切り替え、前輪側の駆動系で生じるエネルギー損失を抑える。マセラティの公式発表では、前輪側のドライブシャフトをハブから物理的に切り離し、四輪駆動と後輪駆動の切り替えを約500ミリ秒で行うと説明されている。
この仕組みはドライバーが手動で切り替えるものではない。センサー情報などをもとに車両が判断し、必要に応じて四輪駆動へ復帰する。つまり、駆動力を必要な場面では確保しながら、通常走行では効率を改善する発想だ。グラントゥーリズモとグランカブリオにも、前輪側の駆動系を切り離すWED(Wheel End Disconnect)システムが導入されている。
なお、バッテリーの充電時間は、残量20%から80%までのように同じ条件で比較するのが基本だ。最大充電出力だけを比べても、常にその出力が維持されるとは限らない。購入前には、普段利用する充電器との相性や、自宅に充電設備を設置できるかも確認しておきたい。
【価格と維持費】マセラティの高級EVは本当にお得なのか?
マセラティの電気自動車を検討する際、価格と維持費は分けて考える必要がある。電気自動車はガソリン代に相当するエネルギー費用を抑えられる可能性がある一方、購入価格、保険料、タイヤ、車両の減価、充電設備などを含めると、必ずしも所有コスト全体が安くなるとは限らない。
最初に、新車価格について注意したいのは、日本向けの最新フォルゴレ価格を、海外の販売価格や過去の国内掲載価格から単純に推定できない点だ。2026年10月20日に発表された新型モデルの国内価格帯は、グレカーレが1,065万〜1,710万円、グラントゥーリズモが2,232万〜2,702万円、グランカブリオが2,400万〜2,870万円。ただし、発表資料で示されたグレードはガソリン仕様が中心で、これらの金額をフォルゴレ専用の価格とみなすことはできない。
海外仕様の車両価格を円換算しても、日本での販売価格と一致するとは限らない。為替だけでなく、輸送費、税金、装備、認証、販売地域ごとの仕様が異なるためだ。フォルゴレの購入を具体的に検討する場合は、希望するモデルイヤーと仕様を指定して、正規ディーラーに車両本体価格、オプション、納期を確認する必要がある。
電気代は、充電する場所と契約プランで変わる。参考として、グレカーレ フォルゴレの105kWhという総容量をもとに、バッテリー残量20%から80%に相当する63kWhを補充すると仮定する。家庭の電気料金を1kWh当たり31円、公共急速充電の料金を単純に1kWh当たり55円と置けば、電力量だけの計算ではそれぞれ約1,950円、約3,465円になる。
これは料金体系を比較するための試算で、実際の請求額ではない。充電時の損失、時間制料金、月額会費、充電サービスごとの課金方法などによって金額は変わる。年間走行距離が長く、自宅で夜間充電できる人ほど、電気代の管理はしやすくなる。
維持費については、エンジンオイルや点火プラグなど、内燃機関に固有の交換作業が不要になる点がEVのメリットだ。一方で、重量のある高性能EVではタイヤやブレーキ、足回りの整備、保険料、専用部品の交換費用が無視できない。購入前には定期点検費用、高電圧バッテリーの保証条件、事故時の修理体制、将来の下取り価格まで確認したい。
また、充電設備を新設する場合は、工事費用や契約電力の見直しが必要になることもある。マンションなどで自宅充電が難しい場合は、近隣の急速充電器だけで長期的に運用できるかを、生活圏と走行パターンに照らして検討するのが現実的だ。
【電動化戦略を見直した理由】MC20フォルゴレ開発中止の経緯
フォルゴレの将来を考えるうえで外せないのが、マセラティの電動化戦略の変化だ。2025年3月、ロイター通信は、マセラティが電動スーパーカー「MC20フォルゴレ」の開発計画を中止したと報じた。当初は2025年の登場が予定されていたが、想定される販売台数が少なく、事業としての採算が見込めないことが主な理由だった。
報道によると、マセラティの広報担当者は、スーパースポーツカーの顧客は高性能なガソリンエンジンを好み、当面はバッテリー式電気自動車へ移行する準備ができていないとの市場調査結果を説明した。これは、電動化技術そのものを否定したというよりも、車種ごとの顧客層と販売見通しを踏まえた判断と捉えられる。
背景には、ブランドの販売状況もあった。ロイター通信によると、マセラティの2024年の販売台数は1万1,300台で、2023年の2万6,600台から減少。2024年の調整後営業損失は2億6,000万ユーロに達した。高価格帯の車種は開発投資が大きく、需要が限られる市場では、販売台数と利益率の両立がとりわけ重要になる。
加えて、親会社ステランティスは2026年2月、顧客の実際の需要に合わせ、EV、ハイブリッド、内燃機関車を含む選択肢を重視する方針を発表した。電動化を放棄するのではなく、地域ごとの充電インフラ、購入者の負担、規制、需要の違いを踏まえて、投資と製品計画を組み直す考え方だ。
2026年5月のステランティスの戦略計画では、マセラティを独自の伝統を持つ高級ブランドとして強化し、新たにEセグメントの2車種を追加する計画が示された。詳細なロードマップは2026年12月にモデナで公表する予定とされている。したがって、10月28日時点では、マセラティの将来の製品構成がすべて確定したわけではない。
この動きから読み取れるのは、マセラティが「すべてのモデルを同じ速度で電動化する」という一律の方針よりも、車種ごとの顧客が求める価値に応じて技術を選び直していることだ。グレカーレのように日常性も重視されるSUVと、エンジン音や伝統的な運転感覚が購入動機になりやすいスーパースポーツカーでは、電動化への期待が同じとは限らない。
【ポルシェ・タイカンと比較】フォルゴレを選ぶべき人は?
マセラティの高級EVを検討する際、比較対象として挙がりやすいのがポルシェ・タイカンだ。どちらも高性能な電気自動車だが、ブランドの個性や車体形状、価格帯、走行性能の設定には違いがある。
参考として、ポルシェジャパンが掲載する2027年モデルのタイカン後輪駆動仕様は、価格1,481万円、最高出力408PS、WLTCモードの一充電走行距離514km。タイカン4は1,528万円で、WLTCモードの航続距離は485kmとされる。800Vテクノロジーも採用しており、充電性能と走行性能を両立させる設計思想はフォルゴレと共通する部分がある。
ただし、この価格はタイカンのベースグレードのものであり、グラントゥーリズモ フォルゴレのような約761PSの高性能クーペと、価格だけで直接比較するのは適切ではない。また、タイカンの514kmはWLTC、グレカーレ フォルゴレの最大580kmはWLTPの公表値で、測定方法が異なる。数字の大小だけで航続距離を判断しないことが重要だ。
マセラティ フォルゴレの魅力は、加速性能や充電技術だけではない。イタリアンデザイン、内装の素材や仕立て、ブランド独自のスタイリング、そしてクーペやオープンカーとしての存在感も選択の理由になる。反対に、充電網の使いやすさ、購入価格、リセールバリューを最優先するなら、購入予定地域の実情を踏まえて複数ブランドを比較したほうがよい。
購入判断の目安は次のとおりだ。
- グレカーレ フォルゴレが向く人:日常の移動や家族での外出に使いながら、高い加速性能とSUVの実用性を求める人。
- グラントゥーリズモ フォルゴレが向く人:高性能クーペの走り、スタイリング、長距離ドライブでの快適性を重視する人。
- グランカブリオ フォルゴレが向く人:4人乗りの実用性を残しつつ、オープンエアのドライブと特別感を楽しみたい人。
- 慎重に検討したい人:自宅充電ができない人、長距離移動で充電待ちを避けたい人、購入費用や下取り価格の予測しやすさを最優先する人。
海外仕様の試乗レビューやオーナーの評価を見る際も、モデルイヤー、タイヤサイズ、走行環境、充電条件が異なれば、評価の前提は変わる。フォルゴレの評判を調べるなら、加速の鋭さやデザインへの評価だけでなく、実際の航続距離、充電のしやすさ、整備拠点、保証条件まで確認したい。
【マセラティの高級EV】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:マセラティの電気自動車フォルゴレは2026年に日本で買えますか?
A1:グローバル市場ではグレカーレ、グラントゥーリズモ、グランカブリオのフォルゴレ仕様が展開されている。ただし、2026年10月の日本向け新型モデル発表で示されたグレードと価格は、ガソリン仕様が中心だ。最新の日本仕様の販売状況、価格、納期は正規ディーラーへの確認が必要となる。
Q2:グレカーレ フォルゴレの航続距離は何kmですか?
A2:海外公式サイトに掲載された2027年モデルの公表値は、WLTPで最大580km。認証手続き中の数値であり、気温、速度、エアコンの使用、道路状況などによって実際の走行距離は変わる。日本で購入する場合は、国内仕様の正式な数値を確認したい。
Q3:フォルゴレは充電に何分かかりますか?
A3:グレカーレ フォルゴレは最大150kWの直流急速充電に対応し、海外公式情報では20〜80%まで約29分。グラントゥーリズモ フォルゴレは800V系で最大270kWの充電に対応し、公式資料では約5分で約100km分の航続距離を回復できるとされる。実際の所要時間は充電器やバッテリー温度などによって変動する。
Q4:フォルゴレの維持費はガソリン車より安いですか?
A4:走行距離や充電方法によっては、エネルギー費用を抑えられる可能性がある。エンジンオイルや点火プラグの交換が不要になる一方、タイヤ、保険、足回り、高電圧系統の整備、車両の減価などは考慮が必要だ。年間走行距離と自宅充電の可否を踏まえ、総所有コストで比較したい。
Q5:MC20フォルゴレはなぜ開発中止になったのですか?
A5:2025年3月のロイター通信の報道によると、スーパースポーツカー市場で電動モデルの需要が十分に見込めず、事業性の観点から開発計画が中止された。高性能なガソリンエンジンを求める顧客が多いという市場調査が背景にあったとされる。
まとめ:マセラティのフォルゴレを失敗なく選ぶための判断基準
マセラティの高級EV「フォルゴレ」は、単に航続距離や最高出力を競う電気自動車ではない。グレカーレは実用性、グラントゥーリズモは高性能クーペとしての走り、グランカブリオはオープンエアの体験を軸に、それぞれ異なる価値を提供している。
2026年の技術面では、グレカーレのAWDディスコネクトや、グラントゥーリズモとグランカブリオの800Vアーキテクチャが見どころだ。一方、MC20フォルゴレの開発中止やステランティスの戦略見直しは、高級EVの将来が技術力だけで決まるわけではなく、顧客の需要、価格、ブランドの個性、事業の採算性に左右されることを示している。
購入前には、最新の日本仕様と海外仕様を混同せず、正式な価格、航続距離の測定基準、充電時間、保証、整備費用、充電環境を確認したい。デザインと走りを最優先するのか、日常の使いやすさを重視するのか。自分の使い方を明確にしたうえで試乗し、総所有コストまで比較することが、フォルゴレを選ぶ際の最も確実な判断基準になる。