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虫歯があっても宇宙飛行士になれる?JAXAの選抜条件と宇宙での歯痛を徹底解説

早瀬 結衣 早瀬 結衣 • 更新: • 公開: • 読了約 22 分
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「虫歯があると宇宙飛行士になれない」という話を聞いたことはないだろうか。実は、この説は正確ではない。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の公式FAQによると、虫歯があっても治療済みであれば問題はなく、歯に詰め物が入っている場合も宇宙飛行士になることは可能だ。

ただし、宇宙飛行士の歯科管理は一般の健康診断とは少し事情が異なる。船外活動で使用する宇宙服の内部は約0.3気圧まで減圧され、地上や宇宙船内とは異なる圧力環境になる。未治療の虫歯や不完全な歯科治療が残っていると、歯の内部に閉じ込められた空気が膨張・収縮し、激しい歯痛を引き起こす可能性があるためだ。

毛利衛、若田光一、大西卓哉といった日本人宇宙飛行士の経歴や、日本歯科医師会の解説、NASA・ESAの医療資料を照らし合わせると、宇宙飛行士と虫歯の関係には興味深い事実が見えてくる。2026年現在の情報をもとに、選抜条件から歯科検診、宇宙での応急処置まで整理する。

【この記事の重要ポイントまとめ】

  • 虫歯があっても宇宙飛行士になれる:治療が完了していれば問題なく、詰め物があることも一律の不適格条件ではない。
  • 打ち上げ前には歯科検診を受ける:詰め物の脱落リスクや飛行中に悪化する可能性のある歯を確認する。
  • 宇宙服内の約0.3気圧が歯痛の原因になる:虫歯の空洞に残った空気が圧力変化で膨張・収縮することがある。

【結論】虫歯があっても宇宙飛行士になれる?JAXAの選抜条件を解説

虫歯宇宙飛行士

最初に、最も気になる疑問に答えたい。虫歯があるという理由だけで、宇宙飛行士への道が閉ざされるわけではない。

JAXAの公式FAQ「虫歯があると宇宙飛行士になれないって本当ですか」では、治療済みの虫歯や歯の詰め物について、宇宙飛行士として問題ないことが明確に説明されている。

「虫歯があっても治療してあれば問題はなく、歯に詰め物があっても大丈夫です。」

出典:JAXA有人宇宙技術部門「虫歯があると宇宙飛行士になれないって本当ですか」

つまり、判断の要点は過去に虫歯になった経験があるかどうかではなく、現在の歯の状態が飛行任務に耐えられるかどうかだ。

虫歯の有無よりも治療状態が重要

宇宙飛行士には、長期間にわたって健康を維持し、予測できない状況にも対応する能力が求められる。地上であれば歯科医院に行って治療できる症状でも、宇宙では簡単に専門医を受診できない。

そのため、次のような状態は飛行前に確認・対応する必要がある。

  • 治療していない虫歯が残っている。
  • 以前治療した歯の内部で虫歯が再発している。
  • 詰め物や被せ物が緩んでいる。
  • 歯の根元に炎症や感染がある。
  • 飛行中に痛みが悪化する可能性がある。

一方、適切に治療され、状態が安定している歯であれば、詰め物や被せ物があること自体は問題にならない。

JAXAの宇宙飛行士選抜で歯科はどう扱われる?

2021年度のJAXA宇宙飛行士募集要項では、医学的特性として身長、視力、色覚、聴力などが示されていた。公開された条件には、虫歯が一つでもあれば一律に応募資格を失うという規定は記載されていない。

ただし、これは歯科の健康状態が審査対象にならないという意味ではない。宇宙飛行士としての医学的適格性は、選抜時だけでなく、その後の訓練期間やミッション任命後にも継続して確認される。

JAXAの説明を踏まえると、虫歯の治療歴を隠すことよりも、必要な治療を受けて健康状態を維持することが重要だ。

【検証資料 1】虫歯宇宙飛行士の当時の様子・関連報道写真(出典:Yahoo!ニュース)

【出発前の必須チェック】宇宙飛行士の歯科検診と詰め物の確認

宇宙飛行士は打ち上げ前に歯科医師による検診を受ける。これは虫歯を探すだけの検査ではない。宇宙滞在中に発生し得る口腔トラブルを、地上にいるうちに可能な限り減らすための予防措置だ。

打ち上げ前の歯科検診で確認する項目

JAXAの公式説明では、特に次の2点が挙げられている。

  • 外れそうになっている詰め物がないか。
  • 飛行中に悪化しそうな歯がないか。

虫歯を治療した歯でも、その後の経過によって内部に再び虫歯ができることがある。また、詰め物と歯の間に隙間ができていれば、気圧変化に伴う問題につながる可能性もある。

そのため、過去に治療した歯についても、現在の状態を確認することが欠かせない。

NASAでも打ち上げ前の歯科評価を正式に規定

この考え方はJAXAだけに限らない。

NASAが2024年9月に公開した宇宙飛行医学基準「OCHMO-STD-100.1A」では、搭乗員の歯科健康状態を打ち上げ前に評価することが要求されている。

加えて、打ち上げ前2年以内に、歯科パノラマX線撮影または口腔全体のX線検査を実施することも規定されている。これは潜在的な歯科疾患を早期に発見し、飛行前に対処するためだ。

NASAの基準では、180日程度のISS滞在を想定した場合、打ち上げ90~30日前の歯科検診も例示されている。こうした検査は、宇宙飛行の安全性を確保するための計画的な健康管理の一部である。

歯の詰め物は宇宙で外れるのか

「銀歯や詰め物が宇宙に行くと外れる」という話もあるが、詰め物が入っているだけで問題が起きるわけではない。

注意すべきなのは、詰め物そのものよりも、その周辺に隙間や虫歯が存在することだ。密閉されていない部分に空気が残っていると、気圧変化によって内部の圧力が変わり、歯の組織や修復物に負担がかかる可能性がある。

ESA(欧州宇宙機関)の宇宙飛行士選抜FAQでも、飛行前に歯の状態を詳しく調べ、予防的な措置として詰め物をやり直す場合があると説明されている。

つまり、詰め物があること自体を恐れる必要はないが、その治療が現在も正常に機能しているかが重要になる。

【人物・経緯を検証】毛利衛・若田光一・大西卓哉と宇宙飛行士の歯科事情

日本人宇宙飛行士の歯科事情を調べると、毛利衛の虫歯治療、若田光一の抜歯訓練など、興味深いエピソードが見つかる。

ただし、人物ごとに確認できる情報の種類は異なる。本人の発言、著書に基づく日本歯科医師会の解説、JAXAの公式プロフィールを区別して見ておきたい。

人物・組織 確認できる情報 歯科との関係 検証ポイント
毛利衛 1983年の宇宙飛行士募集に応募 選抜に備えて歯科医院で虫歯を治療 本人のJAXA掲載インタビューで確認できる
若田光一 宇宙飛行士としてISS船長も経験 地上での抜歯訓練について著書で言及 日本歯科医師会が著書を出典として紹介
大西卓哉 2016年・2025年にISS長期滞在 個人の歯科治療訓練について具体的な公開記録は確認できない JAXA公式プロフィールで搭乗経歴を確認できる
JAXA 宇宙飛行士の健康管理を実施 打ち上げ前の歯科検診を説明 治療済みの虫歯や詰め物は問題ない
日本歯科医師会 宇宙飛行士と歯科の関係を解説 抜歯訓練や宇宙での応急処置を紹介 若田光一の著書などを情報源としている
フライトサージャン 宇宙飛行士の医学管理を担当 飛行中の医療判断や緊急対応を支援 地上から宇宙飛行士を医学的にサポートする

毛利衛は宇宙飛行士への応募前に虫歯を治療していた

日本人初のスペースシャトル搭乗者として知られる毛利衛は、宇宙飛行士への応募時に歯科治療を受けた経験を本人の言葉で明かしている。

JAXAが公開する「毛利宇宙飛行士の質問への回答」には、1983年9月の日本人宇宙飛行士募集に応募した際のエピソードが記録されている。

毛利は当時、宇宙飛行士になるために必要な準備を進める中で、歯科医院に行って虫歯を治療したと説明している。

その後、毛利は1985年に日本人初の宇宙飛行士として選定され、1992年にはスペースシャトル「エンデバー号」に搭乗した。

ここで注意したいのが、毛利の歯科治療に関する年代の混同だ。日本歯科医師会の紹介記事には「95年の選抜」とする記述がある一方、JAXAに掲載された毛利本人の回答では、1983年の募集への応募と虫歯治療が結び付けられている。経緯を確認する際は、本人の回答が掲載されたJAXAの記録が重要な資料となる。

若田光一は地上で抜歯訓練を受けていた

宇宙飛行士の歯科事情で特に注目されるのが、若田光一の抜歯訓練だ。

日本歯科医師会の広報委員会が運営する「テーマパーク8020」の記事では、若田の著書『宇宙飛行』を出典として、宇宙飛行士が地上で歯を抜く訓練を受けていることが紹介されている。

なぜ、宇宙飛行士が抜歯まで学ぶ必要があるのか。

最大の理由は、宇宙空間では歯科医師による通常の治療を受けられないためだ。虫歯が急激に悪化した場合や、痛みが薬で抑えられない場合には、歯を抜くことが選択肢になる可能性がある。

もちろん、これは宇宙飛行士が日常的に自分の歯を抜くという意味ではない。地上からの医学的な指導を受け、緊急事態に対応するための訓練として理解する必要がある。

大西卓哉の歯科治療訓練は確認できるのか

大西卓哉についても、歯科治療訓練や抜歯訓練に関する情報が検索されている。

JAXAの公式プロフィールによると、大西は1975年東京都生まれ。2009年に宇宙飛行士候補者として選抜され、2011年にISS搭乗宇宙飛行士として認定された。

2016年にはISS第48次・第49次長期滞在クルーとして約113日間宇宙に滞在。さらに2025年3月から8月にはCrew-10でISS第72次・第73次長期滞在に参加し、日本人3人目のISS船長に就任した。

一方、JAXAの公開プロフィールには、大西個人が歯科治療訓練や抜歯訓練を受けたという具体的な記載はない。

若田の抜歯訓練に関する情報と、大西の宇宙飛行士としての訓練経歴を混同しないことが大切だ。宇宙飛行士全体の医療訓練として歯科対応が存在することと、特定の人物がどの訓練を受けたかは、別の情報として扱う必要がある。

大西の2025年のISS船長就任は、宇宙飛行士の長期滞在と医学的な健康管理が現在も重要な課題であることを示す事例でもある。

【検証資料 2】虫歯宇宙飛行士の活動歴およびメディア掲載記録(出典:Yahoo!ニュース)

【科学的な仕組み】宇宙服内の約0.3気圧で歯痛が起こる理由

宇宙飛行士と虫歯の関係で、最も科学的に興味深いのが気圧変化による歯痛だ。

JAXAの公式FAQでは、船外活動中の宇宙服内部が約0.3気圧に減圧されることを説明している。ISSの船内はおおむね1気圧に保たれているため、船外活動に出る際には大きな圧力差が生まれる。

ここで問題になるのが、虫歯によって歯の内部にできた空洞だ。

虫歯の空洞に閉じ込められた空気が膨張する

歯の内部に空気が閉じ込められた状態を想像してほしい。

健康な歯や適切に治療された歯であれば、通常、このような問題が起きる可能性は低い。しかし、古い治療部分に隙間があり、その後に虫歯が進行して空洞ができていると、内部に空気が残る場合がある。

この空気は周囲の気圧が変わると体積も変化する。一定温度の気体では、圧力と体積がおおむね反比例するというボイルの法則が関係している。

例えば、宇宙服の内部が1気圧から0.3気圧に変化すると、閉じ込められた空気は膨張しようとする。その結果、歯の内部から圧力がかかり、痛みが発生する可能性がある。

宇宙船に戻ると今度は逆方向の痛みが起きる

実は、問題は船外活動中だけではない。

船外活動を終えて宇宙船内に戻ると、周囲の気圧は約0.3気圧から約1気圧へ戻る。

JAXAの説明によると、虫歯によってできた空洞の内部には、船外活動中の低い気圧が残っている場合がある。その状態で周囲の圧力が上昇すると、空洞の内部と外側で圧力差が生じ、歯が押し込まれるような痛みにつながることがある。

やがて詰め物の隙間などから空気が出入りすれば、内部と外部の圧力は同じになる。

つまり、船外に出るときは空気の膨張、船内に戻るときは周囲の圧力上昇による圧力差が問題になる。

0.3気圧は宇宙全体の気圧ではない

ここで誤解しやすいポイントがある。

約0.3気圧という数字は、船外活動で使用する宇宙服の内部圧力についての説明だ。ISSの船内が常に0.3気圧という意味ではない。

JAXAの宇宙服解説でも、船外活動用の宇宙服は内部を約0.3気圧に設定していると説明されている。一方、ISSの船内は約1気圧の環境だ。

宇宙服の内部圧力を低くするのは、宇宙服が外部との圧力差によって膨らみ、宇宙飛行士の動きを妨げることを抑えるためでもある。

したがって、宇宙に行っただけで全員の歯が痛くなるわけではない。問題になるのは、歯の内部に空気が閉じ込められるような不完全な治療や虫歯が残っている場合だ。

【緊急時の対応】宇宙で歯が痛くなったら?応急処置と抜歯訓練の実態

では、予防を徹底していても、宇宙で突然歯が痛くなったらどうするのか。

地上であれば歯科医院に連絡し、診察やレントゲン検査を受けられる。しかし、ISSでは地球まで戻ることができないため、船内の医療設備と地上からの遠隔支援を利用して対応することになる。

まずは薬による痛みの管理

日本歯科医師会の解説では、宇宙で歯痛が発生した場合、最初の対応として痛み止めの薬を使用することが紹介されている。

それでも痛みが抑えられない場合は、フライトサージャンの指導の下で、ほかの宇宙飛行士が抜歯する可能性もある。

ただし、歯痛が起きたからといって、直ちに歯を抜くわけではない。症状や原因を確認し、医学的な判断に基づいて対応を決める。

宇宙での歯科治療はどこまで可能なのか

「宇宙には歯科医院がないから、歯の治療は一切できない」という説明も、現在の宇宙医学の実情を十分に表しているとはいえない。

確かに、地上の歯科医院のような設備が宇宙船内に整っているわけではない。通常の歯科治療で使用する装置や水、削った歯の破片などの取り扱いも難しい。

一方、NASAやESAの資料では、宇宙飛行士が基本的な歯科救急対応を学び、必要な器具を搭載する体制が紹介されている。

ESAの宇宙飛行士選抜FAQによると、ISSには基本的な緊急歯科キットが用意されており、ESAとNASAの宇宙飛行士は軌道上で起こり得る一般的な歯科トラブルへの対応を実習形式で学ぶ。

また、NASAの宇宙歯科医療に関する資料では、訓練項目として次のような内容が示されている。

  • 局所麻酔の実施。
  • 仮の詰め物による処置。
  • 歯髄が露出した場合の対応。
  • 仮着材を用いた被せ物の処置。
  • 抗生物質による感染への対応。
  • 必要時の抜歯。

こうした対応は、通常の歯科治療を宇宙で完全に再現するものではない。あくまでも限られた設備と医療資源の中で、緊急事態を管理するためのものだ。

NASAの2012年の技術報告書「Review of Spaceflight Dental Emergencies」でも、長期宇宙探査では歯痛、虫歯、詰め物の脱落、歯の破折などが医療上のリスクになると整理されている。

地球から遠く離れ、緊急帰還が難しい月や火星への有人探査では、ISS以上に歯科医療の自立性が求められる。

フライトサージャンはどのように関わるのか

宇宙飛行士の医療対応を支える重要な存在が、フライトサージャン(Flight Surgeon)だ。

フライトサージャンは航空宇宙医学の専門知識を持つ医師であり、宇宙飛行士の選抜から飛行前、飛行中、帰還後まで、長期的な健康管理を担当する。

JAXAの公式説明によると、医学運用チームにはフライトサージャンのほか、バイオメディカルエンジニア、健康管理担当者、放射線被ばく管理担当者、精神心理支援担当者などが参加する。

ISS滞在中は、地上のフライトサージャンと宇宙飛行士が遠隔で連携し、必要な医学的判断や対応を進める。

ESAの説明では、ISSにはクルー・メディカル・オフィサー(CMO)と呼ばれる医療担当の宇宙飛行士も配置される。CMOは基本的な医療支援を担い、地上のフライトサージャンから助言を受けながら対応する。

つまり、宇宙で歯が痛くなった場合も、宇宙飛行士が完全に独力で判断するわけではない。船内の医療担当者と地上の専門家が連携する仕組みが用意されている。

【プロの結論】虫歯宇宙飛行士の真相は「治療」と「予防」にある

ここまでの情報から、宇宙飛行士と虫歯の関係を判断する基準は3つに整理できる。

第一に、治療済みの虫歯は一律の不適格条件ではない。 JAXAは、適切に治療されていれば問題なく、詰め物があることも認めている。

第二に、治療が完了しているかだけでなく、現在も正常な状態を維持しているかが重要だ。 古い詰め物の隙間や再発した虫歯など、飛行中に悪化する可能性がある状態は出発前に対処する必要がある。

第三に、宇宙での歯科医療は緊急対応を前提としている。 痛み止め、仮の歯科処置、必要に応じた抜歯などの対応はあるが、地上と同じ治療環境が存在するわけではない。

虫歯がある人を宇宙飛行士から排除するという考え方ではなく、限られた医療環境でも安全に任務を遂行できる状態を整えること。それが宇宙飛行士の歯科管理の本質だ。

【検証資料 3】虫歯宇宙飛行士に関する近況・インタビュー報道記録(出典:Yahoo!ニュース)

虫歯宇宙飛行士に関するよくある質問(FAQ)

Q1:虫歯がある人でもJAXAの宇宙飛行士になれますか?
A1:なれる可能性はある。JAXAは、虫歯があっても治療済みであれば問題なく、詰め物がある場合も大丈夫と説明している。ただし、現在の歯の状態や医学的適格性については確認が必要になる。

Q2:宇宙飛行士の銀歯や詰め物は宇宙で外れますか?
A2:詰め物があるだけで外れるわけではない。問題になるのは、詰め物が緩んでいる場合や、内部に虫歯や空気の空洞が残っている場合だ。飛行前に歯科検診で状態を確認する。

Q3:宇宙服の0.3気圧はなぜ歯痛につながるのですか?
A3:船外活動では宇宙服内が約0.3気圧まで減圧される。虫歯の空洞に空気が閉じ込められていると、減圧時に空気が膨張し、歯の内側から圧力がかかるため痛みが生じる場合がある。船内に戻る際にも逆方向の圧力差が起こり得る。

Q4:宇宙で歯が痛くなったら必ず抜歯するのですか?
A4:必ず抜歯するわけではない。まず症状を確認し、薬や利用可能な歯科用器具で対応する。改善しない場合などには、フライトサージャンの指導の下で抜歯が検討される。

Q5:若田光一は本当に抜歯訓練を受けたのですか?
A5:日本歯科医師会の解説では、若田光一の著書『宇宙飛行』を出典として、宇宙飛行士が地上で抜歯訓練を受けていることが紹介されている。ただし、これをすべての宇宙飛行士の個別訓練歴と同一視することはできない。

まとめ:宇宙飛行士に必要なのは虫歯ゼロより確実な歯科管理

「虫歯があると宇宙飛行士になれない」という話は、正確には誤解を含んでいる。JAXAの公式説明では、虫歯があっても治療済みなら問題なく、詰め物があることも認められている。

ただし、宇宙飛行士にとって歯の健康は一般の人以上に重要だ。船外活動では宇宙服内が約0.3気圧まで下がり、虫歯の空洞に残った空気が膨張することで歯痛が起こる可能性がある。加えて、宇宙では地上の歯科医院のような治療をいつでも受けられるわけではない。

毛利衛が宇宙飛行士への応募時に虫歯を治療していたことや、若田光一の著書を通じて紹介された抜歯訓練は、歯科管理が宇宙飛行の安全性と深く関係していることを物語っている。

2026年現在、有人宇宙活動はISSでの長期滞在から月・火星を視野に入れた探査へと広がっている。地球から遠く離れるほど、緊急時に専門医の治療を受けることは難しくなる。

宇宙飛行士に必要なのは、過去に一度も虫歯になったことがないという経歴ではない。自分の健康状態を正確に把握し、必要な治療を済ませ、長期間にわたって健康を維持する能力だ。宇宙での歯のトラブルを防ぐための徹底した予防と検診は、これからの有人宇宙探査でも欠かせない課題となる。

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コンテンツディレクター 早瀬 結衣
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