ホールドは英語の「Hold」に由来し、日本語では「リードを保つ」「勝利につなぐ状態を維持する」という意味合いで使われます。
プロ野球では、主にセットアッパーや中継ぎ投手が残した成果を数字で評価するために設けられています。
例えば、巨人が4対3でリードしている8回表に中継ぎ投手が登板し、相手打線を抑えて1点リードを維持したまま降板したとします。その後、別の投手が9回を抑えて試合に勝てば、8回を担当した投手にホールドが記録される可能性があります。
つまり、ホールドは試合を最後まで締めくくる記録ではなく、勝利までの重要な中継地点を守った記録です。
ホールドが導入された背景
NPBでは、2005年にホールドの記録方式が変更されました。
それ以前はパ・リーグで独自のホールド制度が採用されていましたが、2005年からセ・パ共通の新しいホールド制度が導入されています。
同時に、最優秀中継ぎ投手賞の評価基準もホールドと救援勝利を合計する方式に変更されました。
この変更によって、抑え投手だけでなく、試合終盤のピンチを切り抜ける中継ぎ投手にも明確な評価基準が設けられました。
ホールドは何人に記録される?
ホールドは、1試合で複数の投手に記録されることがあります。
例えば、次のような継投です。
- 7回:中継ぎ投手Aが登板してリードを維持
- 8回:中継ぎ投手Bが登板してリードを維持
- 9回:抑え投手Cが登板して試合を締める
この場合、AとBにそれぞれホールド、Cにセーブが記録される可能性があります。
1試合につき1人だけが獲得できる記録ではありません。
【成立条件】ホールドがつく条件は?3点差以内・1イニングの誤解を解説
ホールドを理解するうえで最も重要なのが、登板時の状況と降板時の結果です。
NPBの公式記録では、大きく分けて2つの成立パターンがあります。
① セーブが記録される状況で登板する
1つ目は、チームがリードしている場面で登板し、1アウト以上を取ってリードを維持したまま降板するケースです。
代表的なのは、次のような状況です。
- 1点リードの8回に登板する
- 2点リードの7回に登板する
- 3点リードの8回に登板する
- 同点に追いつかれる可能性がある走者状況で登板する
ここで注意したいのが、単純に3点差以内なら必ずホールドになるわけではないという点です。
登板時にセーブ機会に該当するかどうかが重要になります。
また、ホールドには1イニングを投げ切る必要はありません。最低1アウト以上を記録することが基本条件です。
② 同点の場面で登板する
2つ目は、NPB独自の特徴として押さえておきたい条件です。
同点の場面で登板した投手も、一定の条件を満たせばホールドを獲得できます。
具体的には、次の条件です。
- 同点の状況で救援登板する
- 1アウト以上を取る
- 登板後、前任投手が残した走者も含めて無失点に抑える
- 勝利・敗北・セーブ・引き分けの記録を得ない
ただし、自チームが得点してリードを奪った場合は、失点してもリードを保って降板すればホールドが認められるケースがあります。
この条件があるため、同点で登板した投手にもホールドが付くことがあります。
「3点差以内で1イニング」はセーブの条件
野球観戦でよく聞く「3点差以内で1イニングを投げ切ればセーブ」という説明は、セーブの成立条件の一つです。
NPBの公認野球規則では、セーブにはほかにも、同点に追いつかれる可能性がある状況で登板するケースや、3イニング以上を投げるケースなどが定められています。
ホールドとセーブは共通する登板状況があるものの、求められる役割は異なります。
- セーブ:試合の最後を投げ切る
- ホールド:リードを維持して次の投手に引き継ぐ
この違いを理解すれば、1イニング未満の登板でもホールドが付く理由が分かります。
【具体例】ホールドが記録される場面・つかないケースを解説
ルールを文章だけで理解するより、実際の試合展開に置き換えると分かりやすくなります。
ホールドが記録される具体例
ケース1:2点リードの8回に登板
チームが5対3でリードしている8回表。
中継ぎ投手Aが登板し、打者を3人抑えて無失点で降板します。9回は抑え投手Bが登板して試合を終わらせました。
この場合、Aにはホールド、Bにはセーブが記録される可能性があります。
ケース2:同点で登板して無失点
チームが4対4で迎えた7回表。
投手Aが1死二塁の場面で登板し、後続打者を抑えて無失点で降板します。その後、味方が得点して勝ち越し、試合にも勝利しました。
Aが勝利投手などの別の記録を得なければ、同点時のホールド条件を満たす可能性があります。
ケース3:1アウトだけ取って交代
チームが1点リードしている8回、1死一、二塁で中継ぎ投手Aが登板します。
Aは次の打者を打ち取り、2死一、二塁で投手Bに交代しました。
この場合も、登板状況などの条件を満たしていれば、1アウトだけでホールドが記録されます。
ホールドがつかないケース
一方、次のようなケースではホールドは記録されません。
- 登板時にセーブ機会がない: 大差でリードしていて、同点の危険もない状況など。
- アウトを取れない: 登板後に1アウトも記録せず交代した場合。
- リードを失う: 登板中に同点または逆転を許して降板した場合。
- 勝利投手になる: 救援勝利が記録された投手にはホールドは付かない。
- セーブを記録する: 試合を最後まで締めくくってセーブを獲得した場合。
- 同点登板後に失点する: 同点時の特別条件を満たさずに降板した場合。
加えて、NPBには見落としやすい補足ルールがあります。
中継ぎ投手が走者を残して降板し、その走者が後続投手によって生還して同点またはビハインドになった場合、ホールドは記録されません。
つまり、自分がマウンドにいる間だけリードを守ればよいという単純な仕組みではないのです。
【徹底比較】ホールドとセーブ・勝利投手は何が違う?
ホールド、セーブ、勝利投手は、いずれも投手の働きを評価する記録ですが、それぞれの役割は異なります。
ホールドとセーブの違い
最も大きな違いは、試合を最後まで投げ切ったかどうかです。
| 比較項目 | ホールド | セーブ |
|---|---|---|
| 主な対象 | 中継ぎ投手 | 抑え投手 |
| 登板状況 | リード維持や同点時など | セーブ機会 |
| アウト条件 | 1アウト以上 | 1アウト以上 |
| 最後まで投げる必要 | なし | あり |
| 1試合で複数人に記録 | 可能 | 原則1人 |
例えば、8回を中継ぎ投手が抑え、9回を抑え投手が抑えた場合、前者にホールド、後者にセーブが付くことがあります。
ホールドと勝利投手の違い
勝利投手は、試合の勝利に対して野球規則に基づいて記録される投手です。
先発投手が規定の投球回数を満たして勝利投手になる場合もあれば、救援投手が勝利投手になる場合もあります。
一方、ホールドは勝利投手にならなかった救援投手の働きを評価する記録です。
NPBでは、勝利投手になった救援投手にホールドは付きません。
ただし、救援勝利は後述するホールドポイントに加算されます。
中継ぎ投手と抑え投手の役割
中継ぎ投手・セットアッパー
中継ぎ投手は、先発投手が降板した後に登板し、試合の流れを維持する役割を担います。
特に7回や8回など、相手の主力打者が続く重要な場面を任される投手はセットアッパーと呼ばれます。
抑え投手・クローザー
抑え投手は、主にリードしている最終回に登板し、試合を勝利で締めくくる役割を持ちます。
ただし、現代のプロ野球では投手の起用法が多様化しており、必ずしも中継ぎと抑えの役割が固定されているわけではありません。
【NPBとMLBの違い】ホールドのルールと記録方式を比較
日本とアメリカでは、ホールドの基本的な考え方は共通しています。
どちらも、試合終盤にリードを維持する救援投手を評価する指標です。
ただし、記録条件には重要な違いがあります。
| 比較項目 | NPB(日本) | MLB(アメリカ) |
|---|---|---|
| 制度 | 2005年に新制度へ変更 | 1980年代に考案 |
| リード時のホールド | 条件を満たせば記録 | 条件を満たせば記録 |
| 同点時のホールド | 特別条件で認められる | 原則認められない |
| 必要アウト | 1アウト以上 | 1アウト以上 |
| 後続投手が残した走者を返した場合 | 同点・ビハインドなら原則認めない | ホールドと敗戦が同一試合で記録される場合もある |
| 表彰との関係 | HPを最優秀中継ぎの基準に使用 | NPBと同じHP制度ではない |
NPBでは2005年の制度変更で、同点登板時のホールド条件が明文化されました。
一方、MLB公式サイトの用語解説では、ホールドはセーブ機会に登板して少なくとも1アウトを取り、リードを次の救援投手に引き継いだ場合と説明されています。
MLBでは、降板時にリードを保っていれば、その後に残した走者が生還して逆転されても、ホールドと敗戦が同時に記録されることがあります。
また、MLBではホールドは公認野球規則に定められた公式記録ではなく、統計上の指標として集計されています。
【2026年最新データ】プロ野球ホールドランキングと歴代最多記録
2026年10月30日時点では、NPBの2026年度レギュラーシーズンは全日程を終了しています。
ここでは日本野球機構の公式記録をもとに、セ・リーグとパ・リーグのホールドランキングを整理します。
2026年セ・リーグのホールドランキング
| 順位 | 投手 | 球団 | ホールド |
|---|---|---|---|
| 1位 | 田中瑛斗 | 巨人 | 42 |
| 2位 | 星知弥 | ヤクルト | 31 |
| 3位 | S.レイノルズ | DeNA | 30 |
| 4位 | 吉田聖弥 | 中日 | 27 |
| 5位 | T.ハーン | 広島 | 26 |
2026年のセ・リーグでは、巨人の田中瑛斗投手が42ホールドでトップに立ちました。
2位の星知弥投手に11ホールド差を付けており、救援投手として安定した結果を残しています。
2026年パ・リーグのホールドランキング
| 順位 | 投手 | 球団 | ホールド |
|---|---|---|---|
| 1位 | 椋木蓮 | オリックス | 33 |
| 1位 | 鈴木昭汰 | ロッテ | 33 |
| 3位 | 松本裕樹 | ソフトバンク | 32 |
| 4位 | 篠原響 | 西武 | 31 |
| 5位 | 山﨑颯一郎 | オリックス | 25 |
パ・リーグでは、オリックスの椋木蓮投手とロッテの鈴木昭汰投手が33ホールドで同率1位となりました。
松本裕樹投手も32ホールドを記録しており、上位3人が1ホールド差で並ぶ接戦でした。
2026年の最優秀中継ぎ投手賞は誰?
2026年の最優秀中継ぎ投手賞は、次の2人が受賞しました。
- セ・リーグ:巨人・田中瑛斗投手(45ホールドポイント)
- パ・リーグ:ロッテ・鈴木昭汰投手(39ホールドポイント)
ここで注目したいのが、ホールド数だけでなくホールドポイントによって受賞者が決まる点です。
田中投手は42ホールドに救援勝利3勝を加えた45HP、鈴木投手は33ホールドに救援勝利6勝を加えた39HPを記録しました。
歴代最多ホールド記録は宮西尚生
NPB通算ホールド・2026年シーズン終了時点
2008年から2026年までの実働期間で積み重ねた記録。NPB歴代最多のホールド数を保持しています。
NPB公式の歴代通算記録によると、2026年シーズン終了時点の上位選手は次のとおりです。
- 1位:宮西尚生 424ホールド
- 2位:山口鉄也 273ホールド
- 3位:浅尾拓也 200ホールド
宮西投手は2位の山口鉄也氏に151ホールドの差を付けています。
また、歴代シーズン最多ホールド記録は、ヤクルトの清水昇投手が2021年に記録した50ホールドです。
単年の記録と通算記録を分けて見ると、長期間にわたって中継ぎとして活躍する難しさがよく分かります。
【重要指標】ホールドポイント(HP)と最優秀中継ぎ投手賞の仕組み
ホールドと一緒に覚えておきたい数字が「ホールドポイント(HP)」です。
ホールド要点は、NPBの最優秀中継ぎ投手賞を決める際に使われる重要な評価指標です。
ホールドポイントの計算方法
計算式は非常にシンプルです。
計算例
42ホールド・救援勝利3勝の場合
つまり、ホールドだけでなく、救援投手として勝利投手になった回数も評価に含まれます。
先発投手としての勝利数は対象になりません。
この制度は、2005年のNPBの記録変更によって導入されました。
最優秀中継ぎ投手賞の選考基準
NPBでは、セ・リーグとパ・リーグそれぞれでホールドポイントを集計し、最も多く獲得した投手が最優秀中継ぎ投手賞の対象になります。
つまり、単純にホールド数が最多の投手が必ず受賞するわけではありません。
例えば、次の2人を比較してみます。
- 投手A:40ホールド、救援勝利2勝=42HP
- 投手B:38ホールド、救援勝利5勝=43HP
この場合、ホールド数はAの方が多いものの、ホールドポイントではBが上回ります。
このように、救援勝利も含めた総合的な成績が評価されます。
なお、最優秀中継ぎ投手賞はセ・パそれぞれで選出されるため、両リーグの投手を単純に一つの順位に並べて受賞者を決める制度ではありません。
【プロの結論】ホールド数だけで中継ぎ投手の実力を判断しない
ホールドは中継ぎ投手の働きを把握するうえで便利な数字ですが、それだけで投手の実力を完全に評価することはできません。
特に注目したいのは次の4項目です。
1. ホールド数: どれだけ多くの重要な場面でリードを維持したか。
2. 防御率: 登板中にどれだけ失点を抑えたか。
3. WHIP: 1イニング当たりにどれだけ走者を出したか。
4. 登板数・投球回: どの程度の頻度と負担でブルペンを支えたか。
加えて、前任投手が残した走者をどれだけ返さなかったか、僅差の場面で安定して投げられたかも評価したいポイントです。
ホールド数が多い投手は、チームがリードしている場面で起用される機会が多かった可能性もあります。
そのため、チーム事情や登板機会も含めて成績を読むことが、より正確な選手評価につながります。
【野球ホールドとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:野球のホールドは何点差まで記録されますか?
A1:3点差以内が代表的なセーブ機会ですが、点差だけで決まるわけではありません。走者の状況によって4点差以上でもセーブ機会になることがあります。条件を満たして1アウト以上を取り、リードを維持して交代すればホールドの対象になります。
Q2:ホールドは1イニング投げないと記録されませんか?
A2:いいえ。1イニングを投げ切る必要はありません。基本的には1アウト以上を記録することが条件です。3分の1イニングだけでも、ほかの成立条件を満たせばホールドが記録されます。
Q3:同点の場面でもホールドは付きますか?
A3:NPBでは付きます。同点で登板し、1アウト以上を取り、登板後から前任投手の残した走者を含めて無失点に抑えるなど、所定の条件を満たす必要があります。これはMLBとの大きな違いです。
Q4:ホールドとセーブを同じ投手が同じ試合で獲得できますか?
A4:同じ試合で同一投手がホールドとセーブを両方獲得することはありません。ホールドは次の投手にリードを引き継ぐ記録で、セーブは試合を最後まで締めくくる記録だからです。
Q5:ホールド要点はどう計算しますか?
A5:ホールド要点は「ホールド数+救援勝利数」です。例えば、30ホールドと5救援勝利なら35HPになります。NPBの最優秀中継ぎ投手賞の選考に使用されます。
Q6:NPB歴代最多ホールド記録を持つ選手は誰ですか?
A6:2026年シーズン終了時点では、北海道日本ハムの宮西尚生投手が424ホールドで歴代1位です。2位は山口鉄也氏の273ホールド、3位は浅尾拓也氏の200ホールドです。
Q7:ホールドが多い投手は優秀な投手ですか?
A7:中継ぎ投手として重要な場面を任され、結果を残していることを示す一つの指標です。ただし、実力を判断するには防御率、WHIP、登板数、投球回、救援勝利なども合わせて確認する必要があります。
まとめ:ホールドの仕組みを知ればプロ野球観戦がもっと面白くなる
野球のホールドとは、中継ぎ投手が試合の重要な局面でリードを維持し、次の投手につないだ働きを評価する記録です。
覚えておきたい要点は次のとおりです。
- ホールドは主に中継ぎ投手に記録される。
- 登板時の状況と1アウト以上の記録が成立のポイントになる。
- NPBでは同点時にも特別な条件でホールドが認められる。
- セーブは試合を締めくくる記録、ホールドは次の投手につなぐ記録。
- ホールド要点はホールド数と救援勝利数の合計。
- 最優秀中継ぎ投手賞はホールドポイントを基準に選ばれる。
2026年はセ・リーグで田中瑛斗投手が42ホールド、パ・リーグでは椋木蓮投手と鈴木昭汰投手が33ホールドを記録しました。
そして、歴代通算最多は宮西尚生投手の424ホールドです。
プロ野球では、先発投手や抑え投手だけでなく、試合の勝敗を左右する中継ぎ投手の存在も欠かせません。
次に試合を見るときは、7回や8回の継投にも注目してみてください。ホールドという数字の意味が分かると、普段は見過ごしがちな救援投手の仕事や、監督の継投策まで、より深く楽しめるようになります。