献血できない人には、年齢や体重が基準に達していない人だけでなく、貧血が疑われる人、薬を服用している人、発熱や歯科治療の直後にある人なども含まれます。ただし、一度献血を断られたからといって、今後ずっと献血できないとは限りません。体調の回復や一定期間の経過によって、再び献血できるケースもあります。
2026年10月には、日本赤十字社の献血基準に重要な変更がありました。これまで変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)対策として設けられていた欧州などの滞在歴による制限が撤廃され、ヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤の使用歴についても、最終使用日から3か月が経過すれば献血できる取り扱いに変わっています。年齢・体重の基本条件から、服薬や持病による制限、献血再開の目安まで、日本赤十字社と厚生労働省の公表情報を基に整理します。
【この記事の重要ポイントまとめ】
- 年齢・体重:200mL献血は16歳から、400mL献血は男性17歳・女性18歳から。400mL献血は男女とも体重50kg以上が条件です。
- 一時的な制限:発熱、服薬、出血を伴う歯科治療、予防接種、海外渡航などは、症状や処置の種類に応じて献血できない期間があります。
- 2026年10月の変更:欧州などの特定の滞在歴による制限は撤廃され、プラセンタ注射剤は最終使用日から3か月経過後に献血可能となりました。
【献血できない人】年齢・体重・貧血の基準を確認
献血できるかどうかは、年齢や体重だけで決まるわけではありません。血圧、脈拍、体温、血色素量(ヘモグロビン濃度)なども確認されます。日本赤十字社が公表する献血基準では、採血方法によって年齢や体重の条件が異なります。
献血方法別の年齢・体重の条件
| 献血の種類 | 年齢 | 体重 | 主な血色素量の基準 |
|---|---|---|---|
| 200mL全血献血 | 16~69歳 | 男性45kg以上、女性40kg以上 | 男性12.5g/dL以上、女性12.0g/dL以上 |
| 400mL全血献血 | 男性17~69歳、女性18~69歳 | 男女とも50kg以上 | 男性13.0g/dL以上、女性12.5g/dL以上 |
| 血漿成分献血 | 18~69歳 | 男性45kg以上、女性40kg以上 | 原則12.0g/dL以上。所定の赤血球指数を満たす女性は11.5g/dL以上 |
| 血小板成分献血 | 男性18~69歳、女性18~54歳 | 男性45kg以上、女性40kg以上 | 12.0g/dL以上 |
※65~69歳の人が献血するには、60歳に達した日から65歳に達する日の前日までの間に献血経験があることが必要です。血色素量の基準は採血前の検査で確認され、ほかの条件も含めて医師が総合的に判断します。
体重が足りないと献血できない理由
献血では、採血する人自身の健康を守るため、体重に応じた採血量の基準が設けられています。特に400mL献血は男女とも50kg以上が必要です。体重が基準に達していない場合は、200mL献血や成分献血の条件を満たすか確認する余地はありますが、本人の希望だけで採血方法を変更できるわけではありません。
また、年齢と体重の条件を満たしていても、血圧や体温などの検査結果によっては献血できないことがあります。日本赤十字社の基準では、最高血圧は90mmHg以上180mmHg未満、最低血圧は50mmHg以上110mmHg未満、脈拍は毎分40~100回、体温は37.5℃未満が目安です。
貧血の人は献血できない?
貧血がある人や、採血前の検査で血色素量が基準を下回った人は、原則としてその日の献血を見送ります。貧血の状態で血液を採取すると、本人の体調に悪影響が及ぶおそれがあるためです。
重要なのは、日常生活で貧血の症状を感じるかどうかだけでは判断できない点です。立ちくらみや疲れやすさがなくても、血色素量が基準に達していなければ献血できないことがあります。反対に、過去に貧血を指摘された人でも、現在の状態や治療歴などによって判断が異なる場合があります。
鉄剤や貧血治療薬を服用している場合も、薬の種類だけでなく、治療の目的や現在の状態を確認する必要があります。献血をするために自己判断で薬を中断するのではなく、治療を優先し、献血会場の医師や血液センターに相談してください。
【服薬・持病】薬を飲んでいる人や慢性疾患がある人の条件
「薬を飲んでいる人は献血できない」という理解は正確ではありません。日本赤十字社によると、服薬中でも献血できる薬がある一方、薬の種類や治療中の病気、症状によって献血を見合わせる場合があります。
献血当日に服用していても可能な場合がある薬
日本赤十字社の「献血についてのよくある質問」では、本人の健康状態などに問題がなければ、次のような薬は献血できる場合があると案内されています。
- ビタミン剤・ミネラル剤などの健康増進目的のサプリメント
- 一般的な胃腸薬や抗潰瘍薬
- 血圧が適切にコントロールされている場合の降圧薬
- 一部の高脂血症治療薬やアレルギー治療薬
- 一部の漢方薬
- 条件を満たす低用量ピルや女性ホルモン製剤
- 感染症を伴わない場合などの点眼薬、点鼻薬、塗り薬、貼り薬
ただし、同じ分類の薬でも、成分や服用目的、治療中の病気によって判断が変わります。例えば、貧血治療中のビタミン剤や、感染症の症状がある場合の胃腸薬などは、通常の健康増進目的の服薬と同じ扱いにはなりません。
抗生物質・風邪薬・鎮痛薬は注意が必要
抗生物質などの抗菌薬、抗ウイルス薬、風邪薬、解熱鎮痛薬については、薬の種類、使用目的、症状、服用時期によって献血を延期する場合があります。感染症そのものが問題となるケースもあるため、薬を飲んだ日だけでなく、症状が治まっているかどうかも重要です。
また、薬を飲んでいることを理由に、献血のために処方薬を勝手に中止するのは避けてください。日本赤十字社の献血基準に関するチャットボットも、治療薬の中止を献血目的で行わないよう注意を促しています。薬の名前と最終服用日を控え、献血予定の血液センターに確認するのが確実です。
持病があると献血できない?
持病のある人は、病名だけで一律に判断できるわけではありません。病気の種類、症状の安定性、治療内容、使用薬剤、採血による影響などを踏まえて判定されます。
一方、日本赤十字社が献血を遠慮するよう案内している病気には、心筋梗塞や狭心症などの心臓病、治療中の悪性腫瘍、一定期間を経過していないがんの治療歴、白血病などの造血器腫瘍、再生不良性貧血、出血性疾患、脳卒中、けいれん性疾患などがあります。重症のぜんそく症状がある場合や、梅毒の既往がある場合なども制限の対象です。
ただし、病気によっては治療状況や経過によって取り扱いが異なります。「持病があるから絶対に無理」「症状がないから必ず可能」と自己判断せず、病名と治療歴を具体的に伝えて確認してください。
【一時的に献血できない人】発熱・歯科治療・予防接種・生理の目安
献血できない理由の中には、一定期間が過ぎたり、体調が回復したりすれば再び協力できるものがあります。代表的なのが、発熱、歯科治療、予防接種、海外渡航、体調不良などです。
発熱や睡眠不足、体調不良
日本赤十字社は、献血当日の体調が悪い人や、発熱している人には献血を控えるよう案内しています。目安として、37.5℃以上の発熱がある場合は献血を遠慮します。
また、過度の空腹や睡眠不足がある場合も、採血中に気分が悪くなるなどのリスクを考慮して見合わせることがあります。熱が下がった後も、原因となった病気や残っている症状によっては、すぐに献血できるとは限りません。
歯科治療後は何日空ければいい?
抜歯や歯石除去など、出血を伴う歯科治療を受けた場合は、治療日を含む3日間は献血を控える必要があります。口の中にいる細菌が血液中に移行し、菌血症を引き起こす可能性があるためです。
例えば、月曜日に出血を伴う治療を受けた場合、月曜日・火曜日・水曜日は献血を控え、木曜日以降に再開できるか確認することになります。治療後の感染や痛み、服薬などがある場合は、さらに延期が必要になることもあります。
一方、出血を伴わない歯科検診、歯列矯正、詰め物の治療などは、原則として献血できる場合があります。治療内容や症状によって判断が異なるため、歯科治療を受けたことを問診で伝えてください。
予防接種後の献血制限はワクチンの種類で異なる
予防接種後に献血できるようになるまでの期間は、ワクチンの種類によって異なります。日本赤十字社の公表基準では、代表例として次のような取り扱いがあります。
- インフルエンザなどの不活化ワクチン:接種後24時間以内は献血を控える
- 新型コロナウイルスのRNAワクチン(mRNAワクチンを含む):接種後48時間以内は献血を控える
- 新型コロナウイルスの組換えタンパク質ワクチン:接種後24時間以内は献血を控える
- 新型コロナウイルスのウイルスベクターワクチン:接種後6週間以内は献血を控える
これらは代表例であり、すべてのワクチンに同じ期間が適用されるわけではありません。接種後に発熱などの症状が残っている場合は、期間を経過していても献血を控える必要があります。アナフィラキシーショックなどの重い症状が起きた場合は、症状出現後1年間、献血を控える取り扱いです。接種したワクチンの製品名と接種日を確認し、最新の基準を照会してください。
生理中は献血できない?
生理中という理由だけで、すべての人が一律に献血できないわけではありません。ただし、生理痛が強い、出血量が多い、めまいや倦怠感がある、貧血が疑われるといった場合は、体調を優先して献血を見合わせるのが適切です。
献血前には血色素量の検査が行われるため、本人が元気だと感じていても、基準を満たさなければ採血できません。また、生理痛のために鎮痛薬を服用した場合は、薬の種類や服用時期によって判断が変わる可能性があります。体調と服薬状況の両方を問診で伝えましょう。
【2026年10月の重要変更】欧州などの滞在歴とプラセンタ注射はどう変わった?
2026年10月1日、日本赤十字社は変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)対策として設けていた献血制限の一部を見直しました。これまで海外滞在歴やプラセンタ注射剤の使用歴によって献血を控えていた人にとって、重要な変更です。
欧州などの特定の滞在歴による献血制限を撤廃
従来は、英国を含む欧州などの特定の国や地域に一定期間滞在した人について、vCJDの感染リスクを考慮して献血を制限していました。厚生労働省の公表資料によると、国内外のvCJDの発生状況、国内の感染リスク評価、諸外国の献血制限などを総合的に検討した結果、この制限を撤廃する方針となりました。
日本赤十字社は2026年10月1日の献血受付分から、新しい基準の運用を開始しています。これにより、従来は特定の欧州滞在歴を理由に献血できなかった人も、ほかの基準を満たせば献血できるようになりました。
ただし、これは海外渡航に関するすべての制限がなくなったという意味ではありません。海外から帰国した人には、感染症対策として帰国日・入国日当日から4週間以内は献血を控える基準が引き続き適用されます。渡航先によっては、マラリアなどの感染症リスクを理由に、さらに長い制限が設けられています。
プラセンタ注射後は3か月で献血可能に
2026年10月1日から、国内承認のヒト胎盤エキス(プラセンタ)注射剤「ラエンネック」「メルスモン」の使用歴がある人についても、献血基準が変更されました。従来は使用歴がある場合、期間を定めずに献血を遠慮する取り扱いでしたが、改定後は最終使用日から3か月間は献血を控え、3か月経過後は献血可能となりました。
ただし、プラセンタに関連する製品ならすべて同じ扱いになるわけではありません。プラセンタを含むサプリメント、ドリンク、化粧品などは、これまでどおり使用していても献血できる場合があります。一方、美容目的で使用されるヒト幹細胞培養上清液や、胎盤由来コラーゲン製剤などは今回の変更の対象外で、従来どおり献血を控える必要があります。
注射を受けたことがある人は、製品名と最終使用日を確認し、受付時の問診で正確に申告してください。今回の変更によって献血可能となる場合でも、服薬や持病、当日の体調など、ほかの条件が優先されることがあります。
【妊娠・授乳・海外渡航】献血を再開できる時期と注意点
妊娠・出産に関する制限や海外渡航後の制限は、本人の体調だけでは判断できない場合があります。一定期間を経過することが必要なケースと、渡航先や過去の病歴によって個別の確認が必要なケースを区別することが大切です。
妊娠中・授乳中はいつから献血できる?
日本赤十字社では、妊娠中の人と、出産または流産後6か月を経過していない人は献血を控えるよう案内しています。また、出産後6か月を経過していても、出産後1年以内で母乳を授乳中の人は献血できません。
したがって、出産後6か月を過ぎただけで必ず献血できるわけではありません。授乳状況や体調などの条件も確認する必要があります。妊娠・出産後は鉄分の不足や貧血が起きることもあるため、再開を考える際は自分の体調を優先してください。
海外渡航後は原則4週間、地域によってはさらに長い制限も
海外から帰国した人は、原則として帰国日・入国日当日から4週間以内の献血を控える必要があります。帰国後に感染症を発症している可能性を考慮し、輸血を受ける患者への感染リスクを低減するためです。
この4週間という基準は、欧州などの特定の滞在歴による制限撤廃後も継続しています。加えて、マラリア流行地域への渡航では、一般的な帰国後4週間とは別の制限が適用される場合があります。日本赤十字社の案内では、マラリア流行地への旅行者は原則として帰国後1年間、流行地に居住または長期滞在した人は帰国後3年間、献血を控える扱いです。感染リスクがないと医師が判断できる場合などには例外もあります。
海外渡航後に献血を希望する場合は、渡航先の国・地域、滞在期間、帰国日、滞在中の病気や症状を整理しておくと、確認がスムーズです。渡航先によって基準が異なるため、帰国後4週間が過ぎたことだけを理由に自己判断しないようにしましょう。
【献血を断られたら】再開の判断と当日までにできる準備
献血会場で断られた場合、最初に確認したいのは「永久的な制限なのか」「一定期間だけの延期なのか」という点です。発熱や歯科治療、予防接種、海外渡航などは、所定の期間が経過し、体調などの条件を満たせば再び献血できる可能性があります。一方、特定の病気や治療歴による制限は、単に日数が経過しただけでは解除されないことがあります。
再開時期を判断するために確認したいこと
- 体調:発熱、感染症の症状、強い倦怠感などが残っていないか。
- 薬:薬の名前、服用目的、最終服用日、注射や点滴を受けた日。
- 治療歴:歯科治療の内容、出血の有無、手術や病気の経過。
- 渡航歴:訪問した国・地域、滞在期間、帰国日、渡航中の症状。
- 特別な制限:プラセンタ注射の最終使用日、予防接種の種類と接種日。
これらの情報を整理したうえで、日本赤十字社の献血基準に関するチャットボットや各都道府県の血液センターに相談すると、再開時期の目安を確認できます。ただし、チャットボットの回答は参考情報であり、最終的な献血の可否は、当日の問診や検査結果を踏まえて健診医が判断します。
献血前に避けたい自己判断
献血できるかどうかを調べる際には、薬を勝手に中断したり、症状を隠して問診に答えたりしないことが大切です。献血する人の安全だけでなく、輸血を受ける患者の安全にも関わるため、服薬や病歴、海外渡航歴などは正確に申告する必要があります。
また、年齢や体重の基準を満たしていることだけで、必ず献血できるとは限りません。血色素量や体調などを含めた確認が必要です。基準に達しなかった場合は、その日の献血を無理に行おうとせず、次に確認すべき条件や時期を聞いておくとよいでしょう。
【献血できない人】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:薬を飲んでいても献血できますか?
A1:薬の種類や服用目的、治療中の病気によって異なります。ビタミン剤、一般的な胃腸薬、一部の降圧薬などは、条件を満たせば服用中でも献血できる場合があります。抗菌薬や風邪薬などは、症状や服用時期によって延期が必要です。薬を自己判断で中止せず、薬の名前を伝えて確認してください。
Q2:海外から帰国して4週間が経過すれば、必ず献血できますか?
A2:必ずできるとは限りません。帰国後4週間の制限に加え、渡航先や滞在期間によっては、マラリアなどの感染症対策による長期の制限が適用される場合があります。2026年10月に欧州などの特定の滞在歴による制限は撤廃されましたが、ほかの渡航関連基準は継続しています。
Q3:プラセンタ注射を受けた人は、いつから献血できますか?
A3:2026年10月1日以降、対象となるヒト胎盤エキス注射剤は、最終使用日から3か月が経過すれば献血できる取り扱いになりました。ただし、ヒト幹細胞培養上清液や胎盤由来コラーゲン製剤など、今回の変更の対象外となる製品もあります。使用した製品名と最終使用日を確認し、受付時に申告してください。
まとめ:献血できない理由を確認し、安全に再開するための判断基準
献血できない人には、年齢・体重・血色素量などの基本基準を満たしていない人のほか、服薬中の人、持病がある人、発熱や歯科治療の直後にある人、妊娠・出産後の一定期間にある人、海外渡航後の制限に該当する人などがいます。ただし、すべての条件が永久的な制限というわけではありません。
2026年10月1日からは、欧州などの特定の滞在歴による献血制限が撤廃され、対象となるプラセンタ注射剤についても最終使用日から3か月経過後に献血できるようになりました。一方、海外からの帰国後4週間の制限や、薬・持病・予防接種などに関する基準は引き続き適用されます。
【プロの結論】献血できるかどうかを判断する際は、「献血できない」という結果だけで終わらせず、その理由と再開条件を確認することが大切です。年齢や体重の基準を満たしていても、当日の検査や問診で延期となる場合があります。反対に、一時的な制限であれば、必要な期間を経過した後に再び協力できる可能性があります。
日本赤十字社の最新の献血基準を確認し、服薬・治療歴・渡航歴などを正確に申告したうえで、当日の健診医の判断に従いましょう。無理をして献血するのではなく、自分と輸血を受ける患者の安全を守ることが、献血への確かな協力につながります。