献血できない人の条件は、年齢や体重だけではありません。貧血によるヘモグロビン値の不足、血圧、服用中の薬、持病や過去の病歴、妊娠・授乳、予防接種後の経過、海外渡航歴など、さまざまな条件によって献血を見合わせる場合があります。
2026年10月27日時点の日本赤十字社の基準では、献血する人の健康と輸血を受ける患者の安全を守るため、採血基準と問診による確認が行われています。また、2026年10月1日には、英国を含む欧州などの滞在歴に基づく献血制限が撤廃され、プラセンタ注射剤に関する基準も変更されました。年齢や健康状態による基本条件と、一時的に献血できないケースを分けて確認することが大切です。
【この記事の重要ポイントまとめ】
- 基本条件:献血の年齢・体重・ヘモグロビン・血圧には、採血方法ごとに異なる基準がある。
- 一時的な制限:服薬、発熱、予防接種、歯科治療、妊娠・出産、海外渡航などは、状況や経過期間によって献血を見合わせる場合がある。
- 2026年の変更点:10月1日から欧州などの滞在歴による制限が撤廃された一方、海外からの帰国後4週間以内など、別の感染症対策は引き続き適用される。
【まず確認】献血できない人は「一時的な見送り」と「継続的な制限」に分かれる
献血できない理由を理解するうえで、最初に押さえたいのは、すべての制限が同じではないという点です。日本赤十字社は、国が定める採血基準に加え、当日の健康状態や病歴、服薬内容などを確認して献血の可否を判断しています。
大きく分けると、次の3つのケースがあります。
- 当日の体調による見送り:発熱、体調不良、過度の空腹、睡眠不足など。
- 一定期間の献血制限:海外渡航後、予防接種後、出血を伴う歯科治療後、妊娠・出産後など。
- 病歴や感染リスクなどによる継続的な制限:特定の心臓病、血液疾患、輸血歴・臓器移植歴など。
一時的な見送りであれば、必要な期間が経過し、体調やその他の条件を満たせば、再び献血できる可能性があります。一方、特定の病気や既往歴などは、症状が改善していても献血を遠慮するよう求められる場合があります。
ただし、病名だけで一律に判断できるとは限りません。日本赤十字社も、疾患や治療状況、薬の種類などを踏まえて、当日の健診医が総合的に判定すると説明しています。「以前に献血を断られたから、今後もずっとできない」と決めつけず、理由と適用期間を確認が必要です。
【2026年最新】献血の年齢・体重・ヘモグロビン・血圧の基準一覧
献血の年齢制限や体重制限は、200mL全血献血、400mL全血献血、血漿成分献血、血小板成分献血のどれを選ぶかによって異なります。年齢や体重の条件を満たしていても、血液検査や問診の結果によって献血できない場合があります。
以下は、日本赤十字社の献血基準および厚生労働省の採血基準資料に基づく、主な基準の一覧です。
| 項目 | 200mL全血献血 | 400mL全血献血 | 血漿成分献血 | 血小板成分献血 |
|---|---|---|---|---|
| 年齢 | 16~69歳 | 男性17~69歳、女性18~69歳 | 18~69歳 | 男性18~69歳、女性18~54歳 |
| 体重 | 男性45kg以上、女性40kg以上 | 男女とも50kg以上 | 男性45kg以上、女性40kg以上 | 男性45kg以上、女性40kg以上 |
| ヘモグロビン濃度 | 男性12.5g/dL以上、女性12.0g/dL以上 | 男性13.0g/dL以上、女性12.5g/dL以上 | 原則12.0g/dL以上。赤血球指数が標準域にある女性は11.5g/dL以上 | 12.0g/dL以上 |
| 血圧 | 最高血圧90mmHg以上180mmHg未満、最低血圧50mmHg以上110mmHg未満 | |||
| 脈拍・体温 | 脈拍40~100回/分、体温37.5℃未満 | |||
| 血小板数 | 対象外 | 対象外 | 対象外 | 15万/μL以上60万/μL以下 |
※65~69歳の人が献血するには、60歳に達した日から65歳に達する日の前日までの間に献血経験があることが条件です。年齢は献血方法によって異なり、特に血小板成分献血は女性54歳までとなっています。実際の献血可否は当日の健診医が判断します。
年齢制限は何歳から何歳まで?
200mL献血は16歳から可能です。400mL献血は男性17歳、女性18歳から、成分献血は18歳から受け付けています。上限は原則69歳ですが、血小板成分献血では女性の上限が54歳です。
65歳を超えていても、60~64歳の間に献血経験があれば、基準を満たすことで献血できる可能性があります。年齢だけで一律に諦めるのではなく、献血方法と過去の献血歴を確認しましょう。
体重が足りないと献血できない?
400mL全血献血では、男女とも体重50kg以上が条件です。200mL全血献血や成分献血では、男性45kg以上、女性40kg以上が基本的な体重基準となります。
体重の条件は、採血による身体への負担を考慮したものです。400mL献血の条件に届かなくても、別の献血方法の基準を満たす可能性はあります。ただし、採血方法の変更が可能かどうかは、当日の条件や医師の判断によります。
貧血やヘモグロビン不足で断られる理由
献血前には、血色素量とも呼ばれるヘモグロビン濃度を測定します。ヘモグロビンは赤血球に含まれ、全身へ酸素を運ぶ役割を担っています。基準値を下回る場合は、献血する人の健康を守るため採血できません。
貧血の自覚症状がなくても、検査値が基準に届かなければ見送りになることがあります。また、女性は月経や鉄不足などの影響でヘモグロビン値が変動することもあります。献血会場で基準未満と判定された場合は、無理に献血しようとせず、必要に応じて医療機関で原因を確認してください。
血圧についても、普段の健康診断で正常とされていても、当日の測定値が基準外であれば献血を見合わせる場合があります。高血圧や低血圧の診断歴がある人は、服用薬や普段の血圧の状態も含めて問診で伝えましょう。
【薬・持病・既往歴】薬を飲んでいる人は献血できる?
薬を飲んでいる人が、すべて献血できないわけではありません。日本赤十字社の公式FAQでは、ビタミン剤、一般的な胃腸薬、血圧がほぼ正常域に管理されている場合の降圧薬など、服用中でも原則として献血に協力できる薬が紹介されています。
一方、薬の種類だけでなく、服用目的、病気の状態、症状、副作用などによって判断が変わります。市販薬や外用薬、点眼薬、点鼻薬であっても、内容によっては献血を見合わせる場合があります。
服薬中でも献血できる場合がある薬
- 健康維持を目的とするビタミン剤やミネラル剤などのサプリメント。ただし、貧血の治療中などは別途判断されます。
- 一般的な胃腸薬。
- 血圧が適切に管理されている場合の降圧薬。
- 一部のアレルギー治療薬や脂質異常症の治療薬。
- 症状や治療目的などの条件を満たす一部の漢方薬。
- 少量の女性ホルモン剤や避妊目的のピルなど、基準上認められる薬。
これらは、服用していれば必ず献血できるという意味ではありません。例えば、アレルギー治療薬を飲んでいても、症状が強い場合や喘息の治療中などは別の判断になることがあります。
献血するために自己判断で薬を中断するのは避けてください。治療を優先し、薬の名前、服用量、服用目的、最後に飲んだ日時を確認したうえで、献血会場の医師に相談することが大切です。
持病や過去の病歴によって制限されるケース
日本赤十字社が献血を遠慮するよう案内している病気には、心筋梗塞や狭心症、治療を必要とする不整脈、特定の血液疾患、けいれん性疾患、脳卒中、一過性脳虚血発作などがあります。
悪性腫瘍については、治療中の人や治癒後5年を経過していない人は献血を遠慮するよう求められています。造血器腫瘍については、経過が良好でも献血を遠慮する扱いです。梅毒の既往歴がある人も、治癒している場合を含めて献血を遠慮する対象とされています。
また、喘息の症状がある人や発作を繰り返す人、重症貧血の既往がある人なども制限の対象になります。病気の種類によっては、治療が終わったかどうかだけでなく、再発の可能性や採血による身体への影響が考慮されます。
輸血歴・臓器移植歴がある場合は?
日本赤十字社は、過去に輸血や臓器移植を受けたことがある人について、現在の検査法では検出できない未知のウイルス感染の可能性を考慮し、献血を遠慮するよう案内しています。これは、輸血歴や移植歴がある人が現在感染症にかかっていると意味するものではありません。
HIVや肝炎などのウイルス保有者、感染が疑われる人についても、患者への感染を防ぐ観点から献血できない場合があります。献血は感染症検査の代わりにはならず、HIV検査を目的とした献血は認められていません。
病歴や服薬に不安がある人は、自己判断で病名だけをもとに可否を決めず、日本赤十字社の献血基準案内や薬・既往歴に関する確認サービスを利用し、最終的には健診医に相談してください。
【妊娠・予防接種・海外渡航】一時的に献血できない主なケース
年齢や体重、血圧などの条件を満たしていても、直近の生活状況や医療行為によって献血を見合わせることがあります。代表的なケースと、確認しておきたい期間をまとめます。
妊娠中・出産後・授乳中
日本赤十字社は、妊娠中の人、出産・流産後6カ月を経過していない人からの献血を遠慮するよう案内しています。また、出産後6カ月を過ぎていても、出産後1年以内で母乳を授乳中の人は献血できません。
妊娠・出産に伴う身体への負担や、鉄分などの回復を考慮した制限です。出産後の経過期間だけでなく、授乳しているかどうかも確認してください。
予防接種を受けた直後
予防接種後の献血制限は、ワクチンの種類によって異なります。日本赤十字社の案内では、インフルエンザワクチンは接種後24時間以上が経過し、発熱などの症状がなければ献血に協力できる場合があります。
一方、ほかのワクチンは接種後に必要な期間が異なり、一定期間の延期が必要なものもあります。接種後に症状が残っている場合は献血を控え、アナフィラキシーショックなどの重い症状が起きた場合には、症状出現後1年間は献血を控える基準があります。
接種したワクチンの名称と接種日を確認し、現在の基準に照らして判断しましょう。ワクチンの種類が分からない場合は、接種を受けた医療機関や献血会場で確認してください。
海外旅行・海外生活の経験がある
海外から帰国した人は、原則として帰国日・入国日当日から4週間以内の献血を遠慮するよう求められています。これは、海外で感染症にかかった可能性を考慮し、輸血を受ける患者への感染リスクを軽減するためです。
加えて、マラリア流行地を旅行した場合は原則として帰国後1年間、流行地に1年を超えて長期滞在した場合は帰国後3年間、献血を遠慮する基準があります。地域や滞在状況によっては、別の条件が適用されることもあります。
海外渡航歴については、渡航先だけでなく、滞在期間、帰国日、現地での活動内容などが判断材料になります。短い旅行でも、帰国直後は献血を控え、問診で正確に申告してください。
歯科治療・発熱・体調不良など
一時的に献血できない主なケースには、次のようなものがあります。
- 発熱:37.5℃以上の発熱がある場合は、原則として献血を遠慮します。
- 空腹や睡眠不足:過度の空腹や睡眠不足がある場合は、体調への影響を考慮して見送ることがあります。
- 出血を伴う歯科治療:抜歯や歯石除去などを受けた場合、治療日を含む3日間は献血を遠慮します。
- 新型コロナウイルス感染症:日本赤十字社の基準では、症状消失後、または無症状の場合は陽性検査の検体採取日から2週間が経過するまで献血を遠慮します。
- ピアスや刺青:実施状況などに応じて一定期間の献血制限があります。具体的な期間は日本赤十字社の最新案内で確認が必要です。
いずれも、一定期間が経過すれば必ず献血できるというわけではありません。症状が残っている場合や、別の病気・服薬上の条件がある場合は、引き続き献血を見合わせることがあります。
【2026年10月改定】海外滞在歴とプラセンタ注射の献血基準はどう変わった?
2026年の重要な変更点が、英国を含む欧州などの滞在歴に基づく献血制限の撤廃です。日本赤十字社は2026年9月14日に変更を発表し、10月1日から新しい基準の運用を開始しました。
従来の制限は、英国を中心とした牛海綿状脳症(BSE)の流行と、輸血による変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の伝播リスクを踏まえた予防的措置でした。厚生労働省の薬事審議会における2026年1月14日の検討では、国内外の発生状況、感染リスク評価、諸外国の基準などを踏まえ、制限を撤廃する方針が示されました。
欧州に滞在した経験があっても献血できる?
2026年10月1日以降、vCJD対策として実施されてきた、欧州などの滞在歴だけを理由とする献血制限は撤廃されています。以前は対象地域・期間の滞在歴によって献血できなかった人も、滞在歴だけを理由に一律に制限されることはなくなりました。
ただし、海外からの帰国後4週間以内の献血制限は引き続き適用されます。マラリアなど、渡航先や滞在状況に応じた感染症対策も別に存在します。「欧州滞在歴の制限がなくなったから、帰国直後でも献血できる」という理解は誤りです。
プラセンタ注射を受けた人の献血制限
ヒト胎盤エキスを含む国内承認の注射剤「ラエンネック」「メルスモン」についても、2026年10月1日から基準が変更されました。従来は使用歴がある人に期間を定めない制限がありましたが、変更後は最終使用日から3カ月が経過すれば、献血に協力できる可能性があります。
ただし、美容関連で使用されるヒト幹細胞培養上清液や、胎盤由来コラーゲン製剤などは別扱いで、引き続き献血を遠慮する対象です。また、プラセンタを含むサプリメント、ドリンク、化粧品などは、注射剤とは異なる扱いです。
この改定は、献血基準が固定されたものではなく、感染症の発生状況や科学的なリスク評価などに応じて見直されることを示しています。過去に献血を断られた経験がある人は、以前の説明だけで判断せず、現在の基準を確認することが大切です。
【献血前のチェック】問診で伝えることと当日の準備
献血前の問診は、形式的な手続きではありません。日本赤十字社は、献血者の健康を守るとともに、輸血を受ける患者に安全な血液を届けるため、健康状態や感染症のリスクなどを確認しています。
特に、感染直後などの検査では検出できない期間が存在するため、問診は血液検査だけでは補えない重要な役割を担っています。質問に正確に回答し、病歴や服薬、渡航歴を隠さず申告することが大切です。
献血前に確認したいチェックリスト
- 年齢、体重が希望する献血方法の基準を満たしているか。
- 最近、発熱や体調不良、強い疲労、睡眠不足がないか。
- 現在飲んでいる処方薬、市販薬、サプリメントの名称が分かるか。
- 持病、過去の大きな病気、手術、輸血、臓器移植などの経験を整理できているか。
- 予防接種を受けた日、歯科治療を受けた日を確認できているか。
- 海外旅行や海外生活の時期、帰国日、滞在地域を説明できるか。
- 妊娠・出産・授乳などに関する条件に該当しないか。
献血会場では、体重、血圧・脈拍、体温、ヘモグロビン濃度などを確認します。基準を満たさない場合や、問診で安全性に懸念がある場合には、当日献血を希望していても見送ることがあります。
献血前に食事と水分補給を忘れずに
過度の空腹や睡眠不足は、献血中の体調不良につながる可能性があります。献血前には食事を取り、水分を補給し、十分な休息を確保してください。体調に不安がある場合は、無理に献血を実施しないことが大切です。
また、献血後は十分に休憩し、激しい運動などを避ける必要があります。日本赤十字社は、献血前後の注意事項や体調不良時の対応についても案内しています。
問診や検査で献血できないと判断されても、それは献血者として不適格だという意味ではありません。安全に採血できる状態かどうかを、その日の状況も含めて判断した結果です。一定期間後に再び協力できる場合もあるため、見送りの理由や次回の目安を確認しておくとよいでしょう。
【献血できない人】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:献血できない人は、一生献血できないのですか? A1:一生できないとは限りません。発熱、睡眠不足、予防接種後、海外渡航後などは、必要な期間が経過し、ほかの条件を満たせば献血できる場合があります。一方、特定の病気や輸血歴・臓器移植歴などは、継続的な制限の対象となることがあります。
Q2:貧血気味でも献血できますか? A2:献血前のヘモグロビン検査で基準を満たせば、献血できる可能性はあります。ただし、自覚症状がなくても検査値が基準未満なら採血できません。貧血の治療中や原因が分からない場合は、献血のために治療を中断せず、医療機関に相談してください。
Q3:薬を飲んでいると献血できませんか? A3:薬を飲んでいても献血できる場合があります。ビタミン剤や一般的な胃腸薬、条件を満たす降圧薬などは、服用中でも原則として協力できるものとして案内されています。ただし、薬の種類、服用目的、病気の状態などによって判断が異なるため、薬の名称を伝えて確認してください。
Q4:海外旅行から帰国したら、いつから献血できますか? A4:原則として帰国日・入国日当日から4週間が経過するまでは献血を遠慮するよう求められています。ただし、マラリア流行地などへの渡航では、さらに長い制限期間が適用される場合があります。2026年10月1日から欧州などの滞在歴によるvCJD対策の制限は撤廃されましたが、帰国後の一般的な制限は継続しています。
Q5:妊娠中や授乳中でも献血できますか? A5:妊娠中は献血できません。また、出産・流産後6カ月以内も献血を遠慮する対象です。出産後6カ月を経過していても、出産後1年以内で母乳を授乳中の場合は献血できません。
まとめ:【プロの結論】献血できない人の判断基準と次の一歩
献血できない人の条件は、年齢や体重だけでなく、ヘモグロビン濃度、血圧、服薬、持病、既往歴、妊娠・授乳、予防接種、海外渡航歴など多岐にわたります。日本赤十字社の基準は、献血する人の健康と、輸血を必要とする患者の安全を両立させるために設けられています。
判断に迷ったときは、次の3点を基準にしてください。
- 採血基準を確認する:年齢、体重、ヘモグロビン、血圧などが希望する献血方法の条件を満たしているか確認する。
- 一時的な制限かどうかを確認する:薬、予防接種、海外渡航、歯科治療などは、状況と経過期間によって再び献血できる場合がある。
- 問診で正確に申告する:持病や過去の病気、薬の使用歴などを隠さず伝え、最終的な判断を健診医に委ねる。
2026年10月には、欧州などの滞在歴とプラセンタ注射剤に関する献血基準が見直されました。過去に制限の対象だった人も、現在の基準では状況が変わっている可能性があります。
大切なのは、献血できるかどうかを自己判断だけで決めないことです。日本赤十字社の最新の献血基準と「献血をご遠慮いただく場合」の案内を確認し、不明点があれば献血会場で相談しましょう。安全に協力できるタイミングを知ることが、献血する人と輸血を受ける人の双方を守ることにつながります。