マイナンバーカードの返納率は、2026年10月現在、全国一律の確定した数字として公表されていません。2026年5月15日に公表された会計検査院の調査報告では、2016年1月の交付開始から2025年7月末までに「本人希望・その他」の理由で廃止されたカードが93万枚を超えていたことが明らかになりました。ただし、この数字には自主返納以外の理由による廃止も含まれており、93万枚すべてが制度への不信感などを理由に返納されたわけではありません。
では、実際に何人が自主返納したのでしょうか。マイナンバーカード返納率の計算方法、情報ひも付け誤りとの関係、マイナ保険証や公金受取口座への影響まで、会計検査院・総務省・デジタル庁などの公表資料を基に整理します。
【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:2025年7月末までのカード廃止枚数は約1,623万枚、「本人希望・その他」は93万枚超。ただし自主返納だけの件数は不明。
- 要点2:2023年5~8月ごろに廃止枚数が多くなり、会計検査院は情報ひも付け誤りの公表などが自主返納に影響した可能性を指摘。
- 要点3:カードの返納とマイナ保険証の利用登録解除、公金受取口座の登録抹消は別の手続き・統計として区別する必要がある。
【2026年最新】マイナンバーカード返納率は何%?93万枚の正しい意味

2026年10月時点で返納率を考えるうえで重要なのが、会計検査院が2026年5月15日に公表した「マイナポイント事業に関する会計検査の結果について」です。参議院からの検査要請を受けて実施された調査で、マイナポイント事業の支出やカードの利用状況、返納に関するデータなどが検証されました。
同報告によると、マイナンバーカードの交付が始まった2016年1月から2025年7月末までの廃止枚数は、累計で1,623万枚超でした。そのうち、廃止理由が「本人希望・その他」に分類されたものは93万枚超です。
ここで注意したいのは、「本人希望・その他」という区分の意味です。この分類には、自分の意思でカードを返納したケースだけでなく、転居を繰り返して住所などを追記する欄がいっぱいになり、再発行のために旧カードを返納したケースなども含まれています。
したがって、「マイナンバーカードの自主返納が93万枚に達した」「国民の何%がカードを返納した」と、そのまま読み替えることはできません。93万枚は、自主返納を含む廃止理由の分類上の数字であり、自主返納だけを抽出した確定値ではないのです。
総務省も、自主返納に該当する廃止枚数を全国集計した数字としては把握していません。政府がカードの廃止総数や理由別の区分を管理していることと、自主返納の実数を把握していることは別問題です。
【計算方法を解説】93万枚から返納率を算出できない理由
「93万枚」という数字があるなら、カードの発行枚数で割れば返納率が出るのではないか、と考える人もいるでしょう。しかし、率を計算するには、分子と分母の両方が同じ定義・対象期間でそろっていなければなりません。
例えば、一定期間の自主返納率を求めるなら、次のような計算方法が考えられます。
期間中の自主返納率=期間中の自主返納枚数÷期間初めの保有カード枚数×100
一方、カードの交付開始からの累計について調べる場合は、累計の自主返納枚数を累計交付枚数で割る方法も考えられます。ただし、どちらの計算でも、自主返納だけの件数を正確に把握していることが前提です。
会計検査院の公表値を使って計算できるのは、あくまで廃止全体に占める「本人希望・その他」の割合です。
93万枚÷1,623万枚×100≒5.7%
この約5.7%は、2025年7月末までの累計廃止枚数に占める「本人希望・その他」の分類割合です。自主返納率でも、現時点のカード保有者に占める返納者の割合でもありません。
もう一つ参考になる数字があります。会計検査院の報告に掲載された2024年3月実施の効果測定調査では、調査対象者35,640人のうち、カードを返納したと回答した人は85人でした。対象者に占める割合は約0.2%です。
ただし、これも調査対象者の回答に基づく数字であり、全国の自主返納率を直接示すものではありません。調査の対象や設計が異なる数字を並べて、全国の返納率が何%だと断定することはできないのです。
【公表データを比較】カード廃止枚数・自主返納・関連登録の違い
返納をめぐる数字を正しく理解するには、カードそのものの廃止と、カードを利用する各種サービスの登録解除を区別する必要があります。会計検査院の2026年5月の報告に基づく主要な数値を整理しました。
| 項目 | 公表された数値・時期 | 数字の意味と注意点 |
|---|---|---|
| マイナンバーカード廃止枚数 | 約1,623万枚超 | 2016年1月~2025年7月末の累計。死亡や有効期限切れなども含む。 |
| 「本人希望・その他」による廃止 | 93万枚超 | 自主返納のほか、再発行などの理由による廃止も含む。 |
| 2023年6月の調査対象12自治体 | 247件中97件 | 「本人希望・その他」の廃止のうち自主返納に該当した件数。特定月・対象自治体の調査。 |
| 返納したと回答した調査対象者 | 35,640人中85人 | 2024年3月の効果測定調査。回答者全体の約0.2%で、全国返納率ではない。 |
| マイナ保険証の利用登録解除申請 | 15万件超 | 2024年10月28日~2025年7月の累計。 |
| 公金受取口座の登録抹消 | 28万件超 | 登録開始から2025年7月までの登録者による抹消件数の単純合計。 |
特に注目されるのが、2023年6月に実施された12自治体の調査です。「本人希望・その他」に分類された247件のうち、97件が自主返納に該当しました。割合にすると約39.3%、およそ4割です。
ただし、この約4割を93万枚に掛け合わせて、全国の自主返納件数を推計することは適切ではありません。調査対象は12自治体の特定月に限られ、全国の廃止理由や時期ごとの構成を代表していると確認された数字ではないからです。
また、マイナ保険証の利用登録解除申請や公金受取口座の登録抹消は、カード自体の廃止とは異なる指標です。これらの数字を合算して「返納者数」とすることもできません。
【返納理由の実態】情報ひも付け誤りと政府への不信感は関係したのか
マイナンバーカードの自主返納が注目を集めた大きな背景の一つが、2023年に相次いで明らかになったマイナンバー関連情報のひも付け誤りです。健康保険証情報などの登録をめぐる問題が公表され、個人情報の管理や制度の信頼性に対する不安が広がりました。
会計検査院は、2023年5月ごろから8月ごろにかけて「本人希望・その他」による廃止枚数が多くなっていたと指摘しています。ひも付け誤りの事案が公表された時期と重なることから、カードを保有することへの不安が自主返納につながった可能性があると評価しました。
ただし、時期が重なっていることだけで、すべての廃止がひも付け誤りを原因としていたと証明されたわけではありません。廃止理由の分類には複数の事情が含まれるため、増加の背景を一つの要因だけで説明することはできません。
返納理由については、会計検査院の報告に掲載された2024年3月の効果測定調査も参考になります。返納したと回答した85人に複数回答で尋ねたところ、主な回答は次のとおりでした。
- マイナンバーカードのセキュリティに不信感がある:33.1%
- 政府に対して不信感がある:29.4%
- マイナンバー制度に不信感がある:28.3%
- マイナンバーカードの必要性を感じなかった:25.9%
- 周囲の人が更新していなかった、または返納していた:7.1%
- 特に理由はない:19.4%
- 分からない:18.0%
これらは85人の回答者を対象とした調査結果であり、全国の返納者全体の意識をそのまま表すものではありません。また、複数回答が可能なため、割合を足しても100%にはなりません。
それでも、セキュリティや政府、制度への不信感が回答の上位を占めている点は見逃せません。返納をめぐる問題は、単純にカードを持つか持たないかという選択だけでなく、個人情報の管理体制や行政の説明責任に対する評価とも結び付いています。
【返納後の影響】マイナ保険証・公金受取口座はどうなる?
マイナンバーカードを返納する場合、カードそのものの廃止と、カードを使って利用する行政サービスの登録状態を分けて確認する必要があります。特に、医療機関を受診する予定がある人は、返納後の資格確認方法を事前に確認しておくことが大切です。
マイナ保険証は、カードを返納すると健康保険証の利用登録が自動的に解除されます。マイナポータルの公式FAQでも、この点が案内されています。
一方、資格確認書の交付には一定の時間がかかる場合があります。返納後すぐに医療機関を受診する必要がある場合は、加入している健康保険の保険者に相談し、資格確認書の交付について確認してください。カードの返納だけを先に済ませると、受診時に必要な書類が手元にないという事態になりかねません。
なお、マイナ保険証の利用登録解除申請は、カード自体の返納とは別に行うこともできます。厚生労働省は、加入先の保険者への申請によって利用登録を解除できると案内しています。カードを手元に残したまま、健康保険証としての利用登録だけを解除したい人は、この方法を確認するとよいでしょう。
公金受取口座についても注意が必要です。会計検査院の報告によると、2025年7月までに、登録者自身による公金受取口座の登録抹消件数は単純合計で28万件を超えていました。ただし、登録抹消後に再登録されたケースもあるため、この数字は登録が解除されたままの口座数を示しているわけではありません。
また、デジタル庁によると、公金受取口座の登録者はマイナポータルから自分で登録を抹消できます。カードの返納と口座登録の抹消は別の手続きであり、返納件数と口座抹消件数を同一視することはできません。
カードを返納すると、カードを使った本人確認や、電子証明書を利用するオンライン手続き、コンビニでの証明書交付などにも影響します。一方、カードを返納しただけで、個人番号そのものが消えたり、マイナンバー制度から離脱したりするわけではありません。必要な行政サービスをどの方法で利用するか、返納前に確認が必要です。
【政府の見解と会計検査院の指摘】返納の実数を把握できない問題
自主返納件数の把握については、2023年7月7日の河野太郎デジタル大臣の記者会見でも説明がありました。当時、政府はカードの廃止数を把握している一方、死亡や紛失、再発行に伴う返納などを含む区分から、自主返納だけの件数を全国規模で特定することはできないとしていました。
この説明は、2026年5月の会計検査院の報告でも重要な論点になっています。行政が管理する廃止データは存在していても、返納理由を細分化して集計する仕組みがなければ、制度への不信感などを理由にした自主返納の規模を正確に把握できません。
会計検査院の報告は、カードの返納だけでなく、マイナ保険証の利用登録解除や公金受取口座の登録抹消も取り上げています。マイナポイント事業によってカードの普及が進んだ一方で、事業終了後もカードや関連サービスの利用状況を適切に把握し、利用促進につなげる必要があると指摘しました。
マイナポイント事業については、2019年度から2023年度までの予算額が約2兆1,422億円、支出額が約1兆3,905億円だったことも報告されています。大規模な公費を投じて普及を進めた施策だからこそ、交付枚数だけでなく、実際の利用状況や廃止理由、利用登録の解除状況まで検証できるデータ整備が大切です。
返納率を正確に把握するには、少なくとも、カードの廃止総数と自主返納件数を分けて集計し、廃止理由を明確に分類する必要があります。加えて、集計期間や分母となる保有枚数を明示すれば、年ごとの変化や制度変更の影響も比較しやすくなります。
今後の公表資料で確認したいのは、単なる廃止枚数の増減だけではありません。自主返納の実数が新たに集計されるのか、返納理由がどの程度細分化されるのか、関連サービスの利用解除とどう区別されるのか。この3点が、制度に対する国民の信頼を測るうえで大きな意味を持ちます。
【マイナンバーカード返納率】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:マイナンバーカードの返納率は2026年現在、何%ですか?
A1:全国の自主返納件数が正確に把握されていないため、確定した返納率は算出できません。2025年7月末までの「本人希望・その他」による廃止は93万枚超ですが、自主返納以外の理由も含まれています。
Q2:93万枚のカードはすべて、政府への不信感から返納されたのですか?
A2:いいえ。93万枚超は「本人希望・その他」に分類された廃止枚数です。引っ越しによる住所追記欄の不足など、再発行のための廃止も含まれています。自主返納だけの件数は公表値から特定できません。
Q3:マイナンバーカードを返納すると、マイナ保険証や公金受取口座も自動的に解除されますか?
A3:マイナ保険証の利用登録は、カードを返納すると自動的に解除されます。資格確認書の交付には時間がかかる場合があるため、受診予定がある人は加入先の保険者に確認してください。一方、公金受取口座の登録抹消は別の手続きです。口座登録を解除したい場合は、マイナポータルで手続き方法を確認しましょう。
まとめ:今後の動向と失敗しないための判断基準
2026年10月現在、マイナンバーカードの自主返納率について、全国の実態を正確に示す確定値はありません。会計検査院が2026年5月に公表した調査では、2025年7月末までにカードが約1,623万枚廃止され、そのうち「本人希望・その他」の分類が93万枚を超えていたことが明らかになりました。
この93万枚をそのまま自主返納件数とみなしたり、約5.7%という分類割合を返納率として扱ったりするのは誤りです。正確な返納率を求めるには、自主返納だけの件数と、計算の基準となるカード保有枚数をそろえる必要があります。
返納を検討している人は、制度への不安だけでなく、本人確認やオンライン手続きへの影響、マイナ保険証の登録解除、資格確認書の交付、公金受取口座の登録状態を確認して判断することが大切です。
今後注目すべきなのは、返納の数字が大きいか小さいかだけではありません。政府が自主返納の実数や理由を適切に把握し、情報管理上の問題にどう対応し、行政サービスの安全性と利便性をどこまで説明できるか。返納率をめぐる議論は、マイナンバー制度の信頼性と行政の説明責任を測る指標としても重要です。