2026年10月現在、マイナンバーカードの返納率は何%なのでしょうか。会計検査院の調査報告書では、2016年1月から2025年7月までのカード廃止枚数が1,623万枚余りに達し、そのうち「本人希望・その他」に分類された廃止枚数は93万枚余りと公表されています。しかし、この93万枚がすべて自主返納されたカードというわけではありません。
最大の要点は、総務省が自主返納だけの全国累計を把握していないことです。2026年の最新動向を確認する際も、カードの廃止総数、自主返納に関連する分類、マイナ保険証の利用登録解除件数を区別する必要があります。それぞれの数字が示す意味を、公的資料と制度の仕組みから整理します。
【この記事の重要ポイントまとめ】
- 返納率の実態:2026年10月時点で、自主返納率を示す確定的な全国統計は公表されていない。
- 93万枚の正体:2025年7月末までの「本人希望・その他」による廃止枚数であり、再発行などのための返納も含まれる。
- 返納前の注意点:カードを返納するとマイナポータルやマイナ保険証の利用に影響するため、必要な代替手段を先に確認したい。
【2026年最新】マイナンバーカードの返納率は公表されている?
最初に、最も知りたい疑問への答えは、自主返納率を正確に示す全国統計は公表されていないということです。返納率がゼロという意味でも、返納する人が少ないと証明されたという意味でもありません。
会計検査院が2026年5月に公表した「マイナポイント事業に関する会計検査の結果について」では、カードの廃止状況を調査しています。その結果、2016年1月の交付開始から2025年7月までの廃止枚数は1,623万枚余り、「本人希望・その他」に分類された廃止枚数は93万枚余りでした。
ただし、総務省はこの93万枚余りのうち、本人の意思による自主返納が何枚だったのかを把握していません。したがって、2026年最新の自主返納件数や返納率を、93万枚という数字だけから確定することはできません。
一方、カードの普及状況については別の数字があります。デジタル庁の2026年10月2日の大臣記者会見によると、2026年8月末時点のマイナンバーカード保有枚数は1億452万5,120枚、人口に対する保有率は84.3%でした。これは現在保有されているカードの普及状況を示す数値であり、自主返納率を示すものではありません。
つまり、2026年の状況を正しく理解するには、普及率と返納率を混同しないことが出発点になります。
【数字を徹底検証】93万枚と廃止総数1,623万枚の決定的な違い
「本人希望・その他が93万枚」という数字は、返納問題を考えるうえで重要です。しかし、その分類名だけを見て、93万枚すべてが政府への不信感などを理由に返納されたと解釈するのは正確ではありません。
マイナンバーカードは、死亡、有効期間の満了、国外転出、紛失、本人の希望による返納など、さまざまな事情で廃止されます。また、引っ越しを繰り返して住所の追記欄が埋まり、新しいカードを発行するために旧カードを返納するケースもあります。
会計検査院の報告書は、こうした事情を踏まえ、「本人希望・その他」に分類された廃止枚数と自主返納の実数を明確に区別しています。
ここで、93万枚余りを1,623万枚余りで単純に割ると、約5.7%になります。しかし、これは廃止総数に占める「本人希望・その他」の割合にすぎません。分子に自主返納以外の廃止も含まれ、分母にも死亡や有効期限切れなどが含まれるため、約5.7%をマイナンバーカードの返納率と呼ぶことはできません。
全国の自主返納率を算出するには、自主返納だけを識別した件数と、返納率の計算に用いる適切な母数が必要です。現状では、その両方をそろえた公式統計がありません。
【時系列で整理】自主返納の経緯と公表された統計データ
返納問題を理解するには、マイナンバーの紐付け誤りが明らかになった2023年と、その後の行政調査を分けて見ることが重要です。以下は、政府・会計検査院などの公表資料に基づく主な経緯です。
| 時期 | 公表された事実・出来事 | 数字の読み方 |
|---|---|---|
| 2016年1月 | マイナンバーカードの交付開始 | 廃止枚数の累計集計の起点 |
| 2023年5月 | マイナンバーの紐付け誤り事案が公表される | カードや制度への不安が広がった時期 |
| 2023年6月分 | 12地方公共団体を対象に、「本人希望・その他」の内訳を調査 | 247件中97件が自主返納に該当。全国の返納率ではない |
| 2023年5~8月ごろ | 「本人希望・その他」による廃止枚数が多くなる | 会計検査院は紐付け誤り事案などの影響で自主返納が発生した可能性を指摘 |
| 2024年3月 | マイナポイント事業の効果測定調査で返納状況を調査 | 調査対象者3万5,640人のうち85人が返納したと回答 |
| 2024年10月28日 | マイナ保険証の利用登録解除申請が可能になる | カードの返納とは別の手続き |
| 2025年7月末 | カードの廃止総数は1,623万枚余り、「本人希望・その他」は93万枚余り | 自主返納だけの累計は不明 |
| 2026年5月 | 会計検査院がマイナポイント事業の検査報告書を公表 | 返納問題と普及施策の実績が公的資料で整理される |
| 2026年8月末 | カード保有枚数は1億452万5,120枚、保有率84.3% | 普及状況を示す数値で、返納率ではない |
特に注意したいのは、2023年6月分の調査結果です。12自治体から得た回答では、「本人希望・その他」に分類された247件のうち97件が自主返納に該当しました。割合にすると約39.3%です。
しかし、これは特定の月における12自治体の調査結果です。調査対象や時期が限られているため、約39.3%を全国の「本人希望・その他」に適用して、自主返納総数を推計することはできません。
会計検査院の報告書が示したのは、全国の自主返納数を確定した結果ではなく、廃止理由の分類に課題があり、返納の実態を正確に把握できていないという行政統計上の問題です。
【返納理由を分析】紐付け誤りや個人情報への不安は影響したのか
マイナンバーカードの自主返納を考える背景には、個人情報の管理に対する不安、政府や制度への不信感、カードを持ち歩くことへの抵抗感などがあります。こうした理由を考えるうえで参考になるのが、会計検査院の報告書に記載された効果測定調査です。
2024年3月に実施された調査では、対象者3万5,640人のうち85人がカードを返納したと回答しました。報告書によると、返納理由として挙げられた主な項目は次のとおりです。
- マイナンバーカードのセキュリティに不信感があるから:33.1%
- 政府に対して不信感があるから:29.4%
- マイナンバー制度に不信感があるから:28.3%
これらの割合は、調査における返納理由の結果であり、全国の返納者全体の構成比を確定した数字ではありません。それでも、返納の背景には、単なるカードの使い勝手だけでなく、情報管理や制度運営への信頼が関係していることがうかがえます。
実際、2023年5月には、健康保険や共済年金などの制度固有の番号とマイナンバーとの紐付け誤りが公表されました。政府は同年6月にマイナンバー情報総点検本部を設置し、各制度で登録情報の点検を進めました。会計検査院の報告書によると、2024年1月の最終的な取りまとめでは、紐付け誤り8,395件が確認されたと公表されています。
会計検査院は、紐付け誤りが公表された時期と、「本人希望・その他」による廃止枚数が多くなった時期が重なっている点に触れ、自主返納が発生した可能性を指摘しました。ただし、時期が重なっていることだけで、93万枚すべて、あるいは廃止増加のすべてが紐付け誤りを原因とするものだと断定することはできません。
もう一つ押さえておきたいのが、カードを返納すれば紐付け誤りが解消されるわけではないという点です。デジタル庁のFAQでも、マイナンバーと各種情報との紐付けはカードを保有しているかどうかとは別の問題であり、カードを返納しても誤りそのものは解消されないと説明しています。
登録情報に不安がある場合は、カードを返納するかどうかと、登録情報を確認・訂正する手続きを分けて考える必要があります。
【返納手続きとデメリット】カードを返す前に確認すべきこと
マイナンバーカードの返納は、一般に住民登録のある市区町村の担当窓口で手続きします。具体的な必要書類や受付方法は自治体によって案内が異なる場合があるため、事前に窓口へ確認してください。カード本体や返納届など、指定された書類を準備して手続きするのが基本です。
重要なのは、返納したカードは廃止され、原則としてそのカードを再び使える状態には戻せないことです。後日必要になって再交付を申請する場合、通常1,000円の手数料が必要となる自治体もあります。再交付の条件や費用は、申請時に自治体で確認しましょう。
返納によって影響を受ける主なサービスは次のとおりです。
- マイナポータル:カードを使ったログインができなくなり、自己情報の確認などに影響する。
- マイナ保険証:カードを返納すると健康保険証としての利用登録が解除されるため、受診時に必要な資格確認書などの準備が必要になる。
- コンビニ交付:対応自治体で住民票の写しや各種証明書を取得する際、カードを利用する方法が使えなくなる。
- オンライン手続き:e-Taxなど、カードや電子証明書を利用する本人確認・電子申請に影響する。
- 公金受取口座:登録情報の削除を希望する場合は、返納前にマイナポータルで必要な手続きを確認する。
とりわけ注意したいのが、医療機関の受診です。カードの返納によりマイナ保険証の利用登録は解除されますが、資格確認書の交付に時間がかかる場合があります。返納後すぐに受診する予定がある人は、加入先の健康保険組合や市区町村などの保険者に、資格確認書の交付について先に相談してください。
なお、従来の健康保険証が使えなくなった後も、マイナ保険証を利用しない人などには資格確認書によって保険診療を受ける仕組みがあります。カードを返納したことだけを理由に、医療保険の資格そのものがなくなるわけではありません。
また、マイナンバーカードを返納しても、個人番号であるマイナンバー自体が削除されるわけではありません。カードは本人確認などに使う媒体であり、番号や各制度に登録された情報とは区別して考える必要があります。
【2026年の実態と真相】返納率を判断するときの3つの基準
2026年の状況を判断する際は、カードの廃止、自主返納、マイナ保険証の利用登録解除という3つの動きを混同しないことが重要です。
最初に、カードの廃止は、死亡や有効期限切れ、国外転出、再発行なども含む広い概念です。続いて、自主返納は本人の意思によるカードの返納を指します。そして、マイナ保険証の利用登録解除は、カードそのものを返さずに保険証としての利用登録だけを解除する手続きです。
会計検査院の報告書では、マイナ保険証の利用登録解除申請について、受付が始まった2024年10月28日から2025年7月までの累計が15万件余りとされています。厚生労働省の公表ページでは、2026年8月の解除申請受付件数は7,394件と示されています。ただし、これらは保険証利用の登録解除に関する数字であり、マイナンバーカードの返納件数には加算できません。
返納率の実態を判断するなら、次の3点を確認するのが適切です。
- ① 数字の対象期間:2025年7月末までの累計なのか、2026年の月次データなのかを確認する。
- ② 数字の定義:カード廃止枚数なのか、「本人希望・その他」なのか、自主返納だけを集計した数字なのかを確認する。
- ③ 分母の違い:保有枚数、交付枚数、人口など、何を基準にした割合なのかを確認する。
現状では、全国の自主返納件数を正確に集計した統計がないため、「返納率が何%まで上昇した」「93万枚が返納された」といった断定はできません。一方、廃止理由の分類や調査結果を見れば、制度への不安が返納の背景にあったこと、そして行政が自主返納の実数を十分に把握できていないことは確認できます。
2026年の最新動向を追ううえで必要なのは、返納率という一つの数字だけではありません。カードの廃止理由を細分化した統計の整備、返納理由の継続的な調査、そしてマイナ保険証の登録解除など関連する手続きの区別が、実態を正確に把握するための課題となっています。
【マイナンバーカード返納率】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:マイナンバーカードの返納率は2026年現在、何%ですか?
A1:自主返納だけを集計した全国の返納率は公表されていません。2025年7月末までの「本人希望・その他」による廃止枚数は93万枚余りですが、再発行などのための返納も含まれるため、この数字から正確な返納率を算出することはできません。
Q2:「本人希望・その他」の93万枚は、すべて自主返納されたカードですか?
A2:いいえ。本人の意思による自主返納のほか、引っ越しを繰り返して住所の追記欄が埋まり、再発行するために旧カードを返納したケースなども含まれます。総務省は自主返納に該当する枚数を把握していません。
Q3:マイナンバーカードを返納すれば、紐付け誤りや個人情報の問題は解消されますか?
A3:カードの返納だけでは、マイナンバーと各制度の情報との紐付け誤りは解消されません。情報に誤りがないか不安な場合は、登録情報の確認や、誤りが見つかった際の訂正手続きを別途行う必要があります。
Q4:マイナ保険証の利用登録を解除すると、マイナンバーカードも返納したことになりますか?
A4:なりません。マイナ保険証の利用登録解除は、健康保険証としての利用登録だけを解除する手続きです。カードを引き続き本人確認やオンライン手続きなどに使うことは可能です。
Q5:マイナンバーカードを返納すると、マイナンバーそのものも削除されますか?
A5:削除されません。カードの廃止と、個人番号であるマイナンバーは別のものです。カードを返納してもマイナンバー自体はなくならず、各制度における登録情報も、返納だけで自動的に削除されるわけではありません。
まとめ:返納率の数字に惑わされず、統計の意味を見極める
マイナンバーカード返納率について、2026年10月現在、全国の自主返納率を示す確定的な公表値はありません。会計検査院が示した2025年7月末までの廃止総数1,623万枚余りと、「本人希望・その他」の93万枚余りは重要なデータですが、いずれも自主返納だけの件数ではありません。
2023年の紐付け誤り事案が公表された時期に廃止枚数が増え、調査でもセキュリティや政府への不信感が返納理由として挙げられたことは、制度への信頼を考えるうえで見逃せない事実です。一方で、返納件数を正確に把握できていない以上、返納率を特定の割合で断定することはできません。
カードの返納を検討している人は、マイナポータル、医療機関での資格確認、オンライン申請などへの影響を確認し、必要な代替手段を準備してから判断することが大切です。統計を見る側も、廃止枚数と自主返納件数、マイナ保険証の登録解除件数を区別する必要があります。
今後、総務省などが自主返納の件数と理由を継続的に公表する仕組みを整備すれば、マイナンバーカード返納率の実態は、より明確になるはずです。