十一代目平井一家とは何者なのか。六代目山口組との関係や、総裁とされる薄葉暢洋氏、愛知県東部の露天商組合とのみかじめ料返還訴訟などをめぐり、同組織は愛知県の暴力団対策を考えるうえで注目される存在です。とりわけ、2025年6月に名古屋地方裁判所で成立した和解は、暴力団への資金供与を断ち切ろうとする事業者の取り組みとして注目されました。
2026年10月時点で押さえておきたいのは、平井一家の歴史的な成り立ち、六代目山口組との組織上の関係、愛知県公安委員会が公表した行政上の措置、そして約2,020万円の返還を求めた訴訟の結末です。公的資料と報道を照らし合わせると、和解によって何が決まり、何が公表されていないのかも見えてきます。
【この記事の重要ポイントまとめ】
- 組織の位置づけ:十一代目平井一家は、愛知県豊橋市を拠点とする六代目山口組傘下の組織として報じられている。
- 2025年の和解:露天商組合が約2,020万6,000円の返還を求めた訴訟は、2025年6月3日に和解が成立。和解金額は公表されていない。
- 公的資料の意味:愛知県公安委員会は2023年、暴力団への利益供与をめぐり、関係者への勧告に従わなかったとして組合名などを公表した。
- 2026年の見方:愛知県内の暴力団情勢は県警の統計で把握できる一方、平井一家単独の構成員数や内部事情を示す最新の公的データは公表資料からは読み取れない。
【十一代目平井一家とは何か】現在の位置づけと六代目山口組との関係

十一代目平井一家(ひらいいっか)は、愛知県豊橋市を拠点とする暴力団組織で、六代目山口組の傘下組織として報じられています。「十一代目」という呼称は、組織の継承を示す名称です。
この組織を理解するには、平井一家そのものと、その上部団体である六代目山口組を区別する必要があります。六代目山口組は、暴力団対策法に基づく指定暴力団であり、対立抗争を背景に特定抗争指定暴力団等として扱われてきた団体の一つです。一方、平井一家は、その傘下に位置する組織として報道や公的資料に登場します。
愛知県公安委員会が2023年2月2日に公表した資料では、薄葉暢洋氏について「指定暴力団六代目山口組十一代目平井一家総裁」と記載しています。また、2025年6月の訴訟和解を伝えた報道でも、薄葉氏は同組織の総裁として紹介されました。
薄葉氏は「薄葉政嘉」という名でも報じられています。公的資料では「薄葉暢洋」、報道では「薄葉政嘉こと薄葉暢洋」といった表記が使われているため、人物情報を調べる際には両方の名前を照合が必要です。
2026年10月時点で、直近の具体的な公的記録として確認できるのは、愛知県公安委員会の公表資料や2025年の和解報道です。これらは組織の位置づけを理解する手掛かりになりますが、現在の構成員数、内部の役職構成、資金源全体などを明らかにするものではありません。
【平井一家の成り立ちと経緯】歴代総裁と組織の歴史
平井一家の歴史をたどると、東三河地域における幕末から明治期の博徒集団の歴史に行き着きます。ただし、歴史上の侠客集団と、現代の法律や警察制度のもとで把握される暴力団組織とでは、社会的な位置づけも制度上の扱いも異なります。
地域史を伝える御津町商工会の「みと歴史散歩」には、雲風亀吉という人物の記録があります。同資料によると、亀吉は1828年に平井村で生まれ、江戸相撲を経て侠客となり、東三河の小中山七五三蔵の身内となった後、平井一家の二代目を継いだとされています。また、幕末の抗争や、1868年に尾張藩の働きかけで結成された集義隊についても記されています。
一方、後年の組織系譜をまとめた二次資料には、平井亀吉を初代とする系譜も掲載されています。歴史資料によって「祖」や初代の扱いに違いがあるため、起源を一つの年や人物に単純化するのは適切ではありません。
現代の平井一家については、二次資料などで歴代の継承者として、平井亀吉、原田常吉、清水善吉、富安伊作、小川浅蔵、久保田文一、判治玉吉、河澄政照、藤川卓夫、岸上剛史、薄葉政嘉(本名・薄葉暢洋)という名前が挙げられています。ただし、これらの系譜は警察が公表した公式の歴代総裁一覧ではなく、個々の人物の就任時期や継承関係を一律に確定する資料とは区別する必要があります。
現在の組織を理解するうえで大切なのは、歴史の長さそのものより、現代の法制度のもとでどのような活動が問題となり、資金供与や事業者との関係に対してどのような措置が取られてきたかという点です。平井一家をめぐる近年の動向では、愛知県公安委員会による公表と、露天商組合による返還請求訴訟が大きな節目となりました。
【2020〜2025年の経緯】みかじめ料返還訴訟と和解内容を整理
十一代目平井一家をめぐる近年の報道で重要なのが、愛知県東部街商協同組合との間で争われたみかじめ料の返還請求訴訟です。同組合は愛知県東部の露天商で構成され、祭礼やイベントへの出店などに関わっていました。組合と平井一家の関係は、愛知県公安委員会による行政上の措置を経て、2023年の提訴、2025年の和解へと進みました。
愛知県公安委員会が2023年2月2日に公表した資料によると、薄葉暢洋氏は2019年5月6日、愛知県内の飲食店経営法人から、暴力団の資金獲得や威力を示す活動につながる誕生日会の場所の提供を受けたことなどを理由に、2020年3月6日に愛知県暴力団排除条例に基づく勧告を受けていました。
同資料は加えて、2021年4月30日、薄葉氏が愛知県内の飲食業者などが加盟する組合から、組合の事業に関して暴力団の威力を利用することの対償として供与されたと認識しながら、現金500万円の利益供与を受けたと記載しています。勧告に従わなかったことから、県公安委員会は条例に基づいて関係者や組合名などを公表しました。
その後、愛知県東部街商協同組合は暴力団との関係を断つ方針を示し、返還請求を進めました。2023年11月21日、組合は薄葉氏に対し、2019年以降に支払ったみかじめ料などのうち、合計2,020万6,000円の返還を求めて名古屋地方裁判所に提訴しました。
NHK名古屋や読売新聞の地域報道などによると、訴訟は2025年6月3日に和解が成立しました。報道で伝えられた和解条項の主な内容は、平井一家側が和解金を支払うこと、組合員との接触を禁じること、組合員から便宜供与を受けないことです。和解金の具体的な金額は公表されていません。
この点は、訴訟の意味を理解するうえで重要です。組合側が請求した2,020万6,000円という金額と、和解によって支払われることになった和解金は別の情報です。公表された報道だけから、請求額の全額が支払われたと断定することはできません。また、和解は判決とは異なるため、裁判所が請求原因のすべてについて判断を示したという意味でもありません。
【数字で見る愛知県の暴力団情勢】公的資料から分かること
十一代目平井一家の現在を考える際には、個別の組織をめぐる報道と、愛知県全体の暴力団情勢を分けて見る必要があります。愛知県警察の「暴力団総合対策」によると、2025年末時点で、愛知県内の暴力団構成員と準構成員等は合計約770人でした。同年中に暴力団員や準構成員、その他の周辺者を合わせて295人が検挙されています。
全国についても、警察庁や全国暴力追放運動推進センターの公表資料では、2025年末の暴力団構成員等は約1万7,600人とされています。これは2016年末の約3万9,100人から減少した水準です。ただし、構成員等の減少だけをもって、暴力団による資金獲得活動や地域社会への影響がなくなったと判断することはできません。
| 時期・項目 | 公表・報道された内容 | 読み解く際のポイント |
|---|---|---|
| 2020年3月6日 | 薄葉暢洋氏が愛知県暴力団排除条例に基づく勧告を受けた。 | 飲食店経営法人からの場所提供などが背景にある。 |
| 2021年4月30日 | 薄葉氏が組合から現金500万円の利益供与を受けたと、県公安委員会の公表資料に記載された。 | 行政上の公表資料に記された具体的な事実関係である。 |
| 2023年2月2日 | 勧告に従わなかったとして、愛知県公安委員会が組合名などを公表した。 | 暴力団排除条例に基づく行政上の措置であり、刑事裁判の判決とは異なる。 |
| 2023年11月21日 | 露天商組合が2,020万6,000円の返還を求め、名古屋地裁に提訴した。 | 金額は組合側の請求額である。 |
| 2025年6月3日 | 名古屋地裁で和解が成立。和解金の支払い、組合員との接触禁止、便宜供与を受けないことなどが報じられた。 | 和解金額は非公表であり、請求額と同額とは限らない。 |
| 2025年末の愛知県情勢 | 暴力団構成員・準構成員等は約770人。2025年中の検挙人員は295人。 | 県全体の統計であり、平井一家単独の人数や活動規模を示す数字ではない。 |
| 2025年末の全国情勢 | 暴力団構成員等は約1万7,600人。 | 全国的な減少傾向を示すが、個別組織の現況とは区別する必要がある。 |
これらの数字から分かるのは、暴力団対策が組織の人数を把握するだけでなく、資金の流れを断つことにも重点を置いているという点です。愛知県警察は、主要幹部を中心とする検挙、資金獲得犯罪の取締り、犯罪収益の剝奪などを重点対策として掲げています。
一方、愛知県全体の構成員数や検挙人員を、そのまま平井一家の規模や活動状況に置き換えることはできません。組織単独の人数、内部人事、収入の全容などは、県全体の統計とは別の情報です。
【みかじめ料の仕組み】暴力団対策法と暴排条例は何を禁じるのか
みかじめ料とは、暴力団が挨拶料や場所代などの名目で事業者に要求する金品を指します。愛知県警察は、縄張り内の事業者からのみかじめ料や用心棒代の徴収を、暴力団の資金獲得活動の一つとして説明しています。
露天商の場合、祭礼やイベントで出店する際の場所代、組合員から集める賦課金などが、暴力団への資金供与と結びつくことがあります。表向きの名目が「場所代」「会費」「協力金」であっても、その実態や支払いの経緯によっては、暴力団の威力を利用する対価として問題になる可能性があります。
今回の訴訟で注目されたのは、こうした金銭の流れを断ち切るため、事業者側が過去の支払いについて返還を求め、実際に裁判手続きへ進んだ点です。組合側にとっては、暴力団との関係を断つことに加え、地域の祭りやイベントへの出店をめぐる信用を回復することも重要な課題でした。
法制度では、1992年に施行された「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」、いわゆる暴力団対策法が、指定暴力団の構成員による不当な要求行為などを規制しています。また、愛知県暴力団排除条例は、暴力団への利益供与などを防ぐための枠組みを設けています。
暴力団排除の取り組みでは、金品を要求する側だけでなく、暴力団の威力を利用する対価として利益を供与する側の行為も問題となり得ます。今回の組合名の公表は、勧告後も利益供与が続いたことを理由とする行政上の措置でした。
事業者がみかじめ料などを要求された場合、独自に交渉して解決しようとするよりも、警察や暴力追放運動推進センター、弁護士などの専門機関に相談が必要です。愛知県警察は警察相談専用電話「#9110」を案内しており、緊急の場合は110番への通報を呼びかけています。
【特定抗争指定暴力団と指定暴力団の違い】制度を正しく理解する
平井一家に関する報道では、「指定暴力団」と「特定抗争指定暴力団等」という言葉が登場します。両者は同じ意味ではなく、法律上の指定目的や適用される措置が異なります。
指定暴力団は、暴力団対策法第3条に定める要件を満たす団体として、都道府県公安委員会が指定するものです。指定によって、構成員による一定の不当な要求行為などが同法の規制対象となります。
これに対して、特定抗争指定暴力団等は、指定暴力団等の間で対立抗争が発生し、凶器を使用した暴力行為によって生命や身体に重大な危害が生じるおそれがある場合などに、公安委員会が警戒区域と期間を定めて指定する制度です。通常の指定暴力団の指定に加え、対立抗争による危険を抑えるための追加的な措置と理解すると分かりやすいでしょう。
六代目山口組は、神戸山口組、池田組、絆會などとの対立抗争を背景に、特定抗争指定暴力団等として扱われてきました。愛知県警察も、こうした対立抗争への対応を暴力団対策の一環として説明しています。
ただし、六代目山口組が上部団体であることと、十一代目平井一家そのものが独立して同じ指定を受けていることは別の話です。報道で両者の名称が続けて記載されていても、指定の対象や法的な位置づけを混同しないことが大切です。
また、特定抗争指定は、暴力団の内部情報や構成員数を公表する制度ではありません。警戒区域、指定期間、抗争に伴う危険性などに関する制度であり、個別の組織の現況を調べる際には、警察の公表資料や事件ごとの報道を別途確認する必要があります。
【十一代目平井一家の評判と報道の検証】何を事実として受け止めるべきか
十一代目平井一家をめぐる情報を調べる際には、組織の歴史、警察による公表、裁判に関する報道、ネット上の評判を分けて考える必要があります。それぞれが示す情報の種類は異なり、同じ確度で扱うことはできません。
例えば、薄葉暢洋氏に関する愛知県公安委員会の公表資料は、勧告の経緯や500万円の利益供与に関する具体的な記載を含む公的資料です。一方、組織の内部構造や構成員の詳細を紹介する二次資料は、必ずしも同じ水準の公的裏付けを備えているわけではありません。
2025年の和解についても、確認すべき要点は明確です。裁判所で和解が成立したこと、和解金の支払いが報じられたこと、組合員との接触禁止や便宜供与を受けないことなどが和解条項として伝えられたことは、報道で確認できる事柄です。しかし、和解金額は公表されておらず、請求額の全額が支払われたとする情報や、裁判所が請求の全項目について判決を下したとする理解は正確ではありません。
同様に、「組織が弱体化した」「勢力が拡大した」「現在の構成員数は何人」といった情報についても、裏付けとなる公的統計や信頼できる報道がなければ、確定情報として扱うことはできません。全国や愛知県全体の統計は、個別組織の実態をそのまま示すものではないからです。
今回の訴訟で特に重要なのは、暴力団への利益供与をめぐる問題が、単に組織側の活動だけでなく、事業者の取引慣行や地域イベントの運営にも影響を及ぼしたことです。組合は行政上の公表を受け、出店をめぐる困難に直面した後、関係を断つ方針を示し、返還請求訴訟を経て和解に至りました。
この経緯は、暴力団排除が捜査や検挙だけで完結するものではないことを示しています。資金の流れを遮断すること、事業者が不適切な関係から離脱できる環境を整えること、そして地域社会からの信頼を回復することが、対策の実効性を左右します。
【十一代目平井一家】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:十一代目平井一家とはどのような組織ですか?
A1:愛知県豊橋市を拠点とする暴力団組織で、六代目山口組の傘下組織として報じられています。歴史的な成り立ちについては地域史や二次資料が存在しますが、現在の組織の実態は、警察の公表資料や個別事件の報道と区別して理解する必要があります。
Q2:十一代目平井一家の総裁は誰ですか?
A2:2023年の愛知県公安委員会の公表資料や2025年の和解報道では、薄葉暢洋氏が総裁として記載されています。「薄葉政嘉こと薄葉暢洋」という表記も使われています。2026年の内部人事の詳細については、公表資料だけで最新状況を断定することはできません。
Q3:2025年のみかじめ料返還訴訟では、いくら返還されたのですか?
A3:組合側の請求額は2,020万6,000円でした。2025年6月3日に名古屋地方裁判所で和解が成立し、平井一家側が和解金を支払うことなどが報じられていますが、和解金の具体的な金額は公表されていません。請求額と和解金を同額とみなすことはできません。
Q4:愛知県東部街商協同組合は現在も同じ名称ですか?
A4:2025年の和解報道では、同組合は「愛三協和協同組合」という名称で紹介されています。報道によれば、暴力団との関係を断つ取り組みを進め、新体制での再出発を図っていました。
Q5:特定抗争指定暴力団と指定暴力団は何が違いますか?
A5:指定暴力団は、暴力団対策法第3条の要件に基づいて指定される団体です。特定抗争指定暴力団等は、指定暴力団等の間で重大な危害につながる対立抗争が発生し、追加的な警戒措置が必要な場合に指定されるものです。両者は制度上の意味が異なります。
まとめ:今後の動向と失敗しないための判断基準
十一代目平井一家を理解するうえで重要なのは、歴史的な系譜、六代目山口組との組織上の関係、愛知県公安委員会による公表、そして2025年の返還請求訴訟の和解を、それぞれ異なる種類の情報として捉えることです。
2025年6月3日に成立した和解では、和解金の支払いに加え、組合員との接触禁止や便宜供与を受けないことなどが報じられました。一方、和解金額は非公表であり、請求額の全額が支払われたと断定することはできません。この区別は、事件の結末を正確に理解するうえで欠かせません。
2026年の暴力団情勢を考える際には、警察庁や愛知県警察が公表する統計、愛知県公安委員会の行政資料、NHKや読売新聞などの報道を組み合わせて見ることが有効です。特に、組織単独の人数や内部事情については、県全体の統計や匿名のネット情報から推測せず、公表された根拠の範囲で理解する必要があります。
みかじめ料返還訴訟が示したのは、暴力団排除が資金の流れを断つこと、事業者が関係を解消すること、地域社会の信頼を回復することと深く結びついているという事実です。今後の動向を追う際も、組織の評判だけに左右されず、公的資料、裁判手続き、報道で確認できる具体的な出来事を基準に判断が必要です。